14 薬のせい


 離宮を出ると、辺りは夕暮れ時だった。馬車を先導してしばらく走ると、左手に男の言った船着き場が見えた。


 エール川河畔の船着き場に着いた。川幅は広く靄っていて、遠くに黒々とした森が横たわっている。丁度、競売に来ていた商人が乗って来た大型船がいる。

「おーい、乗せてくれないかー!!」

 川船の船長にお金の入った革袋を見せると、あっけなく乗船させてくれた。


 ユベールは競売場の舞台にあった奴隷の売上代金を、すべて奪って逃げたのだ。

「オレの売上代金が、その中に入っていなくて悔しい」と言うと「貰った」とずっしりと重い袋を見せた。

 オレ達は顔を見合わせて悪い笑顔で笑ったのだ。


「よし、祈ろうか」

「はーい」

「はい」

「『クリーン』『浄化』」

 船に乗ってから、神殿の見習い神官みんなで祈ると船がキラキラと輝いて、乗組員たちは跪いて涙を流した。

 船の代金を払って、残りの金は船の上でみんなで山分けにする。

 川船の船長は、テゥアラン王国に帰る予定で、船に乗ったオレ達を途中の帝国やビエンヌ公国の船着き場まで運んでくれるという。


「いやあ、あいつら行きだけの約束で乗せたんだが、まだ金を払って貰ってなかったんだ。待ってろと言っていたけどよ、あの様子じゃあ料金値切られるか踏み倒されそうだし、どうするかなと思ってたんだ」

 船長が言うと、船員たちも次々に言う。

「そしたら離宮の方で青白い光が見えてよ」

「あいつら愛想悪いし、ケチだしよ、何か悪い事したんだぜ」

「そのくせ偉そうに命令しやがって」

 そういや、あのオヤジ、オレを買った代金も踏み倒しそうだったな。



 個室を貰って、しけ込んだオレ達は盛っている。これは仕方がないんだ。媚薬のせいだし、ローランとレスリーも頑張っているらしいし、他にも急造カップルが何組か出来たようだ。


「はあ……、ユベール何とかして!」

「エルヴェ様」

「あふん、苦しい……」

 身体中の熱が出口が無くてぐるぐる回る。出せと。

「エルヴェ様、この薬の中和薬はここにはございません。なので、まぐわって解毒するしかありません」

「まぐわうって……、何?」

「ここに」ユベールの手がオレの尻を触って、指がその奥に触れる。

「私のモノを入れます」

「んあっ……」

 触られただけで声が漏れる。


 もしかして、もしかしなくてもそうなのか?

「お前……、オレに勃つの?」

 半信半疑で聞くと、男は真面目腐った顔で答える。

「はい」

 オレはもう限界だ。

「何でもいいから、何とかして!」

「分かりました。途中で止められませんから、そのおつもりで」


 ユベールはオレの服をすべて脱がして、べッドに横たえる。冷たいシーツが熱を孕んだ身体に気持ちいい。ユベールの金茶色の髪を両手でかき混ぜると、ユベールの薄青い瞳が近付いて来てオレの唇にキスをする。


 襲いかかる身体の熱と、ここで越えてしまうのかという不安を紛らわすように、自分の上に覆いかぶさる男に聞く。

「んん……、この船は何処に行くんだ?」

「はい、テゥアラン王国と言っていました」

 耳元でそんな事を囁きながらも、ユベールの手はオレの後孔に伸びる。そこはもうトロトロに蕩けて、指を迎え入れようとするがきつい。

「このままエール川を南下してシェデト湿原に入ります。まず湿原の東のジンスハイム帝国の船着き場に行って、それから西のビエンヌ公国の船着き場に着いて、その後南下してテゥアラン王国に行きます」

「そっか……、後で地図をみ……たいなっ、あぅ……」

 ユベールが指を抜いたので声が裏返る。


「狭いですね」

 ユベールはオレのモノを手で包みゆっくりと動かす。

「あああ」

 すでに勃ち上がって蜜を零していたオレのモノは、あっさりと降参して欲望を吐き出した。ユベールはそれを受け止めて後ろに塗り付ける。

 オレの放ったもので滑りが良くなって、ユベールの指を迎え入れる。


「ああん……、ユ、ユベール、ユベールっん」

 ユベールの指が増やされて、オレはユベールにしがみ付く。腰が揺れて催促しているようだ。指が増やされてゆく。身体が熱い。辛い。腰が動く。

「ユベール……はやくっ……う……」

「エルヴェさま……、くっ!もうどうなっても──」


 ユベールは身を起こして、手早く自分の衣服を脱ぐと、オレの足を抱える。

 立派な屹立したモノがオレの蕩けた後孔に当てられる。クイッと突き入れるとオレは甘い声を上げて仰け反るしかない。

 欲しい、早くそれが全部。

「あああん、ユベール」

 みちみちと押し入ってくる熱い塊。オレの身体を押し開き、知らぬ感覚を連れて来る。なんか大きすぎて入らない?

「エルヴェ様、力を抜いて──」

 いや、大きくて無理。いっぱいいっぱいだ。


 でもユベール、こんな時でも様かよと、どこかで考えたら、グイッと押し進められた。

「ああん……一杯だあ……」

 ユベールがいい子いい子という風に頭を撫でてキスをする。

 その後は猛然と動き出した。止まれと言っても、やめてと叫んでも、聞きはしない。ガツガツと食らうように貪るように食らいつくす。ぐったりしたオレをひっくり返してまた挑まれる。

 死ぬ、オレこいつに殺される運命だったのか──。


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