眠り嬢マレディジオンは不思議な探偵助手

野うさぎ

第1章

プロローグ

 ここは、とある実験施設。

 今年で、十三歳になると聞いた。

 

 幼稚園や、小学校なんて行ったことがなく、最後に外の世界にいたのは保育園の頃で、確か五、六歳だったために、勉強とかは研究所の中で教わった。


 簡単な算数や国語は、できる。


 そんな子に、手を差し伸べたんだ。

 それは、これから守らなくはならない存在だった。


「君、名前はなんて言うのですか?」


「わかんない・・・」


「どうして?」


「実験体だから、名前なんてないから・・・」


「あたしは、マルディジオンなのですわ。

君を、助けに来たのですわよ」


 あたしは、名前を名乗れない少女に、自己紹介をした。


 あたしは、パンダのパーカーに、黒のデニムキュロットをはいて、厚底ニーハイブーツを履いている。

 緑の髪を持つ。

 あたしは、魔女でもあり、吸血鬼でもある。

 

 三分の一はヴァンピーア《吸血鬼》で、三分の一はストレーガ《魔女》。

 あとは、秘密。


 肩には、「アーミン」と言うオコジョの姿をした妖精?らしき存在をパートナーとしている。


「助けに・・・?」


 女の子は、信じられないという表情で、首をかしげている。


「君は、監禁されているのですわ」


 すぐに受け入れてくれるなんて、思ってはない。

 だけど、あたしがやらなくてはならないことは決まっていて、この子を、この子だけでも、救出してあげることだと思った。

 これだけは、これだけでも、果たそうと思った。


「マルディ、この子を抱きかかえるのだ」


「はいなのですわ、アミーラちゃま」


「オコジョがしゃべった!?」


 女の子は、驚いていた。

 

 本物のオコジョではないために、アミーラは人間の言葉で話せる。

 そして、アミーラちゃまはあたしを「マルディ」と呼ぶ。

 確かに、マルディジオンは、長ったらしくて、ほとんどの人が呼ばなくて、「マルディ」とか「マル」とかの方が多いかも。


 身長一四六センチという小さな体のあたしは、自分より少しだけ大きい女の子を、抱きかかえた。


「お姫様だっこ・・・?」


「詳しい説明は、後なのですわ。

アミーラちゃま、次はどうしたらいいのですか?」


 あたしは探偵助手で、アミーラちゃまが探偵。

 ということは、やることはアミーラの指示に従うだけとなる。

 

「いたぞ、侵入者だ!」


「どこから、入ってきた?」


 白衣を着た人たちが、どこからか入ってきて、あたしたちはすぐさま囲まれた。


「侵入者が来てるのですか?」


 あたしは、状況がよくわからないでいた。


「マルディ、きっとそれは、おいらたちを指してると思うぞ?」


「それで?」


「それでって?」


「この状況に、出くわしたらどうしたらいいのですか?」


「戦う」


「わかったのですわ」


 あたしは女の子をおろしてから、槍を用意した。


 相手は、せいぜい数十人くらい。

 このくらいは、あたしの敵じゃない。


「構えろ!」


 白衣を着た人たちが、銃を向けてきて撃ってきたけれど、私は槍の刃先だけで弾丸をいくつか壊してきた。

 なぜか、白衣を着た人たちの顔が青ざめていた。


「これで、終わりなのですか?

もっと、運動がしたいのですわよ・・・」


「いっそ、研究所そのものを壊すのは、どうだ?」


 アミーラちゃまが、あたしに提案をした。


「あたしも、そう思っていたのですわ。

この建物が嫌で嫌でしょうがなかったのですわよ」


 あたしは槍で壁を破壊した。

 ジャンプして、天井も壊した。

 そんなことを繰り返しているうちに、研究所は壊れた。


 あたしと、アミーラちゃまと女の子は、なんとか脱出できた。


 なんとかと言っても、崩れていくコンクリートを避けながらだから、体力的にはすごく疲れてくるかも。


「危ないでないか!」


「今、言うのですか?」


「巻き込まれて、下敷きになったら、どうする気だったんだ!?」


 どうしてかわからないけど、アミーラちゃまが怒っていた。


「それを配慮してまでの指示がなかったから、思い切っりやっていいのかと思ったのですわよ」


「言わなくても、考えるのでは・・・?」


「アミーラちゃまの普通を、あたしに押し付けないでほしいなのですわよ」


「どうして、ここがわかったの・・・?」


 女の子に、質問をされた。


「こんな密室の空間を、どうやって見つけられたの?」


「それは・・・」


 あたしは、口ごもっていた。

 本当のことを言っていいのだろうか?

 言っても、信じてもらえるのだろうか?


「彼女は、探偵助手。

事件の内容を、夢で見たんだ」


「へ?」


 女の子は、不思議そうな表情をしていた。


 あたしは、夢で事件を見ることができる。

 不思議な異能力で、それは人間だった頃からあった。


 夢で犯人の動機、被害者のことや、起こる事件すべて・・・。


 だから、夢で女の子が誘拐され、研究所に閉じ込められ、実験にされることもわかった。

 実行犯も、黒幕も知ってる。

 ただ、それだけのことだった。


「アミーラちゃま、これ以上のことは、言わなくてもいいのですわよ。

事件は、謎は、解決したのですわ。

犯人も、見つけれたのですわよ。

それで、いいんじゃないのですか?」


「マレディ・・・」


「それに助手としては、手を貸しただけなのですわよ。

本当に行動したのは、探偵であるアミーラちゃま、すべてアミーラちゃまのおかげなのですわ」


 あたしは、自分の能力のおかげなんて思わない。


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