曇天を越えて
星咲 紗和(ほしざき さわ)
第1話 変化の兆し
梅雨の初め、空は鉛色に重く垂れ込め、風もなく、湿度だけがじっと空気を支配していた。街は静かで、雨音が唯一のメロディーとなっていた。
高校生の陽介は、そんなある日、自分の体がおかしいことに気づいた。朝から体が重く、学校への道すら遥か彼方に感じられた。友人たちは気づかない。皆、傘をさして急ぎ足。陽介も無理に笑顔を作り、彼らに合わせた。
しかし、体調は日に日に悪化していった。雨が降るたびに、陽介の体は反応し、鉛のように重くなる。晴れた日はまるで別人のように元気になるが、雨の日はベッドから出るのも一苦労だった。彼はこの異変に戸惑い、不安を抱えながらも、誰にも相談できずにいた。
ある雨の日、限界が来た。学校の中庭で友人たちと遊んでいた陽介は、急な気圧の低下を感じ、立っていられなくなった。彼はその場に崩れ落ち、目の前が真っ暗になった。
目を覚ました陽介は、保健室のベッドの上だった。心配そうな保健の先生と友人たちの顔が見える。彼は自分の体調と天候の関係について話し始めた。先生は真剣に聞いてくれ、友人たちは驚きながらも、支えてくれると言った。
その日を境に、陽介は自分の体と向き合う決意をする。彼は天気と自分の体調の関係を記録し始め、少しずつ自分の体のサインを理解しようと努めた。そして、この特異な体質とどう共生していくか、その第一歩を踏み出したのだった。
「曇天を越えて」は、陽介が自らの体と、それを取り巻く世界との調和を求めていく物語の始まりである。
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