14 ダウナー僕っ娘、ヒロインレースごぼう抜き
「朝倉さん、何やってるんですか………!?」
某銀行ドラマみたいな迫真の土下座に、響季さんご自慢のハスキーボイスが困惑の色で染まるのが………床上0センチからでもよく分かる。
「ほんの気持ちです」
「ほんの、じゃないでしょうコレ………」
「日本にはこんな言葉があります。『迷ったら土下座しろ』」
「僕も日本人ですけど1回も聞いたことないです」
「一種の贖罪」
「贖罪もなにも、朝倉さんとお会いしたことありましたっけ………」
「…………」
マズい。ひっじょーにマズい。
俺はこの子と認識がある………というか襲って泣かせて
彼女から見れば、俺は今日初めて会った隣人。なのに彼女の事を知っている素振りで、何なら開口一番に土下座してきたと。
………すると、必然的に。
「―――もしかして、僕のストーカー?」
不審者である方向に、話は行ってしまう訳で。
「違うんだけどなぁ…………!!全部説明するのもそれは大問題なんだよなぁ…………ッ!!」
「めっちゃあたふたしてますね」
「取り敢えず、俺はストーカーではない一般男子高校1年生なので許してください………」
「土下座する人が一般人に見えると思います?」
真正面から向けられるジト目に、俺は焦りを隠せない。
ヤバい。このままではストーカー疑惑の隣人として冷たい目で見られ、ラブコメ展開はおろかプリズン脱獄モノになってしまう。
仕方ない、奥の手だ………。
「………まあ、流石に響季さんの勇姿は知ってたので」
「―――勇姿」
「ガードを展開する時の詠唱、カッコいいですよね。文字に力強さが宿ってます」
「………なかなか分かってるじゃないですか」
ごめん嘘。一切カッコいいと思ってない。むしろイタいとすら思ってる。
「あとこの間、変態魔法少女軍団に果敢に立ち向かった姿、見てました」
「…………あれは酷かった」
「ほんとそうですよね。
「………わかって、くれますか。僕の苦しみが」
ごめん。俺の方が苦しい。自分をディスる苦しみと黒歴史的な痛みが襲ってきてる。
「まあ、隣にいるイキリ芸人たちもヤバそうですし」
「そうですよそうなんですよ!毎回僕によく分からない西欧貴族みたいなキャラを当てはめてくるし、2人ともクズだしお金の使い道は変だし………」
「あと、彼らの動画配信にも巻き込まれてますよね………」
「そうそう!!僕は身体張る気なんてないのに熱湯風呂させられそうになるし、なんなら際どい水着とか着せようとしてくるんですよ!?僕に絶対似合わないでしょ!!ザベスが着なよ毎回パッド入れてんだから!!」
「あとあと、炎上する度に響季さんが謝ってません?」
「それも本当になんだかなぁですよ。リョーマもザベスも謝る人じゃないから僕が謝るしか無いし!!………いっつも尻拭いしてるじゃん」
………なんだコイツ、苦労してんなぁ。
ツッコミ気質とダウナー気質が災いして、ハイテンション芸人枠の高坂リョーマとエリザベスの尻拭い………というかお世話係になっているのか。
話を聞けば聞くほど、高坂とザベスのクズさも露呈してるし。
やっぱ悪いことしたかなァ………。
「高坂とザベスはともかく、じゆヒスの面々は悪気は無かったと思いますよ。むしろ響季さんが好きだからダル絡みしただけじゃないかな?」
「そうですね………」
と、すかさずフォローは入れておくことにした。………当然芸人枠はダシに使わせて頂いたが。
「………ちょっと誤解が解けました」
―――すると、悩みをぶち撒けてすっきりしたのか、先程は怪訝な顔をしていた彼女の表情が、明るくなっていた。
「やっぱりストーカーじゃなくて、僕のよき隣人に決まりですね」
響季さんは理解者を見つけた………みたいなキラキラした目をして、俺の手を取る。
「改めまして、山県響季です。
僕も高1なので、敬語なんて要らないです。
―――よろしくね、梨央くん?」
その少しかわい子ぶった声、小悪魔的な上目遣いは。
いくら服装がボーイッシュとはいえど、端正な顔立ちも相まって女性らしさも感じられて。
………ハッキリ言って、めっちゃ可愛い。
「…………いやあの、いきなり下の名前は不自然じゃ」
「最初にそうしてきたのはそっちだからね?」
「………あぁ」
「だから、悪いのは梨央くんってことで」
「まあ、それなら……」
「僕の方も、さん付けとか必要ないから」
赤面する俺に、にししと笑いながらちょっかいをかけてくる響季。
…………いーや、これはヤバいって。
ネタ枠の敵キャラの中にさいかわが居て、しかもソイツが中性的だったのに急に女の子出してくるって、分かるわけ無いだろ………。
◇
「…………で」
「もぐもぐ」
「…………なんで響季が俺の家でカレー食ってんの」
「何か問題でも?」
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