第12話 友人との雑談
第5話に一部修正箇所があります。
そして、12話から毎週月曜日の22:00に更新することに致します。
今後ともよろしくお願いします。
前書きはここまでとなります。
それでは本編へどうぞ~。
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1週間後……
俺はあの日の後、1週間にわたってクラスで怒涛の質問攻めに合った。
しかも、事情を知っていると判明した蒼汰と陽菜もほぼ恒常的に囲まれていた。
土日を挟んだ今日、ようやく鎮まる方向に向かっていったのだが、それでも質問が止まらない。
よくそんなにも質問が出てくるな……と呆れを通り越して尊敬してしまった。
そんなわけで、今は放課後、俺、陽菜、蒼汰、冬馬の4人で朝霧さんのカフェに来ていた。
「はあああぁぁぁぁぁっ……………」
「すっげぇ溜息だな。気持ちは分かるけど……」
「ほんとにね。まさかウチのクラスメイトがあそこまで恋バナが大好物だったとは……」
「僕のクラスでもだいぶ話題になってたよ……まあ、三人とも、お疲れ様」
あからさまに疲れました感を出すように脱力する俺たち。
「にしても、みんな興味ありすぎじゃねぇか?火曜日とか昼飯すらまともに食わせてもらえなかったぞ」
「正直俺も興味はあったぞ。あの真人が女子と仲良くなるなんて、青葉さん以外ありえないと思ってたからな」
「あのってなんだよ、あのって……」
「は?真人お前忘れたのか?」
「え、何を?」
蒼汰は呆れたような視線を俺に向けてくる。
わけが分からず首を傾げると、冬馬すら怪訝そうな顔で見つめてくる。
「待て待て本当になんのことだよ?」
「中学の頃のこと、忘れたのか?」
そう言われて思い出してみるが、あのと呼ばれるような出来事は特に何も思い浮かばない。
「なんかあったっけか?」
「お前なぁ……」
「真人、やっぱ鈍感だね……」
「いや、マジでどういうことだ?思い当たる節がないんだが?」
「中学ん時、お前めっちゃモテてたんだからな?」
「…………んえ?」
意味が分からな過ぎて変な声が出た。
俺がモテる……?なんの冗談だ。
「え?え?俺告白されたことゼロだったんだけど??今日は4月1日じゃないぞ???」
「んなこと分かってるわ。真人が無意識で優しさのバーゲンセールをしてたせいでほとんどの女子が勘違いしてたんだよ」
「優しさのバーゲンセール……?」
なんだそのよく分からん文字列は……
それはともかく、優しく、か……
特に優しくした記憶もないけどな。
「優しくしたことが思い当たらないって思ってるだろ」
「……なんで思ってること当ててくるんだよ」
「そりゃ、お前の顔にそう書いてあったからな……。それで、話を戻すぞ。ほら、重い荷物を自分から持ったり、怪我した子の手当とかしてたろ?」
「…………え?真人、怪我した女の子の手当してたの?」
「……してた記憶はある。まあ、絆創膏とか渡したり、擦り傷に包帯巻いたりとかぐらいだったけど」
「あのさ、真人」
「ん?なんだ?」
「あたかも普通のように言ってるけど、それ、普通じゃないからね」
「え?」
「うん、それは誰でも勘違いする。私でも勘違い出来る自信がある」
「だとよ、真人」
嘘、だろ……?
「そんなぁっ?!……とは言ってみたけど言われてみて思い返したらやばいな、昔の俺」
「今更気付いたか、この女たらしめ」
「誰が……って言いたいところだけど言い返せねぇ……」
「だろ?しかもそれで女子からの好意を悉くスルーしてたんだぜ?更に彼女なんて興味ありませんオーラ全開だったからな」
「なるほど、分かった。あのって言われる所以が」
「やっとわかったか。これで俺の事を女好きとか言えなくなったな!」
「「それは事実だから違う」」
「ハモった?!」
俺と冬馬の連携攻撃に蒼汰が沈む。
ちょうどその時、店員さんがお盆を持ってやってきた。
「お待たせしました~。アイスラテシロップ入り3つとブラックコーヒーです」
「ありがとうございます。えーっと、ブラックコーヒーが僕で、ほか三人がアイスラテです」
「承知いたしました~」
店員さんは手際よくグラスを並べる。
そして、「ごゆっくりどうぞ~」と言って戻っていった。
「さっきのお姉さん可愛かったなぁ」
「「「……」」」
「それで、さっきの話の続きだけど俺は女好きじゃあない」
「「「どの口が???」」」
今度は陽菜も一緒にツッコむ。
流石にツッコミどころが多すぎる。
そう思いながら珈琲に口をつけると、冬馬が声をかけてきた。
「真人ってブラック飲めるんだ」
「そうだな。割と苦いのも好きだし」
「辛いもんも好き、苦いもんも好き……お前の嫌いな味ってなんだよ……」
「ん-、強いて言うなら甘ったるいもんかなぁ。あとは渋味?とかかな」
「強すぎる……」
「真人って小っちゃい時からそんな感じだったよねー。好き嫌いなさ過ぎて幼稚園の先生からめっちゃ驚かれてたし」
「そんなこともあったような……てかよく覚えてたな」
「ふふん!学年3位の記憶力を舐めてもらっては困るのだよ……!」
陽菜が胸を張る。
陽菜は割と発育がいいので男は目のやり場に困る───俺を除いて。
とは言いつつもここで変な詮索を食らうと面倒なので、蒼汰と冬馬と一緒に目を逸らす。
「……そういえば陽菜って学年3位だったな……」
「そうだよ?でも真人だって英語は学年トップじゃん」
「英語だけだろ?全体順位は10位ぐらいだ」
「10位でも十分だろ?!毎回平均よりちょっとだけ高いぐらいの俺はどうすればいいんだよ?!!」
「勉強した方がいいんじゃない?」
「なんか5位の人からド正論パンチ飛んできたんだけど?!」
「お疲れ、蒼汰」
「うざっ!……てか何気にこのメンツ頭いいな?!俺を除いて!」
「…………なぁ蒼汰。お前入試何点だったっけ?」
「え?えっと……469?」
「お前もやりゃ出来るんだよ。そのやる気がねぇだけで」
そう、普通に蒼汰も地頭はいいのだ。
正直こいつは「やれば出来る」を体現したようなヤツだ。
例えば去年の夏、7月までに課題を全部終わらせたら国内ならどこにでも連れてってやる、なんてふざけ半分で言った結果、マジで終わらせてきやがった。なんなら夏休み始まって1週間も経たずに。しかもほとんど正解。
まあ、流石にここまでしてきてやっぱなし、なんて言うほど俺も鬼じゃないので北陸に2泊3日旅に連れて行った。
「じゃ、なんかご褒美ぶら下げてくれよ。全力で食いに行くから」
「今年中に俺の順位抜かせ。そしたら卒業旅行で海外に旅行するぞ」
「了解!!漲ってきたぞぉ!!!」
「ねぇ、真人……それ、よくないんじゃ……」
「分かってる……分かってるけど……こいつもう終わってるから餌ぶら下げでもしないと動かないんや……」
「でも、本気の蒼汰の力忘れてないよね?多分10位なんて余裕で抜かせちゃう───「誰が俺の順位が変わらない、って言ったのかな?」え?」
「何がなんでも抜かさせない。そのためなら俺は1位だって取るつもりだぞ」
「こっわ……」
冬馬が俺に恐怖の視線を向けてくる。
気持ちはわかる。俺も親友のためだけに学年首位を取るとか言い出す奴が居たらきっとそいつとは一歩距離を取るだろう。
まあ、俺がそのイカレた奴の一人なんだけどな。所謂同族嫌悪ってやつだ。多分違うけど。
そんな感じでわいわい騒いでいる俺たちを、客がいないからと言ってカウンター席で座っている朝霧さんが温かい目で見守っているのだった。
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