第26話 新しい治療院
教会のすぐ近く、一階がテナント二階が住居の物件が直ぐに決まった。不動産屋のご厚意で、安く借りられたのだ。内装は少しずつ変えて行けばいいだろう。
教会だと、固い長椅子しかなかったから、座るにも痛かったに違いない。まずは柔らかいベッドを幾つか置くことにした。費用は、王様からお金を貰っているので心配が無い。
シルビアはすっかり元気を取り戻したようで、ぼくは安心していた。若干、ぼくとの距離が近いのが気になるけれど。お店の入口には豪華な花が飾られている。町の人たちが持ってきてくれたものだ。
アリスが新しいお店を見に来ていた。
「まぁ、仲のよろしいことで」
アリスが冷ややかな目でぼくを見ている。ふと横を見るとシルビアが、くっつきそうなくらいぼくの近くにいた。ぼくは驚いて、とっさに離れた。
「あは、失礼しました」
慌てて、距離を取るシルビア。
「さあ、お仕事、お仕事!」
シルビアは奥の部屋へ入って行った。
「心配だわ・・」
はあ~とアリスがため息をついた。
「え?何が?」
「気が付いていないのは本人だけなのよね。こうなったら私も覚悟を決めないと・・また来るわね」
一体何のことを言っているのだろう。はて?
アリスは教会に戻っていった。
カラカラーン
ドアに付けた鈴が鳴った。
「怪我を治してもらいたいのだが・・」
中年の男性冒険者が、仲間に肩を貸してもらって歩いてきたようだ。ベッドに横になってもらい、怪我の具合を診ることにした。
「はい。診せてもらってもいいですか?」
胸部の深い傷だったので、ぼくがヒールをかけることにした。軽い怪我はシルビアに魔法をかけてもらっているのだ。
『癒しの女神よ我に力を与えたまえ・・ヒール』
「おお、傷が消えている・・痛く無くなった!噂通りだ!」
「流石グリーンさんですね。あたしのヒールだと治りきらないかも・・」
「そう?」
「治療費は、銀貨2枚と聞いたが・・それでいいのか?」
シルビアは驚いた様子で、ぼくとお客様を交互に見ている。
「有難うございました」
ぼくは冒険者から、銀貨2枚を受け取った。
**
閉店後シルビアが治療費のことを聞いてきた。
「「えええ?銀貨2枚なんですか?安すぎません?」」
「以前のお店は金貨一枚取っていましたよ。それでも安いからと値上げしたいって言ってたし・・グリーンさんどんだけ良い人なんですか・・」
金貨一枚って高すぎだろそれ。貴族ならともかく庶民の金額じゃない。
「今のお店はテナント料金が発生するんですよ?以前の教会ならまだしも・・せめて銀貨5枚にしたらどうですか?」
「うう~~ん」
確かに月に一度お金がかかるんだよなぁ。テナント料金。忘れていた。仕方ない少し値上げするか。だけど、上げてお客さんが来なくなったらどうしよう。
「んん~銀貨3枚で」
「仕方ありませんね。しばらく様子を見て、無理そうだったらまた上げたほうが良いと思いますよ」
本当言うと値段は上げたくないんだけどなぁ。仕方ないか・・。
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