第12話「天才Doctorとの遭遇」
【東都大学附属病院】
日本にある病院の中でも上位層にある病院で最先端の設備と1000人以上を搬送することが可能な病室の数が揃っている。そんな病院の入り口に私服姿の2人の女子高生が立っていた。ユイアとアサヒだ。
「すっごい大きな病院....」
「ヒビキ、すごいとこに運ばれたんだね....」
親友のお見舞いに来た2人もそのあまりの大きさになんだか緊張してしまい、中々入れないでいたがこうも入り口の前にずっといると迷惑になると思い病院内に入ることにした。清潔感溢れるエントランスにはたくさんの怪我人と忙しそうに移動する医者や看護師達の姿があった。
「何この人の数.....」
「私、受付行ってくるね!ユイアはここで待ってて!」
「うっうん!」
アサヒが受付の方へ行ってしまい1人取り残されてしまったユイアはとりあえずベンチに座った。周りを見渡すとやはり怪我人ばかりだ。アサヒを待っていると1人の角刈りをした白髪のお爺さんが杖をつきながらユイアの横にやってきた。
「お嬢さん隣いいかい?」
「はい、いいですよ!」
お爺さんは軽くお辞儀するとユイアと少し距離をとってベンチに座った。かなり渋い人だなーと思いユイアは話しかけてみる事にした。
「いつもこんなに人がいるんですか?」
「いいや、お嬢さんニュース観てないのかい?」
「いっいいえ」
「ニュースは観たほうがいい常に新しい情報を得ることは大切だ。昨晩、神奈川の方でメモリスが暴れて300人以上が被害を受けたそうだ。」
「そっそうなんですか!?!」
「あぁ、メモリスはすぐにレーテの神奈川支部長によって倒されたが来るのが遅かった。かなりの数の人が軽傷、重傷問わず傷を負ってしまった。だから神奈川に近いこの病院にも怪我人達が昨晩運ばれてきたわけだ。」
「........」
ユイアは自分がウミヘビのメモリスと戦っていた昨日の夜、神奈川でそんな事が起こってたなんて知らず昨晩はすぐに帰路へ着いてしまった事を思い出し顔を下に向けた。
「メモリスとはなんなんじゃろうな。研究は進められているが未だに分からん。だが分かっていることはある。あの化け物は宿主の記憶に強く影響を受ける。」
「宿主の記憶?」
「昨晩、暴れたメモリスの宿主は過去にイジメや虐待を受けていたらしい。被害者の中には彼の家族やイジメの主犯格だった少年もいたそうだ。ワシはどうもあのメモリスという化け物はその人の分身のように思えてな、自分の中にもあんなものがいるんじゃないのかと考えてしまうんじゃ。」
「......」
するとお爺さんは杖を持ちゆっくりと立ち上がった。
「そろそろ行こうとするかの、老人の話に付き合ってくれてありがとう。」
「いえお話を聞けてよかったです。」
お爺さんは杖をつきながらどこかへ向かって歩いていこうとする。数歩歩いてユイアの方を振り返った。
「そうじゃ、お嬢さん。最後に一つだけ聞いていいかい?」
「はいなんですか?」
「人は好きかい?」
その質問に対しユイアは数秒黙って考えこう言った。
「はい!」
その言葉を聞いてお爺さんは少し微笑んでうなづくと再び前を向いて歩き始めた。
「その言葉を聞けてよかった。」
お爺さんの去っていく背中を見つめていると受付から戻ってきたアサヒがユイアの前にやってきた。
「ごめーん受付長くなっちゃって!」
「うんうんいいよ!アサヒ、ヒビキの病室は?」
「えーーっと北病棟の509号室だって!」
「うん!どこ!」
「わかんない!!」
「よし探そう!!」
「「おーー!!!」」
【1時間後】
「で1時間かかったってわけ......」
ユイアとアサヒはベッドで起きあがった状態のヒビキの横に椅子を置き座っていた。
「その半分以上はアサヒを探してたんだよ!」
「うーー途中で看護師さん見つけて教えてもらおうと思ってついていったらユイアとハグれちゃって......」
「でも見つかってこうしてヒビキの病室これたんだし結果オーライだよ!」
「結果オーライ....なのかな」
ヒビキは苦笑いを浮かべる。彼女の姿を見るに健康そうで良かったと思った。
「ヒビキ、身体は大丈夫?」
「うん検査の結果はどこにも問題なしだって。明日には退院できるよ。」
「「良かったー!」」
2人はホッとするとお見舞いとして持ち合ってきたお菓子や飲み物などをカバンから取り出した。アサヒはコンビニで買ってきたヒビキが好きなチョコクリームのシュークリーム。ユイアはチョコのマフィンとココア。チョコのマフィンはクマの頭の形をしておりそれぞれ表情が違う。
「わ!ユイアの手作りお菓子だ!」
「うん!朝焼いてきたんだ~よーし持ってきたお菓子みんなで食べよう!」
【2時間後】
3人は雑談をしながら2時間ほど過ごした。ユイアは途中で飲み物を買いに病室から出てその階にある自販機を探しに向かう。
「どこだろう?」
ユイアは看護師や医者が行き交う長い廊下を歩きながら、自販機を探していると見たことある人を見つけた。黒髪で青い瞳、身長が高くてレーテの隊員服を着た....ユキタカだ。ユイアはすぐに声をかけようと近づいた。
「ユキタカさー!」
「ユキタカ!」
ユイアよりも先に誰かがユキタカに声をかけた。ユイアはすぐに物陰に隠れて様子を見た。車椅子に乗った黒髪の青年が車椅子を動かしながらユキタカに手を振っている。
「進介、無理をするな。俺が押す。」
「大丈夫だって!この車椅子を扱うの上手くなったんだぜ!そうだ屋上行こう屋上!あそこから海が綺麗に見えるんだ!」
車椅子の彼は楽しそうな表情を浮かべ車椅子を漕ぎながらエレベーターの方へと向かい始めた。ユキタカはその後ろをついていく。ユイアは2人が去ったのを確かめると物陰から出た。
「ユキタカさんのお友達....かな?うん....お友達と一緒にいるの邪魔しちゃダメだよね!よし私も戻ろう!でも自販機どこだろう......あ」
隠れていた場所のすぐ横に自販機がある事に気づいたユイアは飲み物を買って病室の方へ戻った。そして午後3時までヒビキの病室でいつも通り3人で話しているとアサヒがスマホの画面を点けて焦った表情を浮かべる。
「あ!そろそろ帰らないと私用事あるんだった!」
アサヒは急いで持ってきたお菓子などをカバンに荷物をまとめ始めた。
「そうなの?じゃあ私も帰ろうかな。」
「うん、今日は来てくれてありがとう。」
「明日は退院祝いに一緒に遊びに行こう!」
「いいねそれ、楽しみにしておく。」
2人は荷物をまとめるとヒビキに手を振りながら「ばいばーい!」と言って病室を出た。2人が話しながら歩いていると1人の医者とすれ違った。50代くらいの男性の医者だ。何かしらの資料を見ながら歩いていたがユイアはすれ違った瞬間に医者のポケットから何かが落ちた音に気がついた。
「どうしたのユイア?」
「さっきすれ違ったお医者さん何か落とした。」
ユイアは振り返り、廊下に落ちたものを拾った。落ちていたのは緑色の可愛い忍者のマスコットがついたストラップだ。塗装が擦れて剥げていることから結構年季が経っているように見える。
「何だろうこのキャラ?」
「あ、それ「にんまるくん」だよ!」
「にんまるくん?」
「見習い忍者のにんまるくんが妖怪の親玉に攫われたお姫様を救う40年以上の歴史がある大人気アクションゲーム!懐かしいな~私が子供の頃やってたのは確かスーパーにんまるくんX2だっけ?」
「私ゲームとか全然やらないから分からないや。とりあえず届けに行ってくるね!アサヒは先に帰ってて!」
「えっちょ!」
アサヒの返事を聞かずにユイアはにんまるくんのストラップを落とした医者を探しに走り出した。
「たしかこっち曲がったよね。」
廊下を曲がったところで先ほどの医者が自販機でコーヒーを買っている姿を見つけて声をかけた。
「あの!」
「え、」
「これ落としましたか?」
ユイアはポケットに入れていたにんまるくんのストラップをその医者に見せた。それを見た瞬間に焦った様子で自分のズボンや白衣のポケットに手を入れて確認し始めた。
「ほんとだ、なくなってる。まさか落としていたなんて気づかなかったよ。」
ユイアはにんまるくんのストラップを医者に手渡した。手渡した瞬間、医者は少し微笑むと白衣のポケットにしまった。
「可愛いですねそのマスコット!」
「そうだろう?20年前かな。僕が受け持ってた患者さんがくれたんだ。僕にとって大切なお守り、拾ってくれてありがとう。」
「はい!あ、もう落としちゃダメですよ!」
「あぁこれからは絶対落とさないと約束するよ。」
ユイアは渡すことができたので医者に手を振って立ち去ろうとした。その時だった。誰がこちらに歩いてくる。その音がする方を振り向くと白髪で長髪の少女がいた。
「うん?」
「ごきげんよう♪貴方が天才外科医の宝条恭次郎(ホウジョウ キョウシロウ)先生?」
「天才外科医....か。君は?誰かのお見舞いに来たの?」
医者はため息を少し吐くと少女に近づき目線が合うようにしゃがんだ。ユイアはこの瞬間に嫌な予感を感じたが数秒後にそれが当たってしまう。少女はどこからか白いカセットを取り出す。それがユイアの視界に入った瞬間にユイアは動き出した。
「先生!!その子に近づかないで!!」
「え?」
遅かった。少女は手を伸ばし白いカセットを彼の頭に当てた。そしてカセットが光り、彼の頭からフィルムが飛び出していき形を形成していく。
「才能がある人はメモリスを宿している可能性が高いというゴーストの説は当たっていたわね♪さぁどんなメモリスが生まれるのかしら?」
少女が持っていた白色のカセットは黄緑色に変色しており少女は医者から出てきたメモリスに手渡した。
「さぁ思う存分暴れてきなさい。ふふWelcome to the party♪」
そう言うと少女は立ち去った。ユイアはすぐに少女を追いかけようとするが医者から出てきたメモリスが風を巻き起こし行く手を塞ぐ。
「待って!!」
巻き起こした風には木の葉が混ざっておりユイアの顔や服についてしまう。ユイアはすぐにそれを払って目の前にいるメモリスの方を見る。まるで忍者のような姿をしたメモリスは再び風を巻き起こし、次の瞬間には少女の姿はどこにもなかった。
「あの子いない....ってえ!忍者のメモリス!?ちょっとかっこいい!でもメモリスだから....被害が出る前に倒さないと!」
ユイアはカバンからドライバーを取り出し、腰に巻きピンク色のメモリカセットをドライバーのスロットに装填した。装填すると後ろに画面が現れ、画面の中からバッタのヒーローが飛び出しユイアの隣に立つ。ユイアは腕を突き出し変身ポーズを取るとドライバーのホイールを3回回転させる。
バリィィィィイン!!!!
3!
2!
1!
「変身!」
ヒーローアップ!You are HERO!!!!
隣に立っていたバッタのヒーローはバラバラになりユイアの身体に装着され、複眼がピンク色に発光する。
「さぁ私が相手だ!!」
ユーアは目の前にいるメモリスに向かって指をさす!がそこにメモリスの姿はなかった。
「っていなーーーーい!!!え!どこ行ったの!?もーー変身の間は待っててよ!!」
「そこの窓から出ていったよ!」
医者が指差した窓には確かに割られている。ユーアが窓から顔を出すと先ほどいたはずの忍者のメモリスが忍者走りをしながら渡り廊下の上を走って逃げている。
「あ!いたー!!」
忍者のメモリスを見つけたユーアは忍者のメモリスが割ってできた大きな穴から飛び出した。しかしここは7階。ユーアの身体はすぐに落下し始めた。
「わーーー!!!!でも!!」
ユーアは落下しながら腰につけたホルダーに装填されていた赤いメモリカセットと入れ替え、ドライバーに装填するとホイールを3回回した。
3!2!1!
ヒーローアップ!赤き熱風!掴む明日!ホーク!!You are HERO!!
ピンク色のバッタのヒーローのアーマーが外れ、赤色の鷹のヒーローのアーマーがユーアに装着される。ユーアは背中から生えた翼を使い上昇し、逃げようとしている忍者のメモリスを追いかけた。
「待てーー!!」
ユーアが追いかけている事に気づいた忍者のメモリスは立ち止まり指を動かし印を結び始めた。
「忍ポうブン身のじゅツ!!」
ドン!!
もくもくと白い煙が立ち始め煙が消える頃には忍者のメモリスは10人以上に増えていた。
「うわすごい!!忍術だ!初めて見た!!」
ユーアは分身した忍者のメモリスを純粋な瞳を輝かせながら見つめていると一斉に忍者のメモリスは手裏剣を投げ始める。
シュッ!シュッ!シュッ!
それを全て避けると忍者のメモリスがいる渡り廊下の上に急降下する。再びホルダーからメモリカセットを取り出しドライバーに装填されていたカセットと入れ替え、ドライバーのホイールを3回回した。
3!2!1!
ヒーローアップ!双頭が巻き起こす!切り裂く!シャーク!!You are HERO!!
赤いアーマーが外れ飛び散ったものが忍者のメモリス達にぶつかる。そしてその代わりにサメのアーマーがユーアに装着された。
「さぁこれで決めようか!」
ユーアはホイールを3回回す。すると忍者のメモリス達の周りに水が徐々に発生し集まって大きな水の塊を生み出すとその水の塊は渦を巻き始め、忍者のメモリス達を吸い込んでいく。
「「「「うわァあァァぁああァアア!!!!」」」」
ユーアは高く跳び上がると渦の中心に集まった10体以上の忍者のメモリスに向かって両足を突き出し勢いよくキックを放つ。
「ハァァァァア!!」
シャーク!エヴォークスマッシュ!!
バッシャァァァァァァアァァン!!!!!
忍者のメモリス達はその衝撃で水と共に飛び散り落下していった。しかし爆散せず白い煙がポン!と上がると木の葉が十数枚ヒラヒラと落ちていった。
「もしかして....全部分身!?本物は........いたーーー!!!」
上を見上げると屋上の方でユーアを見下ろしている忍者のメモリスがいた。
「バレた!二げロ!!」
「うわー!待てー!」
このままでは逃げられてしまう。そう思ったその時だ。
「剣心一閃!!」
剣心!一心斬り!!!
ズバァァァァアァァァア!!!!!
「グワぁあぁアア!!」
青色の斬撃が忍者のメモリスは身体を真っ二つに切り裂かれ爆散してしまう。屋上に誰かがいる。刀を鞘に納刀したその人物と目が合う。
「間に合ったな!」
「ゆっユキタカさん!!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます