10

 秋の絵はとても少ない。

 今現在、秋が自分の名前できちんと発表している作品は三作品のみだった。

『森秋』

『わがまま怪獣』

『笑う女』

 の三作品だった。

 森秋が自画像で、わがまま怪獣がデフォルメされた漫画のような絵で笑う女が抽象画だった。

 どれもとても高い評価を受けている。

 私は『森秋』と『わがまま怪獣』は実際に絵画を見ることができたのだけど、『笑う女』は見たことがなかった。(有名な地方の美術館で現在は展示中らしい)

 笑う女の絵も見てみたいな。(実際に美術館まで行こうかな? と本気で考える)

 私は秋が天使に見えるときがある。でも同時に悪魔に見えるときもあった。(それは秋のせいじゃない。きっと私に問題があるんだ)

 私は秋に「秋はとても複雑な人に思える。そういう風に見える」と言った。すると秋は「もしそれが本当のことなんだとしたら、複雑なのは私じゃないよ。それはあなた。だってここにあるのは鏡だから」と私の前で両手を使って丸い輪っかを作って秋は言った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る