源義経黄金伝説第4話

源義経黄金伝説■第4回 鞍馬山で師匠の鬼一法眼から武術をならう牛若は、守護神に合う。また、僧、源空に心を見透かされ

源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようと

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源義経黄金伝説■第4回 鞍馬山で師匠の鬼一法眼から武術をならう牛若は、守護神に合う。また、僧、源空に心を見透かされる。


源義経黄金伝説■第4回★作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所


十五年後。永暦元年(一一六〇)

今年57歳になった法師が、山道を登っている。


 京都、鞍馬山僧正ヶ谷である。山肌に木の根が血管のようにごつごつと現れている。

 激しく武者修行をする牛若の前に、法師が一人現れていた。


かぶりもので牛若うしわかには顔が見えない。

「牛若殿、元気であらせられるか」

「はっ、あなた様は」


「名乗るほどの者ではない。いずれ私の正体わかりもうそう。いわば、牛若殿

の未来にかけておるものだ。いかがかな、牛若殿、武術の方は上達いたしました

か」


その問に不審な顔で牛若は答えた。


「はっ、師匠の鬼一法眼おにいちほうがん様の指導よろしきを得て、ますます励んでおります」

「そうよのう、ここ鞍馬山の坂道で鍛えられれば、体力もつきもうそう。が、

牛若殿、くれぐれも自重されよ。牛若殿の身は、御身一人だけのものではないの

だ。お気をつけられよ」


 そう言い残し、法師は去って行った。

練習に励む牛若の前に、牛若の師匠、鬼一法眼が現れる。

京都、いや日本で有名な幻術師である。


「お師匠様、見たこともない法師が、私を激励されましたが…」

不思議そうな表情で述べた。


 鬼一法眼はかすかにほほ笑んで


「ふふう、牛若、あちこちにお前の守護神がおるようだのう」

「あの方は、私の守護神ですか」


「どうやら、そのようだのう」

 牛若は、首をひねる。その姿を見て、鬼一法眼は笑っていた。


今、牛若は毎日、下界の京都までかけ降りては、自分の武術を試し、鞍馬にかけ戻っている。


「牛若殿、またそのような乱暴狼藉を働かれて…」

非難するような様子で、その若い僧は言う。


 その源空げんくうという名の僧は、京都王朝の大学・学術都市である比叡山の僧坊に属しているのだが、ある時牛若と出会い、友達となったのだった。ゆっくりとお互

いの身の上を話し合った。


 源空は、じっとりと顔が濡れるほどに、牛若の身の上を案じてくれた。

「何と、お可哀想な身の上なのだ…」


 その若者らしい激情に、牛若もまた自身の身の上話に、ほほに涙をぬらすのだ。

「牛若殿、仏に身を任せるのじゃ。そうすれば、おのが身、仏によって救われ

るであろう」いつも出会うたびに、言うのだった。が、牛若は仏を信じぬ。


 牛若は自分の体は、戦の化身だと信じている。

なぜならば、父は源氏の氏長者うじのちょうじゃ

だったのだ。武者中の武者の血が流れているのだ。



それがこのような京都の外界、辺境

に置かれようとも、いつかはこの世に出たい。源氏の若武者として、名を馳せた

い。そういう願いが、牛若の心を一杯にしている。


そうするべきだという自身が、みづからの中から沸き起こるのだ。


 若い血は、あの急勾配の鞍馬山を、毎日行き来することによってにじり立

ち、若い体は強力な膂力を手に入れつつあった。そして、その若い力を、この無

慈悲なる、牛若自身の力を理解しない世の中へ出て試したいと、希っていた。

これは、世に対する復讐なのか


 源空は、やさしくにこやかな表情でゆっくりと分かりやすく牛若に語る。


「およしなされ、牛若殿。、、、おのが身は、、、平相国そうこく、平の清盛様から助けられた命でございますぞ。、、、そのようなお考え、恐ろしいことは、お止めなされ」 と非難し止めるのであった。


なぜに源空は、私の心がわかるのか、、と 牛若は思った。


(続く)


作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

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