屋根の上のポワレ。

猫野 尻尾

第1話:おフランスから来た女の子。

崖の上のポニョとは一切、関係ありません。(=^x^=)

しいて言うなら、この話は鳥山明先生の『鳥山明○作劇場』「CHOBIT(チョビット)」のリスペクトだと思っていただければ・・・。



僕の家は海岸線沿いにある。

道路を挟んて目の前は海、子供の頃夏休みには道路を渡って毎日泳ぎに行っていた。


カモメが飛んで、夕方に漁師の船が帰って来る。

水辺線に沈む夕日・・・その風景は今も目に焼くついてるし今も変わらない。

だから、嫌なことがあったりした日には僕んちの屋根の上から海に沈む夕日を

ずっと眺めてた。


そんな穏やかな港町、そんな平和な僕の家に、ある日外国人の女の子が訪ねてきた。

そんなことおよそない出来事。


訪ねて来た子は小学生くらい?に見える。

髪は金髪で、小顔に頭の上で髪を玉ねぎみたいにまとめてあった。


訪ねて来たって言うから、玄関に放置しておくわけにもいかず、とりあえず

家に上がってもらった。

だけど、外人の女の子が我が家を訪ねてくるなんて誰も思いたる節はない

わけで・・・親父も母親も僕も、ただ首を傾げるばかり。


で、その子の話を聞くと、なんでも指輪の持ち主に会いに来たって言う。

指輪を持ってる人に呼び出されたからって・・・。


指輪?・・・指輪ってなんだ?・・・思い当たる節がない。


僕がうっかり忘れていただけで、実はこれにはちゃんとした伏線と言える

話があったんだ。


つい先日、僕は会社の出向でフランスに一ヶ月あまり赴任していた時があった。

初めての海外、フランス語が堪能なわけじゃなく友達だってすぐにできるわけ

じゃないから、休みの日はガイドブックを片手にひとり街を徘徊することが

日課になっていた。


ある時、珍しい骨董品を売ってる店に目が止まったから見るだけならと思って

店に入った。

なにか掘り出し物はないものか?

買わなくても見て回るだけで珍しいモノに興味を惹かれる。


そしたらそのうち何も買わずに店をでるのは悪いと思いはじめた。

だからなにか小物でも買って店を出ようと店の入り口に置いてあった箱の中

から指輪を一個物色した。

で、これって指輪を一個選んで人差し指にはめてみた。


「ぴったりじゃないか?・・・これにするかな」


金色の装飾のない指輪・・・と思ったらルーン文字のような字が指輪の周り

に刻まれていた。

なんて書いてあるのか、知りたかったらから僕は店の親父に聞いてみた。

そしたら親父は店の奥に引っ込むと、ひとりのよぼよぼのご老人を連れてきた。


そしてその老人に僕のことと僕がはめてる指輪のことを話したようで、

ご老人は僕の前まで来ると、聞き取れないような小声でこう言った。


《我は汝を呼び出す・・・偉大なる魔女ディアナの加護のもと、汝よ我が

身に従いたまえ、純粋な姿で我がもとへと現れよ》


っ書いてあるみたいだけど・・・やっぱり言葉が理解できないから僕には

分からない。

いったいなんのことやら・・・。

意味が分からない僕はしかたなく指輪だけ買って店を後にした。

それから一ヶ月のフランス勤務を終えてようやく日本に帰ってきた。


ところがそのことが、外人の女の子が訪ねてきたことと大いに関係していた。

そんなこと知らないもんだから、この子は誰だってことになる。


その子がさっきの言葉に付け加えた。


私は指輪の精で長年指輪の中で暮らしてたんだと・・・指輪の世界で

何百年ものんびり過ごしてら、誰かに呪文を唱えられて呼び出されたんだ

そうだ。

指輪の中で何百年?・・・どうみても小学生にしか見えないけど、何百年って

僕より気が遠くなるような歳上じゃん。


そうだ・・・僕はすっかり忘れてたフランスの骨董の店でのこと思い出した。

僕はすぐに机の中にしまっておいた指輪を持って来た。

あの時、呪文を唱えたのはご老人だけど、指輪をはめていたのは僕。

この子を呼び出したのは僕ってことになるのか?


で、アパルトマンで僕が寝てる間に指輪から出たらしい。

で、そのままどこかに逃げてしまおうって思ったらしいけど、呼び出した

人が指輪を持ってる限り、離れることはできず、その後僕が日本へ帰ったことを

知って慌ててここまで追いかけてきたんだと・・・。

ってことは彼女はフランス人なんだ。


僕「指輪」と長く離れてると、そのうち自分の存在自体消えちゃうんだそうだ。

だから、一緒にいなくちゃいけないらしい。

彼女は指輪を通して僕とフュージョンしてるんだ。


つづく。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る