チェンジング・プライマリー!!!

四月朔日燈里

《はじまりの星》

 生まれたときから、他人とは世界の色が異なっていた。

 青い空も青い海も、どれだけ美しいものでも全て黒と白でしか認識できない。


 どこまで行っても、皆とは別の世界に生きている。

 美しいはずの世界を美しく感じられない。

 愛しているはずなのに、愛していると言えない。

 そんな自分が嫌いだった。






 生まれたときから、耳から情報を取り入れることが苦手だった。

 何を言われても、何を命令されても、何故か身体は別の行動をしてしまう。


 聴いてみようって、何度も頑張った。


 でも、駄目だった。

 何度試してもうまくいかない。

 病気のせいにしてしまう。

 そんな自分が嫌いだった。






 生まれたときから、運が悪かった。

 世界に嫌われてるみたいに、全て奪われていく。

 母も、父も、自分の脚だって。


 立ち上がろうとした。前を向こうとした。


 でも、全く力が入らない。全く動かない。

 何もできずに崩れ落ちてしまう。

 そんな自分が嫌いだった。






 気紛れに開いた、とあるベンチャー企業のホームページ。

 切っ掛けは友人の紹介だったり、街の広告だったり、ネットの掲示板だったり、様々だった。



『理想のあなたになれる!』



 胡散臭い、ありふれたメッセージに、なんだか心が引き寄せられて。

 わけもわからない会社に連絡を取った。

 仮想世界バーチャルなんて、微塵も知らないくせに。


 そうして集まった、たった三人の子どもたち。

 年齢はばらばら。

 

 でも、心に宿すものは皆同じだった。


『変わりたい』


 ただ、それだけの想いを抱いていた。






 幕の外から歓声が聞こえる。

 暗闇に輝く八色のペンライト。

 少しズレた場所にある現実リアル

 会場と画面の前に観客がいる、皆が見ている。


 ここに至るまでに様々なことがあった。

 嬉しいことも、楽しいことも、辛いことも、悲しいことも。

 それ全てが積み重なって作り上がったのが今日の舞台ステージだ。



「見える」



 シアンの少年とも少女とも言える人物が呟く。



「聞こえる」



 マゼンタの少女が呟く。



「動ける」



 イエローの少年が呟く。


 互いの顔を見合って、笑い合って、手を繋ぎ合って、そして息を吸った。

 そして、閉ざされていた幕が上がっていく。


 彼ら彼女らの舞台が始まる。

 これから先は全て、三原色に染まった世界。

 止めるものは、もう何もない。



 ────『プライマリー!!!』



 心いっぱいに自分たちの名前を叫ぶ。

 事実と虚構の混ざりあったこの世界を、自分たちの色で染め上げるために。


 星を繋ぐ者たち、その原点たる三人は今果てしないほどに輝いている!

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