美少女魔王と人類最後の僕の日常(連載版)
もるすべ
KAC2024応募作
第1話 全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れには三分以内にやらなければならないことがあった
全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れには三分以内にやらなければならないことがあった。それは一人の少女を送り届けること、彼らの主人を。
「三分以内じゃ、急げ!」
群れの先頭、バッファローの背中で美少女が叫ぶ。
月白色の長い髪をなびかせ華奢な体で巨大なバッファローに跨がる姿は、まるで小さな女の子にすぎない。だがその真の正体は世界を滅ぼし尽くした、魔王イヴリス。
「おのれ、約定を破りおって! 許さん」
主人の怒りを体現したかのように荒ぶる、バッファロー型の魔獣たち。
魔王の配下に相応しい体重百トン超の魔獣が数万頭、廃墟の住居やビル…… 全てを破壊しながら突き進む。
「ダメ! もう三分たっちゃう」
恋しい男の好みに姿を変えている、魔王イヴリス。
彼女の声に焦りが浮かぶと、バッファローの群れが猛然とラストスパートをかける。いま、東京スカイツリーの残骸を蹴散らしてトドメを刺した。
「待ってよ~ お兄ちゃ~ん」
魔王イヴリスは、可愛らしい羊角を振りながら悲痛な叫びを上げた。
主人に忠実なバッファローたちは、魔王が戯れに兄と呼ぶ少年を轢き殺さんばかりに猛り狂い、全てを破壊しながら突き進む。
「いただきます」
三分たったところで、僕がフタを開けようとすると。
ドドドドドッ と、突然の地鳴りに続いて ブワッ と、土煙に襲われた。「なんだ、なんだ」と思ってるうちに煙がはれて、女の子がバッファローの上から飛び降りて言う。
「最後の一個、一緒に食べるって約束したじゃない!」
僕をお兄ちゃんと呼ぶ変わった子、人類滅亡したらしいから二人ぼっち。
女の子は僕の横に座って、花のような匂いの体を擦りつけて甘えてくる。僕が謝りつつフタ開けて割り箸で麺をすくってあげると、嬉しそうに「ちゅるん」と啜り込んだ。
「う~ん! やっぱ、カップラーメンうまいのじゃ」
美少女の笑顔につられて、僕も麺を啜る。
巨大バッファローの群れを見上げて、「明日から何食べよう」と呟いた。
※ 中書きという蛇足な解説
この第1話は『KAC2024 ~カクヨム・アニバーサリー・チャンピオンシップ 2024~』への参加作品として投稿したものを、連載にあたり再録したものです。
① 第一回のお題
「書き出しが『○○には三分以内にやらなければならないことがあった』」
② アンバサダーからの挑戦状(自由挑戦お題)
「全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れ」
③ ぴったりで賞
「開催期間中に1度でも800字ぴったりの作品で参加」
以上、三つの課題を同時に満たす、無謀な三つ取り作品となっております。
なおこのコンテスト、お題発表から4~5日以内に作品投稿という、初参加の私にはハードなスケジュール。
まず考えたのは三分以内を三分間と考えるか、残り時間と捉えるか。タイムリミットものは魅力だけど短い文章で説明できるのか不安、読む方にも普遍的に察してもらいやすいカップラーメンならオチもつけやすそう。ということでカップラーメンを採用。
そしてバッファローの群れである理由、カップラーメンとどう絡めるか。独り占めされないよう三分以内に駆けつけるヒロイン、バッファローに乗って? カウガール? 野生児か?
などなど考えをめぐらせる中、壮大なモノと小っぽけでくだらないモノを組み合わせる原則に基づいて、ヒロインを世界を滅ぼした魔王にしてみたのですが……
いかがでしょう?
私としては、書き上げてみて一応まとまってはいるけど、小説としての面白みが足りてないように思いました。締め切りがあるので、投稿はしましたけど。
ちなみにヒロインの名前イヴリスは、某宗教における魔王イブリースからきております。
このような駄文にお付き合いくださいまして、本当にありがとうございました。
※※ この小説は、法律・法令・社会倫理に反する行為を容認・推奨するものではありません。なお、著者の許可なく全部または一部の複製、転載、商業利用することを禁止します。
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