怪奇探偵部〜宇月薫と東雲雀の活動記録〜

冬爾

プロローグ

 真っ赤な鳥居が自分を見ている。

 

 自分は何故か、穏やかな波が打ち寄せる砂浜に立っていて、その鳥居を横から見ている。波は薄氷色から桜色に染まっていた。

 その小さな鳥居の向こう側には、萌黄色の草が一面に生えていて、そよそよと風に吹かれている。


 自分は何をするでも無く、只々そこに居るだけ。




「――みたいな夢を最近見るんだよね。」

「…それ、やばくない?」

 昼下がりの教室。殆どの生徒が教室を出て、残っているのは自分達と物静かなグループだけだった。ふわりと風が頬を撫でていく。

 

「なんか、ほら。呼ばれてる的な?やばいって!」

「ははっ。オカルト好きかよ。」

 顔を青くして慌てているのはクラスメイトの東雲しののめすずめだ。

 顔の半分以上が長い前髪に隠れていて、常に猫背。趣味はアニメ鑑賞と推し活。あと漫画を描くこと。高校に入ってから出来た友達で、俺達はかなり気が合う。


「取り敢えず今日、近所の神社に行ってこようと思って。」

「馬鹿!やめとけ!!何かあったらどうすんだよ!」

「雀がでかい声出すの珍しいな〜。」

「今日ばかりはそこじゃねぇんだよ!!」

 とうとう机から身を乗り出して雀が叫んだ。

「そういうのは信頼できるそっち系の知り合いとかに頼め!!居るだろ!お前なら!」

「居ないんだな〜、それが。」

 雀はがくっと肩を落として、この世の終わりのような顔をした。

「終わりだ…。お前は何かに取り憑かれるし、俺は人生唯一の友を失ってお先真っ暗だ……。」

 そう言って机に突っ伏した。

「大丈夫だって〜。何なら神社から帰ったら電話するし。」

「言ったな!?絶対だぞ!!俺はビビり過ぎて付いて行けんが死ぬなよ!!」

「死なないって〜。」

 

 雀が怖すぎてテンションぶっ壊れてる。いつもは生ける屍みたいな奴なのに。オカルト系に弱いんだな、雀は。

 雀には悪いが、俺は友達の新たな一面を発見してかなりワクワクしている。電話する時の反応が楽しみだ。


 

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