第15話 「恋愛ごっこ」はもうやめにして僕と一緒に住んでくれないか?

僕と誠は洗面と見繕いをして食堂へ降りて行く。少し遅れて紗恵親子が降りてきた。誠と美咲ちゃんは遊び始めている。紗恵はママさんの配膳を手伝っている。


準備ができると4人で朝食を食べ始める。にぎやかな朝食になった。落ち着かないがこれも楽しい。紗恵に朝食後に岬まで皆で散歩に行こうと誘った。


4人でゆっくり歩いていく。僕は美幸ちゃんと手を繋いでいる。紗恵は誠と手を繋いでいる。もう日は昇っている。今日は見晴らしがいい。晴れて遠くまで見える。僕は昨日からずっと考えていたことをここで紗恵に話したいと思っている。


「紗恵さん『恋愛ごっこ』はもうやめて僕と一緒に住んでくれないか? そして本当の恋愛をしてみないか?」


紗恵は僕の顔をじっと見つめた。


「一緒に住むといっても、そんなに堅苦しく考えないで、紗恵さんが僕の家に間借りして共同生活をするという感じで良いと思うんだ。それで齟齬があったら、間借りを解消して引っ越してくれれば良いと思っています。それに共同生活するとお互いに助け合えるし、お姉さん夫妻に迷惑をかけることも少なくなると思う。考えてみてくれないか?」


「共同生活の提案ありがとうございます。美幸にも父親のような存在が必要ですし、私も紘一さんと一緒にいると安心です。それでは間借りさせていただくということで喜んでお受けさせいただきます。ただ、お家賃は払わせていだたきます」


「よかった。受け入れてもらえて。それじゃあ、来週の土日に引っ越しの打ち合わせに家に来ませんか。部屋割りや共同生活のことを事前に相談しておいた方が良いでしょう」


「分かりました。住んでから齟齬のないように事前に話し合っておくことは大切だと思います」


「それで今日は僕の車で4人でドライブしませんか? 半島をゆっくりまわって水族館に行くのはどうですか? そこで昼食を食べてここへ戻ってくると良いと思います」


「子供たちが喜びそうですね。そうしましょう」


4人でのドライブと水族館めぐりは楽しかった。この2家族での旅行は良い思い出になった。


◆ ◆ ◆

2週間後の土曜日の午後に紗恵親子は家に引っ越しの相談に来た。美幸ちゃんは前にも来たことがあるので慣れている。もう誠とおもちゃで遊んでいる。夕食は近くのファミレスに行くことになっている。


「紗恵さん親子の部屋は1階の玄関横の和室にしたらと考えています。ただし、出入りには子供たちのために後ろの玄関を使った方がよいと思っています」


「どうしてですか?」


「表通りは自動車が通るので子供の跳び出し防止の為です」


「その方が良いですね」


「その和室ですが床の間をクローゼットに直します。縁側もありますので広く使えると思います」


「直さなくても広いと思いますが」


「家賃もいただくので、住みやすいように直します」


「紘一さんたちはどこに?」


「前に寝室にした奥の和室をこれまでどおり僕たちの部屋にします。縁側は僕の書斎にします。夜は4人の寝室にしても良いと思っています」


「このあいだのようにですか?」


「僕たち親子と紗恵さんたち親子が別々の部屋で寝るのも寂しいですし、子供たちだけを別の部屋で寝させるわけにもいきませんから。それと僕たち二人のための考えがあります。2階へ行きましょう」


子供たちに二人で2階を見に行くと伝えて階段を上がった。2階に上がると僕は紗恵を抱き締めた。そして二人は気持ちが治まるまで抱き合ってキスを交わした。


「共同生活になるとこうして二人になれる時間と場所が必要だと思って、2階の真ん中の部屋にはいつも布団を敷いておいて子供たちのいないときにはいつでも愛し合えるように僕たちだけの部屋にしたらと考えています」


「そうですね。静かな落ち着いた部屋で愛し合いたいですね」


「気に入って貰えてよかった。そうしよう。階段を上がったところの部屋はサンルームもついていますので子供の遊び部屋にしたらどうかと思っています。それから2階の前の部屋は自由に使ってくれたらいいです」


「来客用にあけておいても良いかと思いますが」


「そうしよう」


それから二人はリビングに降りて、紗恵が持ってくる家具や部屋代、生活費について相談した。紗恵は僕に甘えたくないと言うので、食費、光熱水費、洗剤などの生活に必要な物品費は折半にして、衣料費、医療費などそのほかのものは家族単位で支払うことにした。ただし、食費などの管理は紗恵がすることで了解してもらった。


また、洗濯機や冷蔵庫などの家電で2台になるものは、古い方を廃棄することにした。自動車は2台保有、一台は僕の普通車、もう一台は紗恵の軽自動車。表札は中田と山本の2枚になる。紗恵は住所変更のみで、所帯を別にした共同生活を始めることになった。

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