ときどき詩集

第19話 駅前（ちょっと長いです。すみません）

どこかで花になりたいって？

花屋で花になりたいって

丘に行って、花になりたいって

身の程知らず！

石みたいな自分を

鏡で見なさい

歯を磨きなさい

歯の裏もあるのだから

ひとり暮らししなさい

経験なのだから

トランペットを吹きなさい

背筋（はいきん）が鍛えられるのだから（腹筋（ふっきん）でなく）

外国語を学びなさい

目に頼りなさんな

世界は広いのだから

明日には夜が来るのだから

夜の次は朝で

朝の次は昼

学校行ったでしょ？

大卒でしょ？

どうだったかな

卒業証書は校長先生に返却したままです——

郵送してもらおうかな

簡易書留ってなに？

分からないことが多すぎる

でも

大人の振りして

難しい顔して

喫茶店の端っこに陣取ってる

男

漢

おじいさん

ノート型パソコン

パソコン型ノート

えんぴつ型えんぴつ

消しゴム型自己防衛術

花屋の娘さんが話しかけてくることはなく、

花屋の娘さんに悪い虫が付いても何もできず、

ただ、

同じ時間に

同じ顔して

駅前を行進する

「旦那様、どちらへ？」

「いやあ、ちょいとばかり西へ」

人々はオフィス街へ消えていく

わたしは草むらに消えていく

『じゃんけんねこ』といい勝負をしに