第15話 あげる人

「きみ、だるまちゃんに似てるって言われない?」

「ぼく? 顔が?」

「そう、きみ。そしたら、わたしはてんぐちゃんね。

なにか欲しいものある?」

「……」

桜咲く駐輪場で、彼女は僕の前に現れた。

僕はもう人を傷つけるのが嫌になっていたので、何も答えずにあげることにした。

「……いらない。わたしもあげるために生きてるの」

「ごめん」

彼女は僕の前から去った。

それから、彼女とは会っていない。

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