第12話
スチュワートに操縦を指導して三日が経った。
一次はどうなるかと思ったが、彼もいろいろと考えてくれているようだ。実機での訓練をしない時も、模擬コックピットを作り、それでイメージトレーニングをしているらしい。
その
「次は武器の使い方だな――」
基本的な武器はビームライフル――ということになるのだが……
「ビームライフルとはなんだ?」
そういうことになるよね……
そもそもこの世界にない武器をどう説明すればイイのか悩んでしまう。
「それじゃ、ボクが手本をやってみるので、それを参考にしてもらえるかな?」
スチュワートは「わかった」と応えるので、一度、座席を交代する。
「まず、ターゲットを表示させる。この赤いマーキングのことです。次に、攻撃する目標を目でしっかり見る。すると、ターゲットがその位置に移動するから――」
アームにあるボタンを押す。
ビューン!
最初にこの機体で戦った時と同じで、ライフルを手にしているわけではない。なのに、ちゃんとビームが照射されるのだから、なかなか不思議な感覚だ。
「なるほど、ファイアボールみたいなものだな」
スチュワートはそう感想を言う。
(ファイアボール……か)
タケトの時代でも異世界ファンタジーは人気の物語だった。タケトもそういったテレビ番組を見て育ってきた。やはり、魔法が存在し、ファイアボールという火属性魔法は数多くの物語で登場している。
あくまでも、空想上のことだと思っていたのだが――
(本当に存在していたなんて……)
驚き――というより、呆れてしまう。
タケトは気を取り直して――
「まあ、そんな感じ……なのかな?」
近いようで、違うような気もするが――
「わかった。ならやってみよう」
さっそく、席を代われと言ってくる。
「それじゃ、さっそく」
そう言って、目標となる山に照準を合わせた。
「赤き炎よ、我の手を離れ、相手を焼き尽くせ!」
「――えっ?」
いきなり、スチュワートがそんなことを言いだすので、面食らう。
しかし、手から何も出ない。
「うーん、どうも感触が掴めないな……」
「ちょ、ちょっと待って! 今のは何?」
スチュワートは「何、とはなんだ?」と理解できていない様子だ。
「いや、ヘンなことを言ったでしょ? 赤き炎……なんとかって?」
「ああ、ファイアボールの呪文か?」
「――えっ?」
いや、ファンタジーじゃないんだけど……と思ったのだが――ここは魔法の世界。いまさらかと思い直す。
(だからと言って、アーマードフレームが魔法を使えるわけ……)
「どうも、気分が乗らないんだよな」
スチュワートが言う。
(気分って……)タケトは苦笑いなる。
すると、彼は近くに転がっていた、倒木をマニュピュレータで拾い上げた。
その倒木を握ったまま、なんどか手を振ってみる。
「こんなものかな? よし、もう一度だ」
「あのう、どうして倒木を持っているの?」
「杖の代わりだ」
「――えっ?」
再び彼は同じ呪文を唱えた。すると――
ボゥ!
「えっ?」
倒木の先から、炎の玉が現れたと思ったら、それがまっすく飛んでいった!
「ふむ。理解した」
「――はあ」
どうやら、巨大人型兵器でさえ、ここでは異世界ファンタジーになってしまうらしい。
タケトの想定とはまったく違う結果になったが、とりあえず攻撃手段を習得できたところで、マナ供給も兼ねた休憩とした。
「タケト様、いかがでしょう?」
グームにマナの供給を終えたところで、ナタリアが話しかけてくる。
「うん。スチュワートさん、なかなかのみ込みが早いよ」
タケトがそういうと、彼女は複雑な表情で、「そうですか……」と声にした。
「いずれにせよ。われわれにもゴーレムが扱えることはわかった。これなら、各地の『巨神』を起動させて、戦力にできるな」
スチュワートがそう考えを述べる――えっ? 他にも『巨神』はあるの?
「はい、この大陸には『巨神』と呼ばれる、人型の岩山がいくつも点在しています」
ナタリアが知っているだけでも十カ所程度あるそうだ。
「そんなに――?」
それらにすべてグームのような
「たしかに、かなりの戦力になるかも……」
タケトはそうつぶやくのだった。
その時――
ピーッ! ピーッ! ピーッ!
丘の上にある
「何?」
ナタリアとスチュワートの表情が険しくなる。
「敵襲です!」
「――えっ?」
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