【KAC2024】エルフについて【連載版】

長月 鳥

第1話 長生きの秘訣

 エルフには三分以内にやらなければならないことがあった。


 我らエルフは長寿で有名だ。

 一般的に人間の十倍と言われている。

 しかし、所詮は人間の歴史、情報力。

 実際にはその数百倍の年月を過ごせる。

 

 では本題に入ろう。

 なぜ我らはそれほどまでに長寿なのか。

 理由は簡単だ。


 “三分以内に風呂を済ませること”


 ただそれだけ。


 風呂に浸かるという行為については、物理的な作用、温熱、静水圧、浮力が働き、ゆっくりと温かい湯船に入って体を温めることで、血管が広がり、血液が体内を巡りやすくさせ、新陳代謝が活発となり、副交感神経が良い状態になり、体の修復能力、リラックス効果が高まる。

 筋肉や関節の緊張状態も緩和させ、神経の過敏性も抑えるとされている。

 されているが、だが所詮は人間の浅知恵。

 体を一時的に労ったからといって寿命が伸びる訳がないのだ……長寿の私が言うのだから疑いようの無い事実だろう。


 実際、風呂好きなエルフの知り合いは私より若くして死んだ。齢2390歳だったな、惜しい友を亡くしたよ……。

 あいつも三分以内に風呂を済ませておけば、もっと長生き出来たろうに。


 何? 理由?

 なぜ、風呂を三分以内で済ませることで長生きできるかって?


 そんなことは簡単だろう。


 湯舟は菌だらけだからな、体を綺麗にしているつもりでも、実際には様々な菌に蝕まれているのだ。

 長生き出来るわけがない。そうだろ?


 それに、体を洗うことで、人体の本来の機能、いわゆる自己再生能力の発達を遅らせているのだよ。

 だからゴシゴシと時間をかけて体を洗ったら、洗っただけ寿命を縮めてしまうのだ。


 は? 眉唾物だと?


 じゃあ何か? 君は私よりも長く風呂に入って、私よりも長生きできるのか?

 出来ないだろう。

 出来るはずがない。


 風呂は三分以内。


 頭に一分。

 体に一分。


 そして、耳に一分だ。


 ああ、頭と体は一分以内に済ませても構わないぞ。

 残りの時間を全て耳に使うのだ。


 そうすれば君もきっと長生き出来るだろうさ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る