第17話 親友

甘い物が好きなカイのために、アップルパイをはじめ色々なスイーツを作ってきた。

最近のお気に入りはプリンだ。

お風呂上りにゆりっちのプリンを食べないと死ぬというので、なくなりそうなのを見計らって届けに行く。

隣りのベランダで物音がしたので、カイだと思って声を掛けた。

「まだ、プリンあるの?」

「はじめまして、堂島卓也ドウジマタクヤと言います。カイはコンビニに行ってるんで、冷蔵庫みてきましょうか」

ちょっと大人びた印象がする好青年である。

たばこを吸いにベランダに出てきたようだ。

手には携帯の灰皿を持っている。

「あっ、ごめんなさい。あとでLINEするので大丈夫です」

「了解です」

会ったのは初めてだが、名前だけは聞いている。

高校、大学が一緒のカイの大親友だ。

いつか紹介するよと言っていたが、なかなか機会に恵まれなかった。

人当たりが良さそうで安心した。しばらくするとLINEが来た。

 ”こっちに来て、タクヤ紹介するよ”

プリン持参でお邪魔した。

「改めて紹介するよ。親友の堂島卓也、こちらが宮下百合さん」

「挨拶なら、さっきしましたよねぇ~」

挨拶もそこそこに、持っていったプリンを食べながら目配せをした。

「いただきま~す、ヤバイ!売ってるのより美味い!」

「カイの胃袋、鷲掴みだぁ」と絶賛中だ。

印象とは打って変わってお調子者である。

まっ、人見知り発動中の私からすれば、その方が気が楽なのは確かだ。

すでに、2個目のプリンも食べ終わりそうな勢いである。

「おまえ、それでやめとけよ、おれのがなくなる」

「カイはいつだって食べられるじゃん、よこせ」

プリン争奪戦を繰り広げる二人に、つい大きな声で言ってしまった。

「ダメです、3個はお腹を壊します」

「タクヤさんにはうちの冷蔵庫のを持って帰ってもらいます、明日にでも食べてください」

なんか、兄弟喧嘩を止めるお母さんのようになってしまった。

二人は顔を見合わせて笑い転げていた。

「百合さん素敵です、百合さん最高です」

「だろう、ゆりっちは世界一なんだ」

いやいや、それは大袈裟だろう、でもカイの中での世界一なら認めてあげるよ。

それだけ、カイに愛されてる実感があるもの。


高校時代の写真を見せ合いながら、ふざけている時だった。

カイのスマホに元カノの写真を見つけてタクヤが呟いた。

「マリリンが言ってた通り、タイプ真逆だわ。カイ、なんか覚醒したんだわ」

「なんも変わんねぇよ。おれはおれだから」

「カイって、顔重視じゃないのは知ってるけど」

「あっ、百合さんがって話じゃなくて」

慌てなくてもわかってるよ。もうどんな言葉にも傷つかないから大丈夫。

「ドスケベなのに、そういう話しなくなって」

「仕送りで十分やっていけるのに、百合さんのプレゼントは自分でってバイト始めるし」

知らなかったよ、何でもいいよなんて言ってごめん。

「だから初めてのホンキ、成就させてやりてぇーって思ったんすよ、今日、百合さんに会って余計にそう思った」

「こいつ、メチャいい奴なんで、百合さんが幸せにしてやってください」

いい友達に恵まれて、青春を謳歌して、君の周りは光がいっぱい。

その太陽のような恩恵を享受して、私は月になる。

ひとりの夜が寂しくないように、そっと照らす月でいたい。

素敵な友情に<レベル90>

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