第8話 興味
「うちの父をどう見えましたか?」
真野玲子の言葉がずっと引っ掛かっている。
どんな答えを期待していたのだろうか?
真野の態度からすると良い印象の答えは望んではなさそうだった。
じゃああの父親の態度は余所行きの態度だったのか。家では劣悪で家族に対してひどい態度をとっているのだろうか。
三者面談を終えた日からずっとこの事ばかりに頭を巡らせる。考えても無駄だと分かっていてもすぐに思い浮かんでしまう。
あの日以降、真野はこちらに話しかけてくる事はなかった。淡々と勉強し、静かに生活している。他の人間も近寄りがたいのかもしれない。7月に入っても友達らしき人間はいないように見えた。
・・・何かを抱えているように見える。それが家庭の事なのか、それとも自身の事なのか、はっきりとは分からないが、「何か」あるのかもしれない。
真野を目で追っているのが自分でも分かる。
・・・。
不思議な雰囲気を持つ少女。綺麗な顔立ちをしているが他と比べて格段にいいと言う訳ではない。けれど目についてしまう。過去の背景があるからなのだろうか、それとも単純に真野の存在が気になってしまうのか、それはよく分からなかった。
「先生、ちょっといいですか?」
そんな時、放課後に真野から話しかけてきた。
その顔は無表情で何を考えているか読めない顔。話しかけられたときはかなり緊張した。ただの一生徒に。
「どうした?」
「・・・相談があります。」
「何?」
「ここじゃちょっと・・・。」
「じゃあ進路指導室に行っててくれ。職員室に戻ってからそこに向かうから。」
「分かりました。」
そういって真野は進路指導室がある部屋に向かっていった。
「・・・。」
何を相談してくるのだろうか?やはり父親の事だろうか?それとも別の事か?
「・・・。」
ただ別の事が何かは全く想像がつかなかった。学校生活に何の問題もなさそうに見える。勉強か?いや、それもなさそうに見える。
「・・・。」
考えても仕方がない。とりあえず職員室に戻った。
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