第17話:まるで引越しみたいだ。

パセリさんが、元彼にLINEを送ってセシルのことを頼んでくれたらしい。


《社長?、宏之?《ひろゆき》・・・お久しぶり・・・パセリです》


《パセリ?・・・君か?・・久しぶり・・・どうした元気してたのか?》


《元気って言うか・・・宏之、もう私この世にはいないから・・・》


《いないってどういうこと?》


《死んじゃってるの私・・・幽霊のまま、ある人のマンションに居座

ってるところ》


《知らなかった・・・亡くなったのか?・・・そうなんだ》

《それって、俺のせいか?・・・》


《私が勝手にしたことだから・・・宏之は悪くないよ・・・だから

恨んでないからね・・・でも、こうしてまた話ができるなんて思わなかった》


《でも、もう、パセリには会えないんだな・・・》


《そうだね、話せるのはこうしてLINEだけだよ》


《そうか・・・まあLINEでも話せたら嬉しいよ・・・》

《で?用事があったから、俺にLINE送ってきたんだろ? 》


《そう、実はお願いしたいことがあって・・・》


《君のお願いだったら、なんでも聞くよ》


《ありがとう》

《実はね・・・私が間借りしてるマンションの住人さんと一緒にいる

ガイノイドさんが、調子が悪くなって、どこか故障してるかもしれないの?》

《それで宏之のところで見てあげてくれないかなって思って》


《いいよ、お安い御用だよ》

《そのガイノイド、こっちに連れてこれる?》


《ちょっと待ってね》


パセリさんは、今度は未来のLINEに繋いだ。


《彼、見てくれるって・・・でもこっちまで連れて来れるかって聞いてる》


《さっきよりセシルの状況が悪くなってる》

《もう目も開いてないよ・・・たぶん自力じゃ動けないと思う》


《セシルを抱いてなんかエレベータも乗れないよ》


ってことで、パセリさんのコネで、パセリさんの元彼が、わざわざ

レッカーを出してくれることになった。


《レ・レッカーだって?》


めっちゃ大げさなことになった。


まずはマンションの下の道路での作業だから警察へ行って許可を取らない

といけなくなったし、セシルをなんとかベランダまで移動しきゃいけないし。

だからセシルを毛布に乗せて、ベランダまで毛布ごと、汗だくで引っ張って

移動した。


で、レッカーのブームの先についてる箱の中にセシルを入れてベランダから

下に降ろす。

まるで引越ししてるみたいだった。


そのままセシルを、数人でもう一台のトラックに乗せてパセリさんの

元彼の会社に・・・。

俺とパセリさんもセシルと一緒にトラックに乗った。

パセリさんは誰にも見えないから、俺だけが乗ってるように見えただろう。


それだけで小一時間かかった。


結局、セシルを見てもらったら、一番大事な部分、パーペチャルジェネレーター

って永久電池にエラーが出てるってことが分かった。

部品交換ってことになったけど、幸いにも新品のジェネレーターの在庫が

あるっていうんで、助かった。


セシルが作られた頃のジェネレーターは定期的に5年に一度は交換が必要なんだ

そうだ。

まあ、なんでもいつかは寿命ってもんが来るからな。


今のジェネレーターはもっと優秀らしい。

向こう50年は交換不要とのことだった。


ってことでセシルは最新のジェネレーターが搭載されることになった。


あと他の部分も全面的に、見直してくれたおかげでセシルは元気に、

元どおりになった。


いつもの依存体質で寂しがり屋で構って系でメンヘラちっくなセシルに

復活した。

パセリさんとパセリさんの元彼には感謝しかない。


しかも料金はいらないってことだった、元彼は、パセリさんとLINEで

話せるようにしてくれたお礼だって・・・。


で、これがきかっけで、パセリさんは俺のマンションから元彼の家に

引っ越していった。


幽霊だから家族の人には見えないからね。

これでパセリさんも大好きだった、彼と一緒に暮らせるって喜んだ。

案外幽霊になってよかったこともあるんだね。


俺にとってもセシルにとっても、パセリさんにとってもベストな結果になった。


つづく。

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