第2話

家に帰ると父親が居た。

僕は兄と弟と目配せして、3人同時に肩を落とした。白髪抜きにうつ伏せの父親の上を歩くマッサージ。50円か100円。嬉しくなかった。ただ父親の脂っ気が汚かった。

飯が出来た。同時に団地のスーパーに走らされる。まぐろとタコの刺し身。ツケで受け取る。

その頃は気付かなかったけど、自分ではツケが気まずかったんだろう。それは少し楽しみだった。父親が居ない時のメインディッシュはマヨネーズをかけたレタスか味の素振った卵焼きだったから。牛肉と野菜の炒めもの「牛肉って牛乳の味するね!」刺し身一切れずつ、飯が何杯でも食えた。

父親と風呂に入る。父親のちんぽは仮性包茎だが僕より数倍もでかい。僕もあんなふうになるんだろうか?風呂を上がると始まった。

3人兄弟で僕一人出来が良い。兄貴と弟は馬鹿だった。いつか必ず気に触る。酔った親父の気に触る。

合図は「このキコが!」だった。どうやら「貴公」らしいんだけど、父親がこれを言い出したらダメだった。ハエ叩きをぶんぶん振って、兄と弟の太ももを打った。

「あっ!いって!」たまらず上がる声にミミズ腫れの地獄絵図。ジャイアンツが負けた日は特に酷かった。

だからではなかったかも知れないけど、巨人ファンだった。

きっとどっかで父親を好きだった、いや、好きで居たかったんだと思う。

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