夜行幽霊

人気ひとけの少ない

夜の新快速

窓辺に座る

君とふたり


「楽しかったね」

寝ぼけまなこで君が言う

想い出に酔いしれて

頷いてただ外を眺める


窓ガラスに反射して

映った君のあくび

半分透けたような

幽霊みたい


外の景色に

横たわって眠る

幽霊の君は

僕の思考をも遮る


宵闇に気を沈めたいのに

夢に落ちた君が

気になって

気になって


カメラじゃ切り取れない

の前の幽霊に

心がきゅっと

締められて


世界じゅうの時計が

止まらないかな

ねえ

このままで居させて


そんな願いも

無表情のまま振り切る

足の早い電車

もうすぐ終点


目を覚ました幽霊

魂が身体に戻った

「どうしたの」

また疼く心臓


見惚みとれてた、なんて

言えないから

なんでもないよ、って

また目を逸らした


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