みそ汁(三)

 私は、おじちゃんの声が聞き取りにくくなった。野田先生は、おじちゃんと会話ができなくなった。

「おじちゃんが、先生に、もし欲しければ、アイコスイルマをあげるって」

 私が通訳すると、野田先生はためらったあと、「タバコに興味があったんです。大切に使わせてもらいます」と、長机を支えている、右側のシェルフに置かれていた、アイコスを手に取り、おじちゃんに一度見せてから、鞄にしまった。

 それに対して、おじちゃんが、タバコスティックは、FRESH PURPLEがおすすめだよ、ああ、私も吸いたいなあ、タバコと、ほそぼそとした声で言った。

 イチカはタバコを吸うなよ、金のむだだからなと、おじちゃんが口にしたので、「吸わないわよ、タバコなんか」と私は答えた。

 それから、おじちゃんは野田先生に、中学生のうちは、イチカに変なことをしちゃいけないよと言った。私は恥ずかしかったので、それは先生には伝えなかった。

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