世活
双葉紫明
第1話
生活、とは珍妙な言葉である。
広辞苑に拠れば、「生存して活動すること、生きながらえること」「世の中で暮らしていくこと」とあり、編者の困惑が見てとれる。
生存、には活動が含まれるし、活動は生存が前提だから、苦し紛れも甚だしい。
生きながらえるとはいい線行ってるけれど、ならばこれだけには出来ぬ歯痒さを覚えたか。
「世の中で暮らしていくこと」については言語道断であり、「生活」を定義する為にいくつもの「生活」を使っている。
暮らしとは生活を平易に著したものであり、世の中とは生活の集合体だからだ。
自分は、と考える。
生きながらえては居る しかし、
世の中とは?暮らしとは?理解が追いついていない。
僕なりに、生きながらえるいわゆる「生活」と、世の中で暮らしていくいわゆる「生活」とは、両極に在るような気さえする。
善蔵も太宰も、生活について書いた。
特に太宰は、「生活」という意味不明な呪文みたいな言葉自体を、彼らしくなく、すんなり受け入れていた様に思う。
「人間」とか「世間」にはあんなに執着的な抵抗を見せたのに。
それが彼を殺した。
だから、見栄っ張りが治らなかった。
あんな優れた作家を殺した「生活」を、僕は拒絶する。
ならば、どう「セイカツ」していくのか?
答えは明白、残りのひとつ「世の中で暮らしていく」しかない。
これを僕は、「世活」と名付けたい。
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