残念賞

双葉紫明

第1話

あのひと言ったの。

「きみはハズレっくじに大当たりしたんだ。僕ら、なんにもないわけじゃない。けれど、僕と居たらいつだって残念賞しか貰えないんだよ。」

違うんだ。

そうじゃない。 

そうじゃなくする為に、こうしたのに。

あのひと傷つけちゃった。

それでもわたし、あのひとが良いんだ。

あのひとの詩的な文体。

そこにわたしのきれいなとこ、汚れちゃったとこ。

どっちも波打つ。

ゲンジツとは少しずつ違うけど、わたしはそのなかの「わたし」になっていく。

毎日顔合わせたら喧嘩になっちゃう。

わたしの忙しさ。

あのひとの忙しさ。

お互いに押し売る本音。

それは甘えなんだよ。

だから今は少し離れて、どしても会いたくて、会いたくて、会いたくて、会いたくて。

それを忙しさで紛らわせて。

おさとうの海の中、溺れる者の藁。

それがあのひととわたし。

そうなんだ。

あのひと傷付いて、弱ってる。

助けたい。

ずっと無理して、無茶してるから。

心配だよ。

だけど、わたしだってそんなに強くはないんだ。

あのひととの穏やかな未来。

そんな縋る藁がぷつんと切れちゃったら、どうなっちゃうんだろう?

何度でも言うわ。

わからずやさんがわかるまで。

わたしには、あのひとしか居ない、

どんなイケメンだって嫌だ。

あのひとのきれいな心が、いつか純粋に美しい物語を紡ぎ出す。

その主人公はわたし。

誰にも譲らない。

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