メガネザルのチィチィ
仲津麻子
第1話チィチィ
気がついたらチィチィのお家がなくなっていました。
チィチィは暖かくて湿った森の木の上で、おかあさんとふたりで暮らしていました。
ある日小枝のベッドで寝ていると、突然、バリバリバリと聞いたいたこともないような音がして、森の木々が大きく揺れました。
「はやく逃げて」
おかあさんがさけんだので、チィチィはピョンピョンと他の木に飛びうつって逃げました。
しばらく草むらにかくれていて、まわりが静かになった頃にもどってみると、まわりにあった木といっしょに、お家が消えていました。
後にはたくさんの切り株が残っていて、ガランとひろい地面があるだけでした。
「お家がなくなっちゃった。お母さんもいない」
チィチィはこわくなりました。
メガネザルは、体の重さが約百グラム。バナナの実一本分もないくらいの小さな猿です。顔のほとんどが目というくらい、メガネのような大きくて丸い目を持っています。
いつも夜に動きまわって、木の枝から枝へ飛び移りながら、小さな虫を捕まえて食べています。
お家の木がなくなってしまって、チィチィはどうしたらいいのかわかりませんでした。
メガネザルは木の上で生活しています。体をかくす場所のないまま、いつまでもここにいては危険です。
チィチィは首をぐるっとまわして、まわりを見まわしました。
大きな目にはおひさまの光がまぶしいのです。
夜のようにハッキリはみえませんでしたが、遠くの方に木が生えているような場所がぼんやりと見えました。
チィチィは、お母さんが心配でしたが、森のある場所まで行ってみることにしました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます