赤い傘

「結構、雨降ってる…」って嫌になりながらも傘を差して駅まで歩いて行ったんです。高架下に開いたままの新品みたいな子供用の赤い傘があって「壊れて捨てたのかな…」と思って見たんですけど傘の骨が折れてる様子もなくて少しデザインが古い気がする…と思いながらも通り過ぎて仕事に行って。


それで仕事が終わって、駅から歩いて帰っていたら今朝の赤い傘が見えてきて、でも今朝と様子が違ってボロボロの子供用の赤い傘なんです。今朝、見間違えたのかな?新品みたいに綺麗だったはずなのに…って思いながらその傘の隣を通ろうとした時に「あ!これ〇〇くんの傘じゃん」って思い出したんです。小学生の時に登校班で一緒だった子の傘なんです。…でも私が今住んでるところは地元から遠く離れているし、何より〇〇くんは途中からグレてしまって現在どうしてるのかも知らないんです。ちょっと気味悪くなって小走りで家に帰って。


少ししてから「〇〇くん、火事で亡くなったらしいよ…。煙草の不始末が原因らしい…」と聞いて、傘と関連がないけど、おそらくあの日が亡くなった日なんだろうな…って思ってて…。傘が落ちていた次の日の朝も高架下を通ったんですけど赤い傘はありませんでした…という話

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