創作合宿をしたときの話
創作こじらせ期2.0の頃のお話でございます(今は3.0) 。
職場でうっかり
「ケント紙かぁ……漫画描いたりしますよね」
と口を滑らせて、先輩と奇跡の趣味仲間になったところから、この話は始まるのである。なんでケント紙の話になったのかは、まぁ置いといて。
すっかり意気投合した我々は、月に一度、土曜の夜に(土曜出勤だったので)、パスタを食した後に創作に興じるという集会をしていた。なぜパスタなのかというと、お互い一人暮らしだったので、実家から謎に送られてくるパスタソースを消費するためである。なぜならパスタソースは大体「二人前」で、一度開封したら食べきらなければいけないからだ。何故に親は、一人暮らしなのに2人前使い切り食品を送ってくるのか。それはさておき、とにかくこれは扱いにくい食材消費と、創作にどっぷり興じるという素敵な集会だったのだ。
いつも結構遅くまでサービス残業(ブラック)するのだが、その日だけは驚異的な早さで帰宅。それから各自の家で風呂を浴び、お泊まり道具とパソコン(重要)を持って相手の家へ行く。家は交互に訪れていた。
集まればまずはパスタ消費。もちろんデザートも忘れていない。それが終われば深夜近くまでめくるめく創作遊戯である。
お絵かき
アニメ鑑賞
短編書きあい
退職間際には某ツールでゲーム(入職から退職までの怨みがこもったストーリー)まで作っていた暴走っぷりである。若くないと出来ない。
翌朝には、仕事のための情報収集と称して、レンジャーものから戦うヒロインアニメまで鑑賞。それが終わればお出かけしてお洒落カフェでランチ、という充実ぶりだ。
さて、折角だし「合宿」しようぜ!という話になり、連休のあるときだったか、それは実行された。
合宿なので、普通の一泊旅行ではない。
パソコン持参である。
某所山奥にあるホテル(現在は災害により廃業)に車で向かう二人。ホテルは名前と外観だけで決めたので、当時の住まいからは車で2時間以上。携帯の電波が入らない、ガードレールのない対向不可能な細い道の先がホテル、というロケーションになった。運転しながらひたすら、「狭い!怖い!」って叫んだのを覚えている。
この時の主な合宿メニューは、
「森の中でハイキングをして、異世界ファンタジーものの旅の雰囲気を体感する」
「合作短編を一晩で書き上げる」
であった。
ちなみに月一の集会でも、しょっちゅう滝だの山だの海だの攻めていた二人である。そこでお散歩しながら妄想してニヤニヤするという怪しい行動をしていた。森独特の暗さとか、道の細さ、推しのキャラクターが歩いていたらうわああ萌える以下自粛、というようなことを議論しながら歩くわけだ。疲労感なんかほとんど感じない。
短編はというと、キーワードに基づき、それぞれが小説の前半部分を書く。それから書いたものを交換して、お互いが書いた小説の後半部分を書きあげて完成させる、という形だった。なお、キーワードは移動中の車の中で列挙され、選別された……と。当時のメモによると、そんなことをしていたようだ。キーワードは後でお見せするが、テンションがおかしなことになっていたのは明らかだ。
さて、宿に着くと、まずは温泉。それから周囲をお散歩。そして夕食。パスタじゃない。フレンチのフルコースだ。もの凄く美味しかったのを覚えている。もちろんアルコールも入る。何より印象的だったのは、そこのウェイターさんが皆揃いもそろって顔面の整ったお兄様方ばかりだった。これで妄想が暴走しないはずが無い。どこかのお屋敷の食事風景に早変わりなのだ(ホテルもヨーロッパのお屋敷風だったのもあり)。いちいち変な笑いをこぼしながら食べた。
そんな感じでお酒も進んだ後は、部屋に戻ってパソコンを起動して本番だ。前半部分までは勢いがあったのだが、さすがに旅の疲れとアルコールのせいで睡魔に襲われる。とりあえず文章を交換し、思いも寄らない話の内容に爆笑したり突っ込んだりするはしたものの、仮眠を取りながらの執筆となった。寝たらいいのに。しょうもないこととはいえ、全力で取り組む自分たちがおかしくて、ずっとニヤニヤしていたのを覚えている。
その時書いたであろう短編の設定縛りを発見したので紹介しよう。
設定は
「異世界」
「宿泊施設」
「アラサー」
「職業は剣士で旅人」
「旅の目的は自由に設定可」
「季節は秋」
「800字ずつ書く」
のもと、
わ:忘れ物 和解 わき見 わなげ わけ 枠 わらい わかめ ワイルド 若気の至り 別れ 輪ゴム
さ:魚 坂道 さかむけ さいころ 酒 さいはて 作戦 錯乱 散歩 さくらんぼ 再会 さじかげん
「わ」から想起して列挙された単語のうち、一つを選び前半部分を書く。
「さ」から想起して列挙された単語のうち、一つを選び、相手はそれに基づいて後半の話を作る。
で、りおまさんが選んだ単語がこれ。酒が回ってたんでしょうねぇ……
わ:わかめ
さ:作戦
何故それを選んだのか。先輩はまともで書きやすい単語を選択していたというのに。
出来上がったものをここに載せるわけにはいかないので、何が出来たかはご想像にお任せしよう。ただ、酒と睡魔のコラボ状態で書いた短編はとりあえず面白かった。よくこんな話を短時間でひねり出したな?というものが二作出来上がったのである。合宿の成果だ。
いい年の二人が、夜中に浮ついた話もせず、悩み相談をするわけでもなく、持参したパソコンを二台ならべて黙って文章を必死で打ち込む。
外野から見ればおかしな光景だろう。
だが、我々は大変満足した。
どっぷりと創作の世界に、同志と浸るという充実の二日間。
早朝は早朝で、近くの渓谷を散歩。朝の山道の雰囲気チェックである。朝もはよから妄想は全開である。結局その二日間でかなり歩いたと思われる。
チェックアウト後は適度にドライブしながら帰った。先輩は居眠り運転防止(さすがに体力の限界が近づいていた)のために、ひたすらりおまさんに面白いことを言わなければいけない、という試練が与えられてはしまったが。それもまた、楽しい思い出。創作合宿の一環。
今となっては、そういうことをすることが難しくはなってしまった。お互い忙しくなり、引越しもあって会うこともなくなってしまった。
だから創作に励む元気な動ける人たちに伝えたい。
創作仲間が近くにいる人たちに伝えたい。
出来る時にやってほしい。
創作合宿、めちゃくちゃ楽しいよ!!!!
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