必勝の策のひとつやふたつ、思いつかないワケねー
「決まってるじゃないか。“神”を倒しにさ」
「…………!!」
イリスの宣言に皆が驚きの表情を隠せなかった。
「倒すって、相手は神様ですよ? そんな畏れ多いこと……!」
この中でただ一人、“神”を崇める『太陽教』が支配する王国の教育を受けたメリアが困惑の表情で言った。
「何言ってんだよ、メリア。オレ達をこんな目に遭わせた奴だぞ。このまま黙って引き下がるってのか、お前は?」
「それはそうですが……」
「あいつは明確にオレ達の――いや、世界の敵だ。多くの争いの火種を今もまき散らし楽しんでいる。多くの人も殺した」
イリスは少し言いにくいようにしていたが、やがて意を決して口を開いた。。
「お前の家族もだ、メリア」
「――――!!」
メリアは大きく目を見開き、衝撃の面持ちでイリスを見た。
“神”の名のもと、メリアの実家である西大陸の王家が打倒された話はすでにした。しかしメリアにはどこか現実離れした出来事だったのだろう。あるいは、想像できなかったか、したくなかったのかもしれない。
しかしイリスは見た。この部屋のテレビでまさにその瞬間を。自分の責任であると目をそらさずに一部始終を見た。
メリアはうつむき、全身を震わせながら何事か呟いている。
「勇者イリスよ」
「どうした、吸血鬼サンよ」
「ルーヴェンディウスじゃ」
「……悪い、ルーヴェンディウス」
ルーヴェンディウスは――リリムもフェンもだが――冷静にイリスのことを見ている。
「そこまで言うのであれば、何か策はあるのじゃろうな?」
「わたしとフェン、そしてメリアさんが束になってかかっても手も足も出なかった相手です。正面からぶつかったのでは同じ事に――今度は二度と復活できないようにされてしまいます」
部屋の中で一人立ち上がっているイリスは三人を見下ろすように見た。リリムにはイリスの「ドヤァ」という声が今にも聞こえてきそうだった。
「誰に言ってるんだ? オレは戦略シミュレーションで世界の頂点に二度立ったプロゲーマーだぞ。五年も期間を与えられて、必勝の策のひとつやふたつ、思いつかないワケねーだろうが」
そう言うイリスからはやはり「ドヤァ」という声が聞こえてきそうだった。
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