第9話【インフレの】これからについて考えてみる【心配はない】
「やっぱ誰も信じないよなぁ…」
一度パソコンを閉じ呟く。仲間でもできればいいなと思ったが、やはり邪神関連は創作の話だと思われたようだ。
まあいい。これくらいは想定済み…というか確定していたことだ。
武器などは一応心配してくれてるみたいだが…俺の呼び出す物はすべてダンジョン産なので多分問題はない。高いバールとTシャツを買おう。
明日は安価で名前を決めてもらい、その後外に出て探索者登録しよう。ステータスの確認もできたら楽だし。
探索者は、探索者協会にて探索者登録をすることで、ダンジョンで入手することができるドッグタグが配布される。
そのドッグタグはダンジョンで出てくるステータスとスキルが確認できる物なのだ。
1ドッグタグ100 DPで安いので交換はできるが…今はあまりDPを無駄にしたくない。
ルエルちゃんの武器を買ってDPも減ったし…まあ節約だ。
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DP︰ 3,800DP
FW︰11,000
『召喚』『調整』『交換』
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とりあえずTシャツを購入しよう。検索で…あ、出るんだ…
その中でも一番高いものを探す。
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名前︰文字入りTシャツ
詳細︰文字の入った何の変哲もない白いTシャツ
能力︰浄化
消費︰3,500DP
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柄は白い無地で…おお、文字も自由に打ち込めるのか…!
高いが、必要経費だ。バールは明日手に入った10,000あれば足りるだろう。
そこに、神登場と書き込み、交換すると…
「おぉ…?」
そこに、1枚のTシャツが現れた。
神登場と黒い文字で書かれた白いTシャツ。絶妙にダサい。
とりあえず着用。ふむ…正直普通のシャツだ。布製で防御力が高そうには思えない。
だが、ダンジョン産の装備は見た目とは違い相当な防御力になるらしい。
昔テレビで見たダンジョンで入手した飛竜の鎧と呼ばれる装備は戦車の砲撃すら耐えていた。しかも中の人形が無傷だったことから装備していない部分も防がれるという検証結果が出ていた。
ダンジョンのモンスターから剥ぎとった素材で制作した防具も、その驚異的な防御力が付与されていて、今ではダンジョン素材は相当この世界の重要な資源となっている。
「敵視されることも視野に入れておかないとな…」
今の現状を皆が理解すれば、沢山の仲間を得ることができるだろうが…そんなこと不可能だ。
もしかしたら秘密組織に狙われたり…?
「いいなそれ」
誰にも理解されずとも、世界の終焉を止めるため孤独に戦い続ける一人の英雄…かっこいい。
武器はバールで装備は文字Tという微妙な格好だが安価で決まったし仕方ない。
あとは、Tシャツについた浄化という能力だろうか。確か、体の汚れや服の汚れなどを除去してくれる風呂いらずの能力だ。ダンジョンから出てくる装備の中の能力でも人気の能力だと聞いたことがある。
さて。とりあえずバールや他の道具は明日購入するとはいえ、ある程度目星はつけておいたほうがいいだろう。
それと…
「ダンジョンも心配だよなぁ…」
脳内情報によると、ダンジョンのこの操作ができる宝玉は俺の命らしい。
この玉を破壊されればダンジョンは崩壊し、ダンジョンマスターも共に死ぬというわけだ。
防衛手段としてルエルを残しておきたい感はあるが…ダンジョンの攻略にはルエルの力が必要になることは間違いないだろう。
というよりは、邪神関連の何かに出くわした場合の対策が必要だからだ。
モンスターを召喚しようかなと思ったが、このDPで召喚できるモンスターは天使以外すべて地球外のモンスターらしい。
クトゥルフみたいな化物や王道ファンタジーのモンスターなど沢山の種類がある理由は、邪神が滅ぼした世界に由来しているようだ。
とはいえ、召喚されたモンスターはダンジョンの主に忠誠を誓うので特に問題はないらしいが…自分の命を守らせるのにそんな敵の戦力を使うのは嫌だ。
だから、モンスターはやめて何かトラップ的なものをおいておきたいんだが…
「うーん…トラップって何がいいんだ…」
どれもこれも使い切りだったり回避できそうなものばかりだ。これではすぐに突破されてしまうだろう。
正しい道を通らなければ絶対にゴールにつかない迷宮化などもあるが、5,000 DPもかかるのか…
スレでもう外に出るって言っちゃったし、延長は彼らの興を醒めさせることになる。
…ん?いや、うーん…
少し良さそうな案が思い浮かぶが、流石に無理か?こんなときは…
「ルエル〜助けてぇ〜」
「はい。何でしょうかマスター?」
俺がそう呼ぶと、さっきまで部屋の隅で引っかかっていたルンバをじっと見つめていたルエルがこちらにやってくる。
「この宝玉って、持ち出せるの?」
「…?可能ですが、それがどうか?」
「持ち出せるのか…」
……なら、持っていけばいいんじゃね?
「ルエルってどのくらい戦えるの?」
「どのくらいとは?」
「あ〜…人間相手にどんくらいとか、邪神との戦争のときどのくらい活躍したかとか」
「二千万年前であれば、龍種を3体。王種を17体単騎で討伐した記録が残っています」
「……嘘でしょ?」
「人間相手であれば、先程パソコンの操作中にご説明いただいた雷帝と呼ばれる帝級探索者が最高位の人間であるのであれば、敗北はありえません」
「……はい?」
ついさっき軽く説明した帝級探索者…『雷帝』という二つ名を持った女探索者だ。
探索者の中では最高級である帝級に到達した超人の中の超人。そんな彼女に敗北をすることはないって…えぇ?
「武器有りで?」
「武器は必要ありません。この対龍用兵器も殲滅兵器も不要です」
「……それは過信とかではなくて?」
「彼らは私の防御を貫けませんので」
「まじか…」
これは意外である。やっぱりルエルがいれば問題ないんじゃね?
「やっぱりルエルちゃんが邪神を倒したほうがいいのでは?」
「不可能です」
「そうか…」
そう彼女は断言する。やはり、俺は戦わなければならないようだ。
「それと、帝級探索者相手であれば敗北はあり得ないというだけで、勝つこともできません」
「え?なんで?」
「私は過去の影響で武装をほぼすべて消失しており、現在は器の本来の筋力と装甲しかありません。攻撃が当たれば問題ありませんが、加速装置がない私は、逃亡されれば追いつくことができませんので」
「へぇ〜」
なんと、つまりルエルは現在完全にタンクキャラなのか…
それならルエルの装備も揃えて…え?
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名前︰生命探知
詳細︰器械天使専用の探知システム
能力︰熱源探知
消費︰100,000 DP
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名前︰武装収納
詳細︰器械天使専用の小型収納システム
能力︰武装展開
消費︰100,000DP
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名前︰加速装置
詳細︰器械天使専用の加速システム
能力︰衝撃保護
消費︰100,000DP
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名前︰強化装甲
詳細︰器械天使専用の強化装甲システム
……
…
「高すぎだろ!!」
器械天使専用と入力して出てきた装備は、すべて100,000 DPであった。
それが…数百以上並んでいる。全部購入したら一体いくらになるんだ…!?
「これは後回しだな…」
将来的には購入してもいいかもしれないが、まずは数だ。天使を大量に交換し、配下を増やしておきたい。
器械天使で安く済むのならと思ったが、ルエルちゃんが言うには、他の器械天使は交換しても動かないらしい。
と、今はそんなことは置いといてだ。
ルエルがめっちゃ強いということがわかった。彼女に宝玉を守らせて、俺が前衛で戦おう。
強くならなきゃならないっぽいしな。
「とりあえず、今日は配信の準備でもしておくか」
ダンジョン配信をするには特殊なカメラがいるらしい。DPは…結構安いな。
すぐにポチると、目の前に一つの玉が現れた。
機械でできたボールだ。正面には黒いレンズが見える。
これは、自動追尾式ドローンだ。
ダンジョンで浮遊モンスターから取れる素材と科学技術を組み合わせ作られたものだ。
これを使ってダンジョン内で配信をするわけだ。
そうして、のんびりと明日の準備を始める。
「ゆっくりできるのは…今日までかもしれないもんな…」
無意識に、俺はそんなことを呟いた。
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