プリンセスナイトとソルメダル
ヒカルとの決闘を受けて数日、シロウ達は闘技場に来ていた。
ソルオーブを集めるのも大切だが、闘技場で勝つことも塔の頂上を目指すのに必要なことだ。
メンバーはシロウ、セレナ、ヒナタ、ユキ、ルリだ。
リサ、ユカ、ウェンディ、サキ、の四人は観戦席で見ている。
対戦相手は男女混合のパーティで盾、斧、剣、魔法、弓使い達だ。
試合開始と同時にセレナは駆け出した。また相手側も駆け出した。
「【
セレナは前衛三人の横をすり抜け、魔法使いと弓使いの距離を一瞬に詰める。相手も距離を詰めてきた。
「【カバー】」
「「【ファントムラッシュ】」」
盾持ちのが【カバー】を使い、後衛の魔法使いと弓使いを守る。
「【
相手の剣使いがユキとの距離を縮め、風を纏った剣が迫る。
風を纏って突き出された剣が届く前にシロウがスキルを放って立ちはだかる。
「なにっ!?」
「【クロススラッシュ】」
火花を散らせて槍使いのスキルがシロウのスキルに打ち消される。
シロウは剣で押し返して、バランスを崩した剣使いの背後に周り、【分身】を出現させて【ファントムラッシュ】を喰らわせる。
七方向からの攻撃を受けて剣使いはあっけなくその場から退場した。
「【バーニングラッシュ】!」
「【ワールウィンドウ】!」
ヒナタは斧使いと相手をしていた。
「ヒナタちゃん避けて! 【ホーリーレイ】!」
ヒナタはユキの指示に従い、その場から離れると光線が斧使いに撃ち放つ。
「ごふっ!?」
光線を受けて斧使いは吹っ飛ぶ。
「【フレアフィスト】!」
ヒナタは吹っ飛んだ斧使いに隙を与えず、距離を詰めるとヒナタの拳が斧使いに触れると爆発を起こして、もろに受けて退場した。
「【ファントムラッシュ】」
「かば……」
「【ストライクショット】!」
高速の連撃が魔法使いに迫る。盾使いは【カバー】を使い魔法使いを守ろうとしたがルリが矢を放って妨害した。
「【アクセル・ファング】」
立て続けにスキルを放つ。近距離の防衛手段を持ってない弓使いは乱舞するセレナの双剣に対応できずに消滅し、光の粒子と化した。
残るは二人となった。
「ああ! もう素早くて全然当たらない!」
「くそっ……三人ともやられちまった……」
「どうする降参する?」
「いや、最後まで戦うぞ」
相手は人数的に不利な状態だが、せめて一人くらい倒したいと思った。
「【
シロウは雷を纏う。バチバチと帯電しながら盾使いの距離を詰める。
「【シールドバニッシュ】!」
「【クロススラッシュ】」
盾使いは迫り来るシロウを迎えうつ。大音響を響かせて、シロウのスキルが盾使いのスキルに打ち消される。
「【バーニングストライク】!」
ヒナタを中心に爆炎が起こる。シロウは下がり、巻き込まれることはなく、盾使いはノックバックを受けて下がる。
「【シグナス・スライサー】」
「【アクセル・ファング】」
シロウは勢いよく突進し、セレナは六連撃のスキルを放つ。
弓使いはやられて光の粒子となって消滅した。
「【分身】【ファントムラッシュ】」
「【バーニングラッシュ】!」
シロウは立て続けにスキルを放ち、ヒナタも後に続いた。
シロウとヒナタの攻撃を捌ききれず盾使いは光の粒子となって消滅した。
『──試合終了。 ギルド【スターライト】の勝利です。参加報酬として「ソルメダル」を贈らせていただきます』
アナウンスが流れてシロウのギルド、スターライトが勝利した。
勝利すると待機部屋に転送されて戻ってきた。
ウィンドウを開き、運営からのメールを開くと『ソルメダル』が添付されてあった。
【ソルメダル】 Aランク
⬛︎銀色のメダル。ソルの塔に必要な物。
⬜︎収集アイテム/売却不可
大きさは五百円ほど。銀色の金属製で、表には中央に太陽が裏には縁に沿って周囲に多くの小さい星が並んでいる。
「やったね! 私達の勝利だよ!」
「勝ててよかった」
「やりましたね!」
「お疲れ様でした」
「ヒナタもお疲れー」
『お疲れ様だぞ!』
ヒナタとユキにルリは手を取り合って喜んでいる。シロウとセレナとレメはハイタッチしてお互いの健闘を讃える。
「よーし、これからもどんどんエリアボスを倒して、闘技場にも参加してソルの塔の頂上を目指すぞー!」
「「おー!」」
ヒナタが気合いを入れて宣言するとシロウ達も気合いを入れる。
「みんなおつかれー」
「みんなすごかったよ」
「やっほー、おつかれー」
「ルリちゃん、頑張っててえらいぞー」
待機部屋で気合いを入れているとリサ達が来た。
「今度はリサさん達も参加してもう一戦行く?」
「んー……私はあまり戦いは得意じゃないから遠慮しておくわ」
「それなら私参加したい!」
「私も!」
「私も参加してみようかな」
リサはパスしてユカとウェンディにサキは参加したいと言う。
もう一戦することになって、セレナとヒナタがもう一戦。シロウとユキにルリは観客席で応援することになった。
結果はヒナタ達の勝利だった。
ソルメダルをもう一枚手に入れて、残りは二十二枚だがまだまだ先は長い。
★クエストが発生しました。
◼️個人クエスト
【ラピスの話し相手になろう】
⬜︎未達成
⬜︎報酬 ???
※このクエストはいつでも始めることができます。
【ラピスの話し相手になろう】がクエストウィンドウに表示された。どうやら一定期間で現れるクエストらしい。なんとなく呼び出されている気がしないでもなかった。
「騎士くん、どうかしたの?」
「前に話したラピスからのクエストが今、発生したみたいなんだ」
「本当に、私もラピスって子に会ってみたい! そのクエストいつまでにとかあるの?」
「いつでも始められるクエストだから時間制限はないよ」
いつでも始められるとはいえ、ラピスを待たせるのは悪いのでなるべく早く会いに行く方がいい。
ヒナタ達はラピスに会ってみたそうで、ラピスなら快く迎え入れそうだがシロウはまず聞いてみることにした。
手ぶらで行くのも忍びないので、スキルオーブのお返しも兼ねてお土産を買いに行きたいところだ。
「誰かラピスに持っていくための、良さそうなお土産ないかな?」
「それなら私に任せて、お土産にぴったりなお店があるの」
リサに案内されて【機械都市フレスベルク】に転移してきた。
大きな通りを外れた場所に家、いや、店に案内された。
喫茶店で『ソレイユ』と小さいティーカップの描かれた看板が出ている。
『ソレイユ』は『太陽』のことを意味する。看板に太陽みたいなマークが付いていたので、間違いはないだろう。
「最近、お姉ちゃんとよくここに来るんだ。ここのお店のコーヒーは美味しいからおすすめだよ」
ユカがコーヒーを勧めてくる、シロウは興味が湧き頼もうと思った。
扉を開くと、カランコロン、とドアに取り付けられたベルがなる。中はそれなりに広いスペースを取った造りで、そこに四つの椅子がセットになったテーブルが四つ、窓際に六人掛けのテーブルが二つ。そしてカウンターには席が八つあった。
店内はなかなか落ち着いた雰囲気で漂うコーヒーの香りがなんともいい匂いだった。
「いらっしゃいませ」
カウンターの奥にいたこの店のマスターらしき人が話しかけてきた。白いシャツにネクタイ、黒のズボンにサスペンダー。高い身長、優しそうな糸目。年の頃は三十代くらい。
頭にツノがあり【魔族】のようだ。
視線をマスターに向けていると、頭上に青いネームプレートがポップした。『サニー』と書いてある。
「あれ? プレイヤーなんですか?」
「ええ、そうですよ。貴女と同じ『アストラル』のプレイヤーです」
ヒナタが聞くとなんでもないことのように、マスターのサニーが微笑んで答える。
青いプレートはプレイヤーで緑のプレートはNPCに分けられている。
プレートの色を見ないとプレイヤーかNPCか見分けがつかないのだ。
ヒナタの間違いもわからなくもない。シロウも最初NPCが経営している店かと思ったのだ。
店を持つプレイヤーは一定数いるが少なく、ほとんどNPCが経営している店が多い。
「それでご注文は?」
「レメはなにがいい?」
「なんでもいいよ」
「やったぜー!」
レメがメニューを見てよだれを垂らしているので、レメの分も買おうと思った。
「どれも美味しそうだな……。よし、決めたぞ! オイラはショートケーキとラズベリーケーキがいいぞ」
「了解。フルーツタルト二つにショートケーキ一つラズベリーケーキ一つチーズケーキを一つで」
「かしこまりました」
セレナ達もまたケーキを頼んでいた。
ギルドハウスに戻りシロウは【星門(スターゲート)】をセットする。
「それじゃあ、ラピスにヒナタ達が来てもいいか聞いてくるから少し待ってて」
転移場所である【花園の庭園】を選択して、シロウ星型の陣に入る。
転移はすぐに終わり【花園の庭園】に着いた。
建物に向かうとラピスとアナが待っていた。そこにレメと同じくらいの妖精と全身甲冑の人がいる。
「シロウくん、レメちゃん、待ってたよ〜」
「お待ちしてました。シロウ様、レメ様」
「ラピス、アナさん、こんにちは」
「二人共遊びに来たぜ!」
「初めましてクララなの〜。ラピス様からお話を聞いているのー」
「やあ、初めまして僕はカノン。よろしく。」
エメラルドグリーンの妖精――クララが元気良く自己紹介をしてくれる。見た目のちっこさもあってか、かなりの癒し系だ。
黒い騎士甲冑に全身を包んだカノンの声は少し違和感があった。何と言うか変声機でも通している様な、声だが凄く聞きとりやすい。身長は170cmくらいという事もあってか、普通に人間族の騎士にも見える。
「初めまして、シロウです。よろしくお願いします」
「オイラはレメだ、よろしくな!」
「ラピス、僕の仲間達がラピスに会ってみたいって言うんだけど、ここに連れてきてもいいかな?」
「うん、もちろんいいよー。シロウくんの仲間なら大歓迎だよ〜」
「ありがとう。それじゃあ僕は一旦戻って仲間達を連れてくるね」
「うん、いってらっしゃい〜」
再び【星門(スターゲート)】を発動するとシロウギルドハウスに戻ってきた。
「騎士君、どうだった?」
「僕の仲間なら大歓迎だってさ。というわけでみんな連れてきて大丈夫そうです」
「どんな所なんだろ。楽しみだね!」
「うん、話では花が一面に咲き誇ってて綺麗だって聞いたけど、楽しみだな」
「【シークレットエリア】……どんな所か楽しみだわ」
「どんな所なんだろね?」
「お姉ちゃん、楽しみですね!」
「うん、そうだね」
みんな【シークレットエリア】に行けるのが楽しみでワクワクしている。
【星門(スターゲート)の星型の陣にシロウが入り、その後に続いてみんなが入っていく。
全員が星型の陣に入るとすぐに転移が始まった。
一瞬にして背景が切り替わる。再び【花園の庭園】に戻ってきた。
「ここが……」
「騎士くんの言ってたシークレットエリア【花園の庭園】……」
「綺麗な所ねー」
「シークレットエリアって本当にあったんだ……」
「綺麗ですね……」
「花が一面に咲いて綺麗……」
「……」
ウェンディはどこか緊張した面持ちで、それ以外のみんなは感動していた。
「待っていたよ。キミ達がシロウくんの仲間だね?」
「お待ちしてました」
再び【花園の庭園】に戻ってくるとラピスとアナが出迎えてくれた。
「ラピスさんとアナさんですか?」
「うん、そうだよ〜。僕はラピス、よろしくねー♪」
「初めまして皆様。シロウ様よりお話を伺っております。アナスタシアと申します」
「ヒナタです。よろしくお願いします!」
「ユキです」
「は、初めまして、ウェンディです」
「リサです」
「ユカです」
「サキです」
「ルリです!」
ラピスと対面するとヒナタ達は自己紹介してくる。
「みんな気軽に接してくれると嬉しいな」
「うん、わかった。よろしくねラピスちゃん」
「ヒナタちゃんよろしくね〜」
さすがはヒナタだと感心する。
ヒナタは誰とでも仲良くできるのはすごいことだと思った。
ラピスとヒナタは相性が良さそうだ。
なにやらクララがウェンディをじーっと視線を向けられて、蛇に睨まれたカエルのようになっている。
「ウェンディちゃん、わくせ……」
「ああっと、クララ様! 美味しいお菓子はいるかな!? こっちおいで!」
おいで、というか、掻っさらうようにウェンディがクララを連れて遠くへと走って行った。
「……で、……だから……。……できます?」
「わかったの!」
遠くてクララの声しか聞こえない。
疲れたようなウェンディがこっちにやって来た。
「……仲良くなった」
「の!」
「あ、そう……」
「ウェンディちゃん、ごめんねー」
「いえいえ、だ、大丈夫ですよ」
ラピスはウェンディに謝る。初対面なはずなのに、花園の庭園に来てからウェンディの様子がおかしい。
クララがウェンディにわくせと言いかけたことが気になった。
「そうだ。はい、これ、よかったら四人で食べてください」
インベントリからお土産に買ってきたケーキを出す。
「ありがとう。美味しそうだね」
「シロウ様、ありがとうございます」
「わあー、ありがとうなの〜♪」
「ありがとう。いただくよ」
ラピスとクララはケーキを渡されて嬉しそうだ。
アナの入れた紅茶を飲みながら、最近起きた出来事を話していた。
「へぇー、機械の街に竜がでたんだ」
「うん、ここにいるみんなでなんとか撃退したよ」
★クエストが終了しました。
■個人クエスト
【ラピスの話し相手になろう】
□達成
□報酬 スキルオーブ。ユニークシリーズ
「ふむ。ここらからいろいろと試練が起きそうだね」
「試練?」
「うん、シロウくん達には『いべんと』と言った方がいいかな。この世界にはそういったことを管理する者が数人いるんだ。楽しませることを目的としている者や、逆に痛めつけることを目的としている者など、それぞれ考え方が違う人達がね」
運営している職員や開発者のことだろうか。しかし管理しているのはアルテミスのはずだ。楽しませるのはまだしも、痛めつけるのをメインとしてるってのはどうなんだろうと思う。ハードモードのクエスト担当ってことなのだろうか。
「まあ、そんなに深く考えなくても大丈夫だよ。シロウくんの敵もいれば味方もいるということ。それよりもシロウくんちょっと失礼するねー」
ラピスがシロウの額に手をかざすと暖かいものに包まれた。
「護りの魔法陣が薄れていたから。強化しておいたよ。なにか精神に攻撃でも受けたのかなぁ?」
精神に攻撃。雨の日の出来事が関係しているんじゃないかと思う。
ラピス達は何者なのかとか、
To be comtinued
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