206 親父との距離

その昔

おれの身の回りで

大きな出来事があった

それは

それまでおれが

考えていたこと

それまでおれが

眼で見てきたこと

それまでおれが

感じ取っていたこと

その全てが

いっぺんに

覆るような

出来事だった


おれはその頃は

親父のことが

好きだと思う反面

頑固で厳格な

親父に反発して

家の中では

口論になることも

しばしばだった


しかし

その大きな

出来事が

遭った直後

おれはこう感じた


それまでは

親父とおれとの

距離は

月と地球ぐらいの

距離があった

それがいっぺんに

数センチの

ところまで

近づいた

そんな気持ちになった


それまでは

親父とおれとは

違うんだと

思っていたが

その大きな

出来事の後は

おれと親父とは

全く一緒なんだと

初めてそう

感じた


そしてそれは

その通りだった

親父とおれとは

全く同じだった

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