第12話 Only Light STAFF(中編)
《
大抵の魔物使いは主に中&大型の魔物――もしくは何かしらに特化した能力を持つ魔物と絆を結び、戦闘に冒険に日常に、様々な場面で仲間をサポートするオールラウンダー。
俺が読んだ本にはそう書かれていた。
「あの、私が使役する魔物はスライムですよ? 最弱と呼ばれる……」
「それがいいんじゃないか」
「えぇ……? ほ、他の魔物使いの方々みたいに、魔物を乗せて移動できませんし、大荷物も持たせることもできませんよ?」
「そんなものはハナから期待していない」
じゃあ何を?――とでも言いたそうな顔でクレアは俺を見ている。
あそこでは
「クレア、俺がきみに求めるものはスライムへの知識と絆の大きさだよ。それ以外には何一つとして
「そ、それならば誰にも負けない自信はありますけど……何でそんなものを?」
「そうだな……それを説明する前にいくつか確認を取りたい」
「な、なんですか?」
「きみにとってそこのスライム――スーちゃんだっけ? この子はどんな存在だ?」
「か、家族であり唯一の友達です」
「それ以外のスライムは?」
「特に何も……わ、私はスーちゃんだから家族であり友達と思っているのであって、それ以外のスライムは他の方々と同じ
なるほど、いいぞ。
他のスライムも家族や友達とか言われたらどうしようかと思ったぜ。
「質問その2、スーちゃんというかスライムについての知識だ」
俺も簡単な知識ならば、食客の特性ですでに理解してはいる。
だけど、それが全てというわけじゃない。
倒し方や弱点、動きなどではなく、生態の知識が俺は欲しい。
「スライムって痛みは感じるのか?」
「いえ、スライムにはそういったものはありません」
「なるほど。スライムって
「はい、好みはありますけど何でも食べますよ。ただ、ゴミとかは食べれるけど
そうか、ゴミはまず食べないのか。
もし食べるなら日常生活でめちゃめちゃ
「質問その3、俺、巨大なスライムと戦ったことあるんだけど、あそこまでどうやって成長するんだ?」
「たくさん
「ピィ!」
ほう? ってことは食わせれば食わせるだけ大きくなるってことか。
もしも彼女を
食えば食うほどデカくなるなら、いつでも新鮮なゼリーを無限に
無限袋のある俺以外に、新鮮な食材を確実に確保できるというメリットがとてつもなくデカい。
彼女がスライムをデカくしている間、俺は別の作業をこなせるようになる。
「あの、質問は以上でしょうか……?」
「ああ、うん、ありがとう。今の答えを聞いて、ますます俺はきみが欲しくなったよ」
「今の話でどうしてそう思ったのかはわかりませんけど……あの、いいんですか? そんなこと言って」
「何で?」
「さっきから、その、彼女さんがものすごい目でこちらをにらんでいるんですけど……」
そう言った彼女がちらりと見た先には、たしかに
まるで親の仇を見るような目で俺を見ている。
何で?
「フォ、フォローしたほうがよろしいのでは?」
「フォローも何も、俺とミーナはただの冒険者仲間、もしくは店主と
「そ、そうだとしても絶対何か言ってあげた方がいいですって! 私なら謝ります! ごめんなさいって! 例え私が悪くなくても、そうすればとりあえず場は収まります!
大体かよ。
自分が悪くないのに謝るとか、あまりしないほうがいいんだけどな。
悪い奴はそこに付け込んで、さらなる
「クレア、きみの
「が、
いや、謝らんから。
とりあえず俺はテーブル席を離れ、カウンターで不機嫌そうにしているミーナの
「ミーナ」
「……何よ? あたしなんか放っておいて新人の子とイチャイチャすればいいんじゃないの?」
「イチャイチャって……あれをどう見たらそう見えるんだ? どっからどう見てもスカウトだろ」
「どうだか?
ミーナの言う通り、クレアは結構かわいかった。
ボロボロのローブとボサボサの赤髪で隠れてはいるが、メカクレ状態の下の顔は人形のように
背も低目だからちっちゃかわいくて
あと、そんな体型なのに胸だけはしっかりと大人だった。
ローブの上からでもわかるので、ぶっちゃけミーナより大きい。
「カイトはああいう子が好みなんだなー、ふーん」
「好みと言えば好みだけど、どっちかと言えば俺はお前の方がストライクなんだが」
「にしてはあたしとあの子で態度違うじゃん。初対面の時からわりと適当だったしさあ」
「だってそれは――」
「それは?」
「あの子が今の俺にとって絶対に必要な存在だからだよ。お前と違って。っていうかお前何でまだいるの? 店は閉店時間だぞ? あまりにも自然についてきたから言わなかったけど、仕事と関係ないのに何でついてきて――」
「~~~~~~~~っ! カイトのバカッ! 死ね!」
――バキッ!
――ズシャアアアァァァッ!
お、おごごご……。
わりと一緒に冒険するから、しっかりレベルが上がっていやがる……。
「帰る! じゃあね!」
「お、おう……また明日」
肩をいからせ、ミーナは店から出て行った。
またのお越しを。
「あの、いいんですか? 追いかけなくても」
「いいのいいの。別に俺たち付き合っているわけじゃないし。明日もどうせ来るだろうから、飯の一杯でも
「は、はぁ……?」
「そんなことより今はきみのことだ。クレア、今俺はものすごくピンチに
「わ、私が? こんな役立たずの?」
「役立たず? そんなのはきみの本当の価値に気づけない間抜けの
俺はこの子の本当の価値に気づいている。
今は見向きもされていないが、気づいた時にはもう遅い。
絶対に、俺はこの子を逃す気はない。
「クレア、仕事の話といこう。もしもきみが俺と
「銀貨10枚!? あの、冗談ですよね? そ、それにパーティ契約ってお金が発生するものなんですか?」
「あー、どうだろう? 俺も
俺が欲しているのは、あくまで
なので、
「もちろん、仕事の出来に応じて報酬は上乗せするし、きみの成長に応じて昇給だってする。だから頼む! どうか俺と組んで欲しい!」
俺は、どうしてもきみの力が必要なんだ!
いつか帰る方法を探すための、その
「……わかりました」
「!」
「カイトさんが私なんかにどんな価値を見出したのかはわかりませんけど、助けてもらった恩もあります。私なんかでよかったら一緒に組んでください!」
「あ、ありがとう!」
よっしゃあああぁぁぁぁっ!
必要不可欠な人材ゲットオオオォォォッ!
さっそくギルマスに連絡しないと!
『あ、もしもし? 俺です』
無限袋から
『例の件ですけど……ええ、いけそうですよ。とりあえず数日間は色々試して――え? 見学したい? あんた書類仕事あるじゃないっすか。現役復帰したからたまりやすくなったってマールさんぼやいてましたよ?』
「あ、あのう……誰に連絡を取っているんですか?」
「冒険者ギルドのギルドマスター」
「何でそんな人に!? カイトさんっていったい何者なんですか!?」
「ただの料理人兼冒険者だよ」
ちょっと普通じゃないけどな。
「ギルマスに話したところ、向こうもものすごい期待していたよ。頑張ろうな、クレア!」
「き、期待が重すぎてプレッシャーがすごい……」
「大丈夫だって、いけるって。っていうか絶対にきみ以外できないんだって」
「わ、私に何をさせようと?」
「
「ギャアアアアァァァッ!? え、Fランクなのに……冒険者初日なのに……何で……(ガクッ)」
「ピィーッ!?」
「あ、気絶した」
あまりのプレッシャーに耐え切れなかったのか、クレアは気絶してしまった。
スーちゃんがペシペシ叩いてはいるけど、全く反応を示さない。
ちょっと気弱すぎないかこの子?
「まあ、その辺はおいおい
自分の価値に自信を持てれば、このようなことは起きなくなるだろ。
「さて、スーちゃん」
「ピ?」
「クレアもだけど、きみにも期待しているよ?」
「……ピッ!」
「おお、
こうして俺はこの世界初の、専属パーティメンバーを加えた。
気弱な主と、それを支える魔物の
彼女らの成長には大いに期待したいと思う。
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《あとがき》
新ヒロインのクレアは冒険者向きの性格ではありません。
でもこれから徐々に周りに影響されて変わっていきます。
お楽しみください。
《旧Twitter》
https://twitter.com/USouhei
読み終わった後、できれば評価をいただけたらと。
作者のやる気に繋がりますので。
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