第26話 蜂の魔巣①
統廃合がきっかけで廃校となった小学校跡地にEランクダンジョン『静寂の魔巣』はある。
これもARだからこそできる芸当だ。
『静寂の魔巣』は三つのエリアからなるダンジョン。
各エリアにはエリアボスがいて、それらを倒さないと次のエリアには進めない。
あれから移動などで1時間が経過し、モンスターが復活したので、俺たち4人は第1エリアの『蜂の魔巣』に挑戦する。
このエリアは序盤、
奥に進めば、
素早さ以外のステータスは
俺たちにはエルナがいるから状態異常は何とかなるが、普通Eランクで状態異常を解除するスキルを持っているモンスターはいない。
※天使は例外
『静寂の魔巣』はどのエリアも深い森が生い茂っていて、視界が悪い。
それだけでなく、このエリアは蜂の羽音が鳴り響いている。
蜂嫌いな人からすると最悪なエリアだろう。
というより、『静寂の魔巣』は虫嫌いの人からすると最悪のダンジョンと言える。
ブーーーーーーー!!
今、俺たちはこの羽音のせいでいつモンスターと遭遇するのかわからない状態だ。
常に警戒しながら進まないといけない。
すると背後から6匹の
「コン、狐火!!」
前後左右どこから奇襲されても大丈夫のように俺たちは準備していた。
前はカーラ、右はブルー、左はエルナ、後はコンが警戒していた。
今回は背後からの奇襲だった為、郁斗とコンが最初に対応した。
一度、モンスターと遭遇したらバトルが終わるまで、他のモンスターとは遭遇しない。
その為、ここからは全員で対応できる。
「エルナ、シャインランス」
「ブルー、プロミネンス」
「カーラ、ダークボール」
数は
それでも『遊楽園』の獄卒ほどではない。
コンの陽炎と蜃気楼のコンボは6体の
陽炎と蜃気楼のコンボで完全に攪乱されており、見当外れな場所を攻撃している。
その隙にカーラの闇魔法が次々に当たっていく。
徐々にデバフや状態異常を付与された
闇魔法によってデバフや状態異常を付与したらやることは一つ。
「カーラ、ナイトメア!」
デバフや状態異常を付与された相手に必中の効果を誇るナイトメア。
今までのモンスターならこれで倒されるのだが、さすがEランクダンジョンのモンスター。
まだHPが4割近く残っている。
それでも
寧ろ、更なる追撃で余計にデバフや状態異常が悪化していた。
序盤のモンスターにここまで手こずるとは思わなかった。
このエリアは奥に進むと
予想以上に苦戦をしそうな、そんな気がした。
俺の予想は見事に的中した。
いや、してしまったか。
今、かなり苦戦している。
てか、かなりのピンチかも…。
あの後も前後左右どこから奇襲を受けても大丈夫なように警戒をしながら奥に進んでいた。
途中、何回か
バトルが終わるとすぐに正面から
あまりにも突然のことだったが、ここは冷静に対処できたと思う。
しかし、問題はここからだった。
今まではカーラの闇魔法でデバフや状態異常を付与してとにかく弱体化させて勝ってきた。
しかし、それも攻撃が当たってこそ。
当たらないと意味がない。
少しずつではあるが、こちらのモンスターがダメージを負い始めた。
コンの陽炎と蜃気楼のコンボも無敵という訳ではない。
この二つの妖術スキルは同時に発動すると極端に効果時間が短くなる制限がある。
どちらか片方だけなら効果時間を気にする必要はないくらい長時間、効果を継続して発揮するが、同時に発動するとそうも言ってられない。
ここは一か八かの賭けに出るしかないか。
失敗したらブルーは倒されるけど、この状況じゃ仕方ない。
ここはブルーを信じる。
「ブルー、プロミネンス!」
ここでわざと
プロミネンスは当たらず、逆にこれで
3人とも俺の意図を察してくれているのだろう。
何も言わずにエルナ、カーラ、コンをブルーから少しずつ遠ざけている。
そして、
「今だ、ブルー!プロミネンスアタック」
このプロミネンスアタックは攻撃するのが目的ではない。
ブルーの居場所を明確に示すのが目的だ。
もちろん、これで敵味方両方が知ることとなるだろう。
そう敵も味方も。
先ほどのプロミネンスはあまりに急すぎてエルナたちがブルーの居場所を正確に掴めていなかった。
そこでプロミネンスアタックだ。
プロミネンスアタックは炎を纏う。
陽炎と蜃気楼のコンボで見えにくいだろうが、この炎が見える場所にブルーがいる。
そして炎が見えなくなったタイミングこそ、その場所に
エルナたちは炎が見えなくなった瞬間、一斉に攻撃を始める。
「エルナ、プチシャイン、シャインランス、プチファイア、ファイアボール、ファイアランス」
「カーラ、プチダーク、ダークボール、闇刺突、連続突き(闇)」
「コン、狐火、二尾の焔」
ブルーが囮となり、
攻撃力と素早さが高い変わりに防御力が極端に脆い
そして、カーラの連続突きが全ての
これが意味するのは一つだけ。
「カーラ、ナイトメア!」
囮となったブルーは途中、自分でプチヒールを使っていた。
それでも危うくなったが、気を利かしたエルナがそれとは別にプチヒールを使っていたので、何とかHPが残っていた。
あの一斉攻撃の最中にプチヒールをブルーに使ってくれたエルナには感謝の念が尽きないな。
プル、プル、プルン
ブルーもエルナには感謝しているようだ。
一応、エルナにもそれは伝わっている様子。
モンスター同士だからこれでも意思は伝わるのだろうか。
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