第3章 静寂の魔巣

第22話 勧誘

 長かった白黒学園新入生代表トーナメントも終わった。

 終わってみれば一瞬で終わった気がする。

 強くなった気でいた。

 強い人たちに勝ったから強くなれたんだって思った。

 でも俺たちは準決勝で姫島莉菜とエルナに負けた。

 完敗だった。

 あの後、いろんな人たちから「惜しかったな」って声を掛けられた。

 タッグEトーナメントでの再戦があれば必ず見に行くと言ってくれる人もいた。

 これはすごく嬉しかったけど、あのバトルは全然惜しくない。

 完全に実力で負けた。

 まだ俺たちは弱いと痛感させられた。


 同じEランクプレイヤー。

 でも、Dランクに近いEランクとFからEに昇格したばかりのEランクでは実力に雲泥の差がある。

 まさに俺たちと姫島莉菜とエルナはそれだ。

 実際に俺たちはまだEランクダンジョンをクリアできない。

 足りないものが多すぎる。

 でも、姫島莉菜とエルナはあと少しという所までいけるだろう。


 Eランクダンジョンはこのゲーム最初の鬼門。

 Fランクダンジョンのボスモンスターと同等の力を持つモンスターが当たり前のようにフィールドにいる。

 当然、Eランクダンジョンのボスモンスターは更に桁違いの力を持っている。

 そこをクリアできるくらいの実力がないとEトーナメントでも勝てない。

 今のままじゃダメだ。


 俺のモンスターはブルーもだけど、所有スキルが少ない。

 ブルーは通常攻撃ではあまりダメージを与えられない。

 どうやってもスキル頼みになる。

 スキルは進化での自動取得以外だとスキルの書でしか覚えさせられない。

 ポイントを貯めてショップで購入するのが1番効率がいい。

 その為にもポイントを沢山貯める必要がある。


 それにはEランクから開放されるクエストをやるべきか。

 Eランクダンジョンのクリアはできなくてもフィールドにいるモンスターは何とか倒せると思う。


「ねえ、鬼灯。今、ちょっといい?」


「え、姫島莉菜さん、それにオリヴィア・ブラウンさんも!?どうしたの急に?」


 新入生代表トーナメントの表彰式が終わった後に1人で考え事をしていたら急に話し掛けてきた。

 このタイミングで話し掛けてくる理由が皆目見当もつかない。


「今度、ベスト4に残った4人でEランクダンジョンを攻略してみませんか?」


「4人でEランクダンジョン攻略!?」


「プレイヤー同士で協力してダンジョン攻略は上のランクのプレイヤーにとっては当たり前のこと。まあ私たちみたいな低ランクプレイヤーがそれをするのはかなり珍しいと思うけど、ルール違反じゃないしね。とりあえず、近くにいた鬼灯に先に声を掛けたの。二階堂にはまだ話してないわ」


 ベスト4に残った4人でEランクダンジョン攻略。

 確かに上位ランクのプレイヤーは他のプレイヤーとパーティーを組んでダンジョン攻略していたりする。

 それもこれも単独では攻略できないくらいに難易度が高いからだ。

 Eランクダンジョンは単独でもクリアできるダンジョンだ、一応。


「あれ、3人って仲良かったの?意外な組み合わせだな。俺も輪に混ぜてくれよ」


「あ、二階堂ちょうどいいところに来た。あんたにも話を持っていこうと思ってたのよ」


「ん?」


 姫島莉菜とオリヴィア・ブラウンは二階堂郁斗に全く同じ話を持ちかけた。

 4人で一緒にEランクダンジョン攻略をしようと。


「いいな、それ!めっちゃいい!俺もEランクダンジョンはちょっと…じゃないな。かなり苦戦しててさ。このままじゃタッグEトーナメントに間に合わないって焦ってたとこなんだよ」


 笑い飛ばしながらすごいことを言っている。

 あの二階堂郁斗ですらEランクダンジョンで苦戦している。

 それだけEランクダンジョンの攻略難易度が高いということだ。


「まあそこはお互い様でしょ?で、鬼灯はどうする?」


 どうするのか、そんなの決まってる。


「俺もお願いするよ」


「オッケー!これで決まりね。今日はもう遅いし、明日から早速Eランクダンジョン攻略に取り掛かりましょ」


「はい!明日が楽しみです!」


「それで構わないけど、どのEランクダンジョンを攻略するつもり何だ?」


 この話で最も大事な部分。

 二階堂郁斗の質問にもあるどのEランクダンジョンを攻略するつもりなのか。

 Eランクダンジョンと言っても攻略難易度が高いところから低いところとある。

 それにモンスターの相性もある。

 一体どのEランクダンジョンを攻略しようと考えているのか。


「『』よ」


「ゆ、ゆ、『遊楽園ゆうらくえん』!!?」


「『遊楽園』の攻略とか正気の沙汰じゃないぞ!本気で言ってるのか?世界難関ダンジョンの1つだぞ!」


「当たり前じゃない。私たち4人ならできる。このトーナメントを通じて私はそう確信した。それにオリヴィアもこの4人ならって乗り気よ」


「うんうん」


「マジかよ…」


 『遊楽園』の攻略。

 この4人なら普通のEランクダンジョンなら攻略できそうだけど、『遊楽園』となると話は大きく変わってくる。

 『遊楽園』はランク変動型ダンジョン。

『Let's Monster Battle』はARゲームであるが故に大きな問題がある。

 現実世界にゲームをする為の専用施設を用意しないといけない。

 特にダンジョンは各ランクごとに用意する必要がある。

 しかし、現実世界にそこまでの土地はない。

 そこで誕生したのがランク変動型ダンジョン。

 このダンジョンはプレイヤーランクに応じてモンスターの強さなどの難易度が自動的に変わる。

 その為、パーティーを組んで攻略する場合はパーティーの平均ランクで難易度が自動的に設定される。


 これが『遊楽園』となると少し話が変わる。

 変動型ダンジョンなので、本来ならEランクプレイヤー4人で挑めばEランクダンジョン相当の難易度に設定される。

 しかし、『遊楽園』はランク詐欺と言われている変動型ダンジョンの1つ。

 とにかくモンスターが強く、推定難易度は平均の1つ上のランクに相当する。

 つまり、Eランクプレイヤー4人で挑めば、推定難易度はDランクに相当する。

 同ランク帯のダンジョンですら攻略するのはかなり大変なのに、『遊楽園』は1つ上のランク帯のダンジョンを攻略しろと言っているようなものだ。

 それに加えて『遊楽園』は世界難関ダンジョンの1つに認定されている。

 ダンジョンギミックが推定Bランク相当だからだ。

 あまりにも理不尽過ぎて誰も挑戦しないダンジョンとして有名だ。


 それでも『遊楽園』を単独で攻略したEランクのプレイヤーが過去に1人だけいた。

 この前代未聞の偉業を成し遂げたのは、白黒学園の卒業生にして世界にその名を轟かす日本が誇るプロプレイヤー。

『Let's Monster Battle』において現最強のプレイヤー。

 12神 序列1位 新垣あらがき輝夜かぐや



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後書き失礼します。

ゴールデンウィークに1日2話投稿を実施しようと思います!

期間としては私の都合上、5月3日~6日の4日間とさせていただきます。

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