無限の可能性 進化と退化の軌跡 Let's Monster Battle

夕幕

第1章 昇格と準備期間

第1話 初めての召喚

『さあ、白熱したバトル!世界最強のプレイヤー12神、その序列1位と2位のバトル!!どちらが勝利の栄光を手にするのか目が離せません!』


『ヴィレ、天魔彗星てんますいせい!』


『ドレイク、ブレイクノヴァ!』


 ライオンの姿をした獣人型モンスターと2本の角と翼が生えた人型モンスター、この2体目のモンスターが激しくぶつかり合う。


「かっけえ!」


 俺はテレビで観たこの世界最高のバトルをきっかけに『Let's Monster Battle』をやりたいと思い始めた。





 ついに俺も高校生になって手に入れたぞ、ARゴーグルを。

 これで夢にまで見たARゲーム『Let's Monster Battle』がやれる。

 早速、購入したばかりの『Let's Monster Battle』アプリをスマホにダウンロード。

 ダウンロードが終わったらARゴーグルと連動させて、準備完了っと。

 これで思う存分『Let's Monster Battle』を遊べる。

 ちょうど今日は土曜日だからがっつり遊び尽くせるぜ!

 ということでARゴーグルを装着して、アプリを起動すると早速、チュートリアルを行うかどうかの選択ウインドウが目の前に表示された。

 これがARか。何か新鮮だな。

 もちろん、チュートリアルは行う。


「『Let's Monster Battle』の世界へようこそ。私はチュートリアルでの説明を担当するナビゲーターのナビ子です。短い時間ですが、よろしくお願いします」


 目の前が光り出したと思ったら小さな掌サイズの妖精が現われた。

 この子が噂に聞くナビゲーターのナビ子ちゃんか。


「では、まず『Let's Monster Battle』がどういったゲームなのか簡単に説明させていただきます。このゲームの特徴は無限の可能性を秘めていることです。プレイヤーはモンスターをゲットして育成し、自分だけのモンスターを作り出すことができます」


 そう、それ。

 このゲームの一番の魅力!

 作り出すって言い方は個人的にあまり好きじゃないけど、自分だけのモンスターを作り出せる。

 まあ育成できるかな。

 今からどんなモンスターを育成できるのか楽しみだな。


「モンスターはLvが10の倍数になる、もしくは特殊な条件を満たした場合に進化させることができます。進化したモンスターはLvと割り振ったSPがリセットされます。ただし、スキルLvはリセットされません」


 このゲームのちょっと特殊なとこだな。

 モンスターを進化させるとSPを振り直せる。

 例えば、物理攻撃特化で育成していて進化させたら魔法をある程度覚えてしまった。

 だから魔法も最低限使えるようにステータスを振りたいとなっても、普通のゲームだと一からSPを貯め直して振り分ける必要がある。

 でも、このゲームは今まで振ってきたSPが全てリセットされて振り直せる。

 あとは純粋にSPの振り分けに失敗しても進化させたらやり直しができる。


「そして進化させるかはプレイヤーの自由です。進化する=強くなる訳ではありません。進化したら逆に弱くなる、つまり退化してしまうケースもあります」


 ナビ子ちゃんの話にある通り、このゲームの難しい所は進化したらモンスターがクソ雑魚になることがある。

 俺の知っている例だと、最強種の竜を普通に育成してLvが10になる度に進化させていたらただのトカゲになったとかだ。

 下手な育成だとドラゴンから一般種準最弱のトカゲに退化してしまう。

 ちなみにこれをやった人はこのトカゲを泣く泣く売却したらしい。

 かわいそうに。

 俺も気をつけないと。


「また、進化以外にも合成というものがあります。これはモンスターの特性や特徴を一方のモンスターに無理矢理合成することです。注意点としてはこの時、合成素材として使用されたモンスターは消滅する点です。合成は上手くはまれば格段にモンスターを強くしますが、失敗すれば目も当てられない結果になるので、行う場合は注意してください」


 これには結構有名な話がある。

 準最強種の天使と悪魔の合成したら、最弱のモンスター原人になったというやつだ。

 原人は人類種というカテゴリーに属しているモンスターだが、基礎ステータスは全て最弱のオール1。

 プレイヤー間では天使と悪魔の合成は禁忌とされるくらい原人は弱く、使えないモンスターとして知られている。

 ちなみにトカゲと原人ならトカゲの方が圧倒的に強い。


「それからプレイヤーにはランクがGからSまであります。ランクを上げる方法はヘルプに記載されているので、そちらをご確認ください。ゲームに関する簡単な説明は以上です。続いてあなたのプレイヤーネームを教えてください」


鬼灯ほおずきれん


「鬼灯蓮ですね。登録しました」


 このゲームはちょっと特殊で本名をそのまま登録する人が多い。

 俺もその一人だけど。

 ゲーム自体はガチ勢とエンジョイ勢に別れて、俺はエンジョイ勢。

 ガチ勢はモンスターをガチ育成してトーナメントで優勝を目指して頑張るってスタンスが基本だ。

 ガチ勢の大半はプロを目指しているからトーナメントで優勝したり、実績が必要になる。

 そして大事になるのはトーナメントに出場するにはプレイヤーネームの登録を本名にしないといけないってことだ。

 本名以外だと出場できない。

 俺みたいなエンジョイ勢はガチ勢みたいにプロを目指している訳ではないが、途中からプレイヤーランクを上げる為にはトーナメントに出場しないといけない。

 プレイヤーランクが低いとモンスターの上限レベルに制限が掛かる。

 それもあって殆どのプレイヤーは本名を登録している。


「次に最初のモンスターを召喚してみましょう。最初だけ特別に召喚石を一つプレゼントします」


 ついにモンスターを召喚する時がきた!

 この召喚石はランダムでモンスターを召喚できるアイテム。

 ゲーム内ショップでポイントを使用して購入する以外の入手方法は基本的にこれしかない。

 ランダムなのでソシャゲのガチャに近い。

 当たりは最強種の竜種や準最強種の幻想種、天使や悪魔だ。

 ただ最強種や準最強種はかなり確率が低いので、一般種最強の恐竜が当たれば文句なしの結果と言えるだろう。

 他のゲームならリセマラとか考える人もいるけど、このゲームではなかなか難しい。どれだけの時間が掛かることか。

 だから俺は最初に召喚したモンスターを手放すことなく、ゲームを進めると決めている。

 早速、俺の前に現われた『召喚石を使用しますか? はい いいえ』のウインドウ。

 おれはもちろん「はい」を選択する。

 するとウインドウは消えて、代わりに魔法陣が部屋の床に現われて、光り輝き始めた。

 徐々に魔法陣の光が収まり、1体のモンスターが姿を現した。


 プヨン。

 水色の球体がプヨンと揺れている?

 何かプヨンプヨンしているこの謎の球体。

 こんなモンスターいたかな?

 わからん。

 レアなモンスターとかかな?


「おめでとうございます。無事にモンスターの召喚は成功しました。あなたの最初のモンスターはスライムです」


 え?スライム?

 スライムって一般種最弱モンスターだよね。

 攻撃と素早さが最弱のモンスターだよね。

 嘘だろ・・・。

 さすがにエンジョイ勢の俺でもこれは落ち込むぞ。

 いや待てよ、そこは考え方次第かも。

 ガチ勢みたいにプロ目指している訳じゃないし、このスライムを俺だけのオリジナルモンスターに育て上げるのはどうだ?

 それなら面白そうだしいいか。

 よし、気を取り直してこのスライムと頑張ろう!


「これにてチュートリアルを終了とさせていただきます。最後にチュートリアルのクリア報酬としてランダムスキルの書を一つプレゼントします。それでは『Let's Monster Battle』の世界を楽しんでください」

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