第8話 人民を助ける勇者!



 ゲータ・ニィガ王国にカチコミ! のはずが……。

 障壁が僕らを阻んでいた。


 邪魔な障壁を蠅王宝箱ベルゼビュートで収納したところ……。

 なんか、王国の人にほめられちゃった。なんでかなぁ~?


 で、だ。

 けが人を治したので、さっさと先に進もうとしたんだけど……。


「何があったのでござるか、皆さん?」


 オタクさんが、元けが人たちに話を聞いていた。

 僕は早く先に行きたいんだけど、オタクさんの邪魔はしたくないので、黙っておく。


「実は、先日急に国内で魔物が発生しまして……しかも、大量に」

「なんと!? 魔物の大量発生……モンスターパレードでござろうか?」


 モンスターパレード?

 なんだろう、楽しそう。


『モンスターパレードって言うのはね、魔物が大量に発生し、人里に集団で降りてくる現象のことを言うんだ』


 とヒキニートさん。

 無駄に長く生きてるからか、いろんなこと知ってるのね。


『でもあれって、森の食糧不足が原因で、人里に降りてくるんでしょ? 今の時期って寒くないし、食糧が不足するってことはないんじゃない?』


 冬ならいざしらず、今は暖かいもんね。

 食料が足りないことはないか。


「さようでございます。だから、みんなどうしたんだろうって……不思議がってまして」

「原因不明の魔物の大量発生でござるか……それは大変でしたな」


 民の人に寄り添うオタクさん、まじかっけー!


『王様はなにしてるんすかね? 国民が困ってるのに』


 ジャガーさんが不思議そうに首をかしげる。

 でも僕、オタクさん、ヒキニートさんの三人は……全然不思議に思っていなかった。


 だって、ここの王様……というか、女王が、酷い人物だってことはわかってるからね。

 どうせ、民が困ってても放置だろう。とんでもないやつだなっ。


 まあ、だからといって僕には関係の無いことだけども。


「魔物の発生に困って、王も何もしてくれないのであれば、国外に逃げる手もあったのではござらんか?」


 オタクさんの問いかけに、国民さんが言う。


「逃げようとしました。ですが、そのときには障壁が国を覆っており、逃げられなかったのです。この障壁は、どうやら人間だけを阻むようでして……」


 あらら。

 じゃあ、大変だな。魔物が追いかけてくるのに、逃げられないんだもん。


「それは災難でござったな……」

「オタクさん、話もう終わりました? じゃあ、行きましょ」


 僕はさっさと経験値を稼ぎたいんだ。 

 さっき飛竜ワイバーン倒して、死体を吸収したんだけど、ぜーんぜん経験値にならないの。


 もう魔物ごときじゃ強くなれないんだなぁ。

 やっぱり魔族か、廃棄神はいきしんか。いずれにしろ、強いやつと戦って、経験値くびとらないと。


 すると、オタクさんが真面目な顔で言う。


「啓介殿、ここでいったん分かれましょう」

「え~~~~~~~~~~~~~~~~!? なんでぇ!?」


 なんでオタクさんも一緒がいいのにっ。


「拙者はこの人らを連れて、一度、マデューカス帝国へ向かうのでござる」

「えー? なんでですか?」


「ここにいては、また魔物に襲われてしまうでござる。だから、マデューカスへ連れて行き、保護してもらうでござるよ」


 うぅ~……オタクさん、そんな人たちほっとけばいいのに。

 ほんと……お人好しなんだからっ。


『けどオタク君。こっからマデューカスまでそこそこあるよ?』

「はい、なので、ジャガー殿、背中に乗せてほしいでござる」


 ジャガーさん結構おっきいもんね。


『了解っす! 非難優先っすよね。ここにいたんじゃまた飛竜ワイバーンとか、ほかの魔物に襲われちゃうでしょうし』


 えー……ジャガーさんまでこの人らかまうの?

 この人たちって、僕とオタクさんに酷いことした国の、民だよ?


 救うギリがあるとは正直思えないんだよなぁ~。


『オタクよ。非難するなら急いだ方が良いのじゃ。障壁が、復活しだしたのじゃ』

「なんと!? 啓介殿が取り払ったはずの障壁が!? 再び!? どういて!?」


 ヒキニートさんが考察を述べる。


『おそらく、障壁の発生装置がどこかにあるんだろうね。それを壊さない限り、障壁が生まれ続ける』

「なるほど、元となる装置を破壊しないかぎり、障壁は何度も発生するのでござるな……やっかいでござるな……」


 障壁は思ったより早く、復活してしまう。

 まあ、僕がサクッと障壁を取り込めば良いだけの話だけど……。


『む! ケースケよ、また魔物じゃ』

「え~~~~~~~~~~~~~~」


 次から次に、面倒ごとやってくるぅ。

 も~~~~~~~~~~~! めんどい!


 こうなったら……。


「【絶対結界】!」

『ほぅ、我を閉じ込めていた、絶対結界スキルじゃな。たしか七獄セブンス・フォール内で習得ラーニングしておったな』


 僕がカバンをがばっ、と開けると、そこから光が放出される。

 光はドーム状に広がっていき、結構な大きさの結界を瞬時に構築した。


大灰狼グレート・ハウンドの群れじゃな』


 集団で行動する、でかい狼の群れが、こちらにやってくる。

 が。


 ガキィイイイイイイイイイイイイイイイイン!


「おお、見ろ! 勇者様の結界が、魔物の侵入を防いだぞ!」

大灰狼グレート・ハウンドって確か結構強い魔物だろ?」

「あいつらの攻撃を受けても、全然びくともしない! なんて強固な結界なんだ!」


 よし、絶対結界が、敵を阻んで居るぞ。


「あなたたちは、この中でおとなしくしておいてください」

「「「!?」」」


 オタクさんに出て行かれると、やだもん。さみしいし。

 なら、この人らには、ここで待機してもらっていた方が良い。


「魔物がこちらに襲って来るのって、敵側のテイマーの仕業なんですよね? ならさっさとテイマーやっつけたほうが、早くないですか?」

「! そうか……対症療法ではなく、根本治療をということでござるなっ?」


 何言ってるのかわからないけど。


「多分それです!」


 ほんというと、オタクさんが人を避難させるために、行ったり来たりする手間、そして障壁をその都度破る手間をかんがえると、この人らにはこの場から動かないでもらったほうがいい……。

 と思ったのだ。


「聞いたかっ?」「ああ、勇者様が魔物を鎮めてくれるって!」「あんなに小さな勇者様が?」「ばっかみなかったんか、飛竜ワイバーンを一撃で倒すほどのすごいお方だぞ!」「しかもこんなすごい結界まではれるすごい人なのだっ」「きっと魔物をやっつけてくださるわ!」


 みんななんか、妙にキラキラした目を僕に向けてくるんですが……。

 なんでだろ?

(※啓介が、魔物から人々を守るために、発生原因を調査しに行く、優しくて強い勇者に見えているからです)


 ま、どうでもいいや。


「啓介殿、結界ほんとうにありがとうでござる」

「いえいえ! さ、ほら行きましょう」

「待つでござる」


 うぇ~……またぁ~?

 正直もうさっさと行きたいんだけど……。


 呼び止めたのがオタクさんじゃ無くて、ヒキニートさんだったら、問答無用で無視してさっさと去って行っただろう。

 けど相手はオタクさんだ。友達の言うことは聞いてあげたい。だって……僕とオタクさんは大親友だもんね!


「結界のなかにいるあいだ、この方たちが食べる食料を、譲って欲しいのでござる。お金はこの通り」


 オタクさんがアイテムボックスから、革袋を取り出して、僕に渡してくる。

 食料……つまり、取り寄せカバンで、食料を取り寄せて欲しいってことか。


 あのスキルにはお金がかかる。

 だから、その分の金を、オタクさんが出してくれる……ってことらしい。


 ……ううん、すごい。

 オタクさん、こんな無関係の国の人たちのために、自分のお金を削ってあげるなんて。


 慈悲深い~。


「わかりました。じゃあ、適当に食料出しますね」


 僕はカバンの口を開けて、上下逆さにする。


 ドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサ!


「おお、すげえ!」「なんかいっぱいでた!?」「なんだこれ!?」「食料か……?」「なんだか美味そう!」


 地球から、比較的保存の利きそうな食料を大量に取り寄せた。


「ありがとうでござるよ、啓介殿!」

「いえいえ」


 見ていた人たちに、オタクさんが言う。


「啓介殿が、皆さんに食料を取り寄せてくれたでござる」

「「「おぉおおおおおおおおお!」」」


 なんで歓声を上げてんだろ、この人ら……?

(※↑啓介が、国民のために自ら進んで、自分の食料を分けた、と思っているからです)


「皆さん、我らはこれより、敵の本拠地へ乗り込んで、この異常事態の原因をつぶしてまいります! なので、どうか……それまでは、お辛いでしょうが、ここで待っていてほしいでござる!」


 オタクさんが皆さんに言う。


「わかりました!」「よろしくお願いします勇者様!」「勇者様の結界があれば安全!」「食料もあるしね!」


 うーん……長い。長いよぉ。さっさといきたいのにぃ~。


「あとは……鳳の矢フェニックス・ショット!」


 オタクさんが頭上めがけて、魔法矢を放つ。

 炎の矢は途中で、火の鳥に変化し、結界内を旋回する。


「上の鳥は、鳳の矢フェニックス・ショットといって、敵が近づくと自動迎撃してくれるでござる。また、危機を感知すると、拙者に情報を知らせてくれる仕組みでござる」


「「「おおお!」」」


「これなら、皆さん安全でいられるかと思うでござる!」

「「「ありがとうございます! 勇者様のお仲間様!」」」


 勇者様おたくさんのお仲間ともだち……?

 僕か。


 いやまたなんで僕に感謝してるんだろ、この人たち。

 どう考えても感謝するべきはオタクさんでしょう。


 なに、サイコパスなのこの人たち。

 もぉ~


『いや、啓介君。それは君だよ、君』

「黄身? 卵の?」


 ヒキニートさん何言ってるだろ?

 戯言?


「大変お待たせいたしました!」

『ほんと、オタク君って立派に勇者してるんだね』


「いやいや、拙者なんて全然。啓介殿のほうが勇者してるでござるよ?」

『君の目は節穴なのか……?』


「いえ、勇者とは、強大な力で人々を守るもののこと。拙者の力は……勇者と呼ぶには弱すぎるでござるよ……」


 うーん、そんなこと無いと思うけどね。

 オタクさんも結構強いと思うし、


『君は確かに啓介君と比べると力は無いけど……それでも、立派に勇者してるよ』

「はは、ありがとうでござる、セーバー殿!」


 むぅ~。ヒキニートさんと仲良くしてっ。

 オタクさんは、僕とだけ仲良くしてればいいのにっ。


「ほら、いきましょ!」

「「「いってらっしゃいませ、勇者様!」」」


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新作投稿しました!

よろしくお願いします!


スキル【無】の俺が世界最強〜スキルの無い人間は不要と奈落に捨てられたが、実は【無】が無限に進化するSSS級スキルだと判明。俺をバカにした奴らが青ざめた顔で土下座してるけど、許すつもりはない

https://kakuyomu.jp/works/16818093077186767881

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