第6話 それは、魔法の呪文。

 とりあえず、ここまで続けてお読み頂いた方には、重複するのだが、まだ初読の方へ向けて、これまでのお話をおさらいしよう。


 三高みたか 生男いくおという男がいた。どこにでもいる平凡な男だ。付き合っていた恋人の美里みさとへ究極のプロポーズを考えた結果、『全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れ』の背に乗り、待ち合わせ場所で待つ美里の前を通り過ぎるまで『3分間』のプロポーズを行った【KAC20241】。

 そして、晴れて婚約者となった美里と新居の『住宅内見』に行ったところ、押し入れに異世界ダンジョンがある住宅を見つける【KAC20242】。

 異世界ダンジョンでの冒険の日々にのめり込んでいく二人だったが、ある日、『開けちゃダメ。』と書かれた宝『箱』を発見し、中を見ると魔王の中二病的な日記が出てくる【KAC20243】。

 魔王の存在を知った二人は、勇者になり代わり、魔王城へと向かうが、生男が魔王の城にある大穴に落ちてしまったことで、幸せな日々は、突然、終わりを告げた。七歳になる娘を抱えながらシングルマザーとして働いていた美里は、職場の後輩である松本から、『ささくれ』た指先ですら美しいと好意を寄せられる【KAC20244】。

 娘との日常の中で生男を忘れようとするが忘れられない美里を想い、松本は『探しに行きましょう。旦那さんを』と告げた【KAC20245】。



 美里は、深呼吸をした。目の前には、ガムテープで封印された襖がある。『開けちゃダメ。』と書かれた張り紙を無視して、ガムテープを剥がし、襖を開ける。そこには、封印前と変わらず、異世界ダンジョンへと続く扉があった。


「本当にいいの? 死ぬかもしれないよ」

「旦那さんの死体でも見せなきゃ、美里さんは、俺と結婚してくれないからね」


 松本の言葉に、美里は救われた。


「装備を整えなきゃね」


 美里は、『トリあえず』の呪文をかける。

 美里は魔法使い、松本は剣士の姿に変わる。


「行こう。生きるために」


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