第2話 魔王様、決意する。
「本日の業務もお疲れ様でした。後片付けの方は私の方でやっておきますので、あとはお休みになられてください。」
結局あれから一日中、ひっきりなしにやってくる勇者どもの相手をし続け、へとへとになった俺を見て申し訳なさそうにするでもなく、淡々とシルヴィは片付けを始めた。
「…どうして魔王であるはずの俺が、こんな単純作業のつまらない業務を毎日こなさなきゃならんのだ…。」
「魔王様だって最初の頃は楽しそうにしてましたよ。まあ、50回を超えたあたりで流石に顔から悲壮感が漂い始めて、100回を迎える頃には真顔で即死呪文ブッパするようになってましたけどね。」
「…だってよぉ、アイツらバカなんだもん。しかも、信じられないくらい。何度も何度も同じ手を喰らうし、流石に今回は対策してきたかと思ったら、防御に全振りしてるせいで攻撃手段なくて、闘う前から詰んでるし、話にならん…。弱すぎるんだよ…。」
「まぁ、彼らのレベル的にそれはしょうがないとは思いますけどね。攻撃のステも防御のステも、片方に全振りしてギリ魔王様に通用するかもってくらいの数値ですから。」
「いや、そもそもそれもおかしいんだよ!!!!!
何でアイツら毎回負けてんのにレベリングしてこないの???バカなの???それかマゾなのか???
何しにここに来てんだよ!!意味わかんねーよ!」
「なんでも、縛りプレイ?ってのをやってるらしいですよ。何度でも復活する力を得た代わりに、レベルが上がらないという代償を神に背負わされたみたいです。」
「だとしたら神もバカやろーじゃねーか!!!!!
何であんなステータスで勝てると思ったんたよ!!
あんなんじゃ何回向かってこようが勝てるわけないだろうが!!!!少し考えたらわかるだろ!!!」
「魔王様が手心を加えなければ、ですけどね。」
シルヴィがボソッと呟いたそのセリフを聞いて、俺は頭を抱えてため息をついた。
「…どこの世界に勇者に"わざと"負けにいく魔王がいるんだよ…。そんなの、俺の美学が許さない…!
絶対にアイツらには、実力で俺を倒してもらわにゃならんのだ…!!!」
シルヴィはそんな俺をみて、やれやれといった感じで「相変わらず変なとこで頑固なんですから」と、小言を言ってきた。
「だいたい、もし仮に俺がいまアイツらに倒されでもしたら魔界はどうなる!?あのあんぽんたんどもに魔界の統治がこなせるのか!?!?ぜっったいに無理だろ!!!すぐに魔界の秩序が崩壊するぞ!」
「それはそうでしょうね。と言うか、実際問題魔王様以上にこの魔界をコントロールできる存在は今のところいないでしょうから、彼らじゃなくても厳しい話ですよ、それは。」
「だろう???それなのにアイツらときたら…!!
…???」
急に喋りを止めた俺を見て不思議に思ったのか、シルヴィが「どうかしましたか?」と話しかけてきた。
「アイツら…そもそも何が目的で俺と戦ってるんだ…???」
「そりゃあ、勇者が勇者で魔王様が魔王様だからでしょう。」
シルヴィが何を今更と言わんばかりに、直球の正論をぶつけてきたが、俺は構わず続けた。
「だって、考えてもみろよ?俺がこの魔界を統治し始めてから魔物が無差別的に人間を襲うってことも殆ど無くなったわけだし、コントロールのしにくい知能の低い魔物達だって人間達の街からある程度遠ざけた所に住まわせたお陰で、人間側の被害も魔物側の被害も最小限と言っていいほどに抑えられてるはずだろ?論理的に考えて、俺を倒す理由がどこにもないじゃないか!」
シルヴィは、俺の問いかけには何も答えず「お茶を入れてきますね」とだけ言って部屋を後にした。
「…俺は決めたぞ。次にアイツらに会ったら、とことんまで語り合ってやる…!!!こんな終わりの見えないゆるーい地獄みたいな日々を終わらせてやるぞ…!今度こそ…!!!」
to be continued...
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます