第45話 超弩級艦『土佐』の射撃システム

ー第二航空艦隊旗艦・戦艦『土佐』防空指揮所ー


戦艦『メリーランド』の爆沈を確認した遠藤は、靖田に次の指示を出した。

「靖田、次の目標は先頭にいるコロラド級戦艦だ。ただし、ワザと射撃をずらして沈めない様にしてくれ。」


遠藤の指示内容に戸惑う靖田だったが、すぐに砲術長に連絡した。

だが、すぐに靖田から報告された。

「あの・・・、高村砲術長が抗議してきましたが・・・。」

遠藤は靖田に代わり、戦艦『土佐』砲術長の高村彰中佐と話した。

「代わった、遠藤だ。」

すると、すぐに、

「若大将っ!!何故、先頭のコロラド級戦艦を撃沈しないのですかっ!!」

と高村が怒鳴ってきた。


元々、高村は、戦艦『山城』の砲術長を務めていたが、長門型と伊勢型の改装の中で扶桑型は老朽化している事から、空母の改装も不可能と判断されて『山城』と『扶桑』は廃艦が決定された。


船体の一部は解体後に、『土佐』の建設に資材の一部として回され、乗組員達は他の艦艇に配属される中、『土佐』にも回された。

高村も、その一人だった。

高村は、砲術長としても評価が高かったが、『山城』の廃艦が決定した直後には一時、退役を考えていたが、遠藤が高村を説得して『土佐』の砲術長に抜擢した。


高村は、木村みたいな人物評価だが、納得しないと相手が誰であっても引き下がらない人物でもあった。

だからこそ、『ウェストバージニア』を沈めない遠藤の考えに納得しなかった。


そんな高村に、遠藤は、

「高村が言いたいのは分かるが、あの艦には敵将のキンメルが乗っていると思われる。」

キンメルがコロラド級戦艦に乗っているという情報は、遠藤の諜報員がギリギリで遠藤に報せていたからだ。

また、キンメルが旗艦にしているコロラド級戦艦には、マストに将旗が掲げれているのも確認されている。

「だったら・・・!!」

尚も食い下がろうとした高村に対して、遠藤は、

「高村、落ち着けっ!!敵将を敵艦ごと沈めるだけでは駄目な事もあるっ!!」

と一括した。


遠藤の言葉に高村が一旦、落ち着いた後で遠藤は続けた。

「今回は、敵将のキンメルには生きてアメリカ本国に、我々の存在を世に知らしめてもらう必要がある。その為に、旗艦となっているコロラド級戦艦は、撃沈はしないが、戦闘不能にする。高村ならば、そういう芸当は出来だろう?」


遠藤の言葉に、高村は即座に答えた。

「そう言う事ならば、了解しました。戦闘不能にするくらい、朝飯前ですっ!!」

高村の言葉に遠藤は笑みを浮かべながら、指示した。

「改めて、指示する。高村砲術長、先頭のコロラド級戦艦を戦闘不能にしてくれっ!!」

それに対して、高村は「お任せ下さいっ!!」と速攻で答えた。


そして、『土佐』の50cm連装砲塔4基の砲身が『ウェストバージニア』に向けられた。

直後、8門の砲身が火を噴いた。


『土佐』から放たれた砲弾は、キンメルの座乗する旗艦『ウェストバージニア』にいきなり直撃弾として3発が着弾した。

これは、『メリーランド』と距離が離れておらず、照準の修正が必要なかったからだ。

その瞬間、凄まじい衝撃と共に激しく船体が揺らぎ、高い水柱が幾つも船体の周囲に生じると同時に激しい衝撃で船体が揺れた。

凄まじい衝撃により、キンメル達も思わず床に倒れた。


すぐに我に帰ったキンメルが、被害状況を確認した。

「今の砲撃で、前部の2番砲塔と後部4番砲塔が被弾の上大破っ!!使用不能ですっ!!」

「機関部の一部が損傷っ!!速力が17ノットに低下しましたっ!!」

次から次へと届く被害状況に愕然としていたのはキンメルだけでなく、『ウェストバージニア』の艦長達も同じだった・・・。


「これが、20インチ(50cm)の威力なのか・・・!?」

キンメルの言葉にスタッフ達も、皆の表情は顔面蒼白であった。

ここで、マクモリス主席参謀が疑問に思った。

「しかし、何故、ここまで敵艦の砲撃が上手くいくのでしょうか?普通は何回か砲撃して修正してから、ようやく至近弾なのに・・・。」


それに対して、スミス参謀長が仮説を立てた。

「もしかして、日本はドイツからレーダー射撃装置をっ!?」

彼の言葉に、皆が黙り込んだ・・・。


スミス参謀長の仮説は『ある意味』、間違っていなかった。

遠藤は、ドイツから購入した『FuMO24射撃統制電探』を徹底的に改修。

この装置を距離測定専門に使い、一方で方位は光学照準装置によって計測するシステムだ。

史上初の電探と光学照準システムを併用した射撃装置だった。

その新たな試みである射撃システムを、遠藤は戦艦『土佐』に組み込んだのだ。


「まさか、電探と光学照準システムを併用した射撃システムとは、アメリカ側も思っていないだろうな・・・。」

遠藤の画期的なアイディアに、靖田は言葉を失っていた・・・。

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