最強の竜種の中でも最弱の緑竜に転生したけど努力と根性で最終進化!いろいろあって朋友の墓守して幾星霜、久しぶりにまったり冒険者生活満喫したい。
第26話 翡翠竜達は塩漬けになっている依頼を調べて受注する
第26話 翡翠竜達は塩漬けになっている依頼を調べて受注する
「受注可能ランクは高くなく、塩漬けになっている依頼を教えてくれないか?」
俺は先程入手した冒険者ギルドカードを机の上に出して、依頼窓口の受付嬢に訊いた。
俺とユグドラ、マリア、ファーナの4人は冒険者ギルドマスターの執務室を後にして、冒険者ギルドのメインフロアに戻ってきていた。俺達が後にしてきた冒険者ギルドマスターの執務室は混乱しているだろうが、俺には関係ないな。
(明日辺り面倒なことになりそうね。まさか、冒険者ギルドカードの救命に役立つ機能についても伝わらない様にされていたなんて……)
ユグドラが念話で嘆いた。
俺が造った冒険者ギルドカードは元々、便利機能を満載している魔導具だ。緊急時のSOSコール機能や試行錯誤を繰り返して、前世のMMORPGで便利だった機能の再現に成功した【フレンドリスト】や【ウィスパー】機能、パーティーを組むことで使えるようになる【共有アイテムボックス】等をもたせている。特にダンジョン攻略中で1日1回という制限はあるが、帰還地点を登録することで、所持者の命が危険な状態になると強制転移させる【緊急退避】機能も備えている。
今も広く知られていれば、助かっていた冒険者がいたかもしれないが、生憎、ここの冒険者ギルドマスターやベテラン冒険者といわれているジョージ、ファーナ達が知らなかったことから、俺が郷に引き篭もる前に大量に用意して、添付・配布した取り扱い説明書は散逸するか、奴等によって処分されたと思われる。
今後のことを考えて、俺は冒険者ギルドマスターとジョージを【フレンドリスト】に登録し、2人に【ウィスパー】機能を使ったメッセージの送信方法、【共有アイテムボックス】の使い方、【緊急退避】の帰還ポイントの設定方法を実演した。
そして、冒険者ギルドカードの取り扱い説明書をギルドマスターに5冊渡し、この依頼窓口に移動した。
後で知ることになるのだが、どうやら、自称賢者達が自分の部下となった冒険者達にしか便利機能の情報がいかない様に根回しをしていた様だ。この調子だと冒険者ギルドの中枢も奴等に牛耳られているのかもしれない。まぁ、そうなっていたら、遠慮なく潰して首を挿げ替えるだけだな。
「「「っ!!?」」」
(……ジェイド、殺気が漏れているわよ)
マリアとファーナ、頼んだ調べものをしてくれている受付嬢がビクッと反応したな。失敗した。
「ええっと……こちらの依頼がお問い合わせのあった長期間未完了になっている依頼です」
そう言って、受付嬢はおどおどした様子で依頼票をファイルから数枚出してきた。
渡された依頼票を一読する。主に清掃系の依頼が
「下水処理場の機能確認と清掃?」
俺は渡されたファイルの中から気になる
「なんで、この依頼が長期間未完了でここが空欄なんだ?」
この『下水処理場の機能確認と清掃』の依頼票の期限の欄は
「あれ? おかしいですね? 確認しま……「いや、俺達がこれを受ける。君は確認しなくていい」あの、そういう訳には……」
俺が途中で言葉を遮ったのもあって、受付嬢は不満そうに反論してきた。
「ちなみに、これまでこの依頼を受けた冒険者はどうなっている? 全員無事に帰還しているか?」
「……帰還24名、未帰還12名ですね」
俺と受付嬢のやりとりを横で聞いていた3人(正しくは2人と1匹)の表情が固くなった。
未帰還者が出ている時点で既におかしいが、その数が2桁超えている場合はギルド側が信頼と実力に申し分ない上位冒険者パーティーを派遣して解決するのに、未だに
余談だが、俺達がいる受付ブースは盗み聞き対策として音が外に漏れない様になっている。【盗聴】されていないのも確認済みだ。
「俺達が問題のこの下水処理場を見てきて、異常なく、依頼完了できれば問題ない。 君がこのことを周囲に確認する動きをすると、君の命が危なくなるかもしれないから、通常の手続き作業だけをしてくれればいい。ギルドマスターには俺から報告しておく」
俺がそう告げると受付嬢の表情は真っ青になった。
「え? なぜ、そうなるのですか?」
受付嬢とは対照的にマリアは頭を捻っている。
「もしかしたら、この依頼の状況はカーン辺境伯家に悪意ある連中、アーク侯爵家の仕業かもしれないからだ。領主からの依頼を放置し続けるのは通常はありえない。この類の依頼を無期限に設定することは余程の問題がある場合や、人為的なミス以外
俺は一応、声を潜めて受付嬢に私見を伝え、ファイルで不自然に空欄になっている前の依頼を担当した冒険者の安否を尋ねた。
「はい、あまりの悪臭に耐え切れずに途中で引き返してきたそうです。下水の悪臭が服にも染み付いてしまって、あのときは大変でした」
受付嬢は運悪くその状態の冒険者の対応することになったのだろう。当時のことを思い出したのか、受付嬢の両目は虚ろになって、彼女は死んだ表情でそう応えた。
「ギルド職員の中にアーク侯爵家のスパイがいる……かもしれないから、この依頼について、君は同僚や周囲に確認したりしない方がいい。最悪、人知れず消されかねない」
「そこまですることなのですか?」
受付嬢は俺の言葉を訝しんで、俺に疑いの眼を向けてきた。
「アーク侯爵家の悪辣な所業を考えれば、してきてもおかしくない。それに、目立ちはしないけれども、下水処理機能の不全は疫病の原因になり得るし、なにより、染み付くレベルのきつい悪臭がする場所に君達は住み続けたいと思うか?」
起こり得る最悪な未来を伝えた俺の問いかけに3人の女性は一斉に首を横に振って応えた。
「それから、この依頼の対象ランクがF、Eとなっているけど、この依頼はギルドの職員が現場の再確認をして対象ランクを再設定したのか?」
「??」
「2桁の死人が出ているみたいだから、まず間違いなく、魔物がいると思われる。もしかしたら、ランクFやEでは手に余る魔物が発生しているかもしれない。とりあえず、俺達が確認して、大丈夫であれば掃除してくる」
俺は【
マリアの経験という面でもこの依頼はプラスになるだろう。道連れとなるファーナの顔色も芳しくないが、それはご愁傷様だ。
カマをかけてみたが、この受付嬢の反応は完全に
おそらく、テオドールとクローディアに、この下水処理場の清掃依頼がまだ未完了であるということは伝わる途中のどこかで握り潰されているか、完了済みであるという誤報がされている可能性が高い。
俺はあらゆる可能性を【並列思考】で想定しながら、冒険者ギルドマスターにギルドカードの【ウィスパー】機能でこの件について報告し、受付嬢から下水処理場への道順をなど確認した。
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