第13話 夜〈???〉


「一応、ありがとうと、言っておきます。

 メッセージカードの呼び出しに応じてくれて。」


「まさか、そっちから来るとは思わなかったぜ?

 って、お前もしかして、さっき書庫にいたか?」


「よく分かりましたね、少しの間ですが。次はどの部分を読むべきか、自分で探したかったので。

 それはともかく。

 キミ、最初にこう言ったそうですね。聞きたいなら直接聞いてくれと。

 だから、聞きに来ました。」


「へぇ、何が聞きたい?」


「では単刀直入に。箱庭を出る方法を知っていますか?」

「お前……。なぜ俺がそれを知ってると考えた?」

「毎晩、調べているみたいなので。」

「魔力持ちの動きが追えるのか?」

「違います。単に、女官さんたちが教えてくれたんです。」


「やっぱりか、ある程度監視されてんじゃねーかとは、思ってたけどよ。どんな魔導具使ってんだか。

 ならお前、俺以外にも調べてる王子がいるのは分かってんだろ?」

「キミが一番、話が通じるかもしれないので。期待外れかもしれませんが。」


「期待外れとは言ってくれるな。」

「先に質問に答えてください。」


「箱庭から出たいのか?」

「……出なければなりません。」

「お前、何を知ってる?」

「儀式が終わらなければ、箱庭に閉じ込められるかもしれない。」


「閉じ込められるねえ?そんなら、箱庭をぶっ壊してやろうか。」


「キミ、すごいですね。その発想、ボクには思いつかなったです。」


「お前、おもしれー女だな。」

「あ、それはボク、要らないので。」

「は?」

「それは、各方面で大変よく知られている事例ですよ。例えば、ショージョマンガとか、ネットショーセツとか。」

「……は?」


「キミのような俺様タイプが、興味を示す女性像の一つです。

 まあキミのように、自信があって、能力も申し分なく、ついでにイケメンだったら、キミがいうところのオンナが群がってきますよね。

 そのオンナたちって、キミに気に入られたいあまり、キミの望むような行動をしがちになります。キミから見ると媚びているようにしか見えないかもですね。

 そんな中に、キミの予想を裏切るようなオンナが現れたら、興味を惹かれますよね。

 でもボク以外にも、探せばそういう女性は少なくないので、というか確実にいますので。そちらを探してください。」

 

「……お前、おもしろすぎるな。」

「それ、褒め言葉じゃないですよね。」

「気に入った。」

「気に入らなくていいので。」

「お前の意見は聞いてない。」

「それ、ボクに対して失礼ですから。」


 不意に、ケヴィン王子がボクの髪を手に取った。取られてしまった、長い銀の髪を。

 そこに落とされる口づけ。

 ケヴィン王子が顔を上げる、その獲物を狙うような視線。

 まさか、ボクがそんなものを体験するとは思わなかった……。



 その時。


「何の音だ?」

「光が!……割れてしまった。」

「分かるのか?」

「卵が割れたかもしれません。ボクたち、箱庭から出られないかも。」







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