第29話 船団対抗戦
船団対抗戦に出るメンバーが決まり、役職も決まったところでマッチングが開始。ぐるぐるとルーレットのような表示がスクリーンには映し出され、今回の対戦相手鯖は8鯖に決まった。8鯖の1位チームは『豪魔館』というチーム。RP勢が多く、なりきり勢が多数所属している。
アブダクションで生還出来なかった、サーバートップクラスのプレイヤーである椛さんもなりきり勢だったし、かなり独自色の強い鯖だ。椛さんもブラッドさんと同じく鯖を引っ張る存在だったけど、チームマスターじゃなかったのは幸い。
別の鯖の雰囲気とかは全然分からないけど、TAのランキングを見ると50人ぐらいが走っているね。そのうち46人のチームが豪魔館で、上位30人は全員豪魔館組。分かりやすい1強鯖だ。まあどこもかしこも最後はそんな感じだったけど。1つのチームにまとまった方が効率は良いし、旨味も大きい。
8鯖とは何度か対戦したことがあるし、相手のリーダーが変わってないのは戦いやすい。8鯖のリーダーはレミリャさん。とあるゲームの吸血鬼キャラらしいけど、本人は自分に似たカチ勢だから生半可な火力だと倒し切れない。吸血鬼キャラらしく、HP吸収が出来る装備で固めているから長期戦に強いんだよな。
今回のマップは、あらかじめ発表されていた◇形のマップ。上下の離れた地点に互いの本拠地があり、中央、北西、北東、南西、南東の5か所に大きな拠点がある。あとは東、北、南、西に2ヵ所ずつ小さな拠点があるだけだから、複数あるマップの中では一番単純なマップ。
チーム対抗戦は各拠点や相手を倒してポイントを削るイメージなのに対し、鯖対抗戦は各拠点を一定時間確保することでポイントを稼いでいくイメージ。一定時間確保すると各種バフを得られるけど、全てを一気に占拠は出来ないからかなり初動が大事。
そしてこの手のマップで最重要なのは中央の拠点の制圧なので、特攻係になった自分の役割は相手の先行隊と中央を超えた場所で接敵すること。相手の先行隊の中央到達が遅れれば遅れるほどこちらの中央制圧がやりやすくなるので重要な役目だ。
まあ向こうにも特攻係がいれば中央で特攻係同士の戦いになるけど……1人を犠牲にして中央を取りに行くのは29対30になるからして来ない鯖も多い。チーム対抗戦と同じく、戦場はVR空間なので当然死にません。これ死に慣れさせようとしてない?
[黒猫:グループチャットに乗り込めー]
[ゼル:わーい。
グループチャットも普通に使えるのね]
[ライト:よろしく]
[シャルル:皆様今回もよろしくお願いします]
[lie:豪魔館組かー。椛さん強かったのに……]
[ユリクリウス:今回の中央組って俺とライトさんとゼルさんだけですか?]
[シャルル:今回は南側なので北東と北西に圧をかけます。北東は中央組以外の幼女同盟の方で、北西側はふおにの森のメンバーで行きましょう]
[クロワッサン:生き残ったら自分も参加する@ユリクリウス]
[シャルル:あとらんらんさんもですよ@ユリクリウス]
「ユリクリウス:特攻係が生き残るな@クロワッサン」
グループチャットを作るけど、常にロリロリ言ってる幼女同盟組が真面目なチャットをしてるのはちょっと面白い。若干ふざけたチャットが多いのはもうどうしようもないけど、やっぱチーム外だと少しはまともになるよね。
ちなみにチャットに@を付けるとその人にのみチャットが赤く強調表示されるのでレスポンスに便利。チームチャットだとあまり使わないけどこういうグループチャットだと使うことになるね。
向こうの要注意プレイヤーはカチ勢のレミリャさんに、火力特化で爆発物の投擲が上手すぎる十六夜白夜さんと廃課金勢のアリスドールさんかな。特にアリスドールさんは椛さんと双璧で8鯖トップの課金額だったはず。年500万円溶かしているとか富豪かな?
試合が始まったので、まず飛び出すのは自分。途中の拠点や破壊することでポイントを得られるポイントターゲット、ポイントボールを全て無視して一直線に敵陣へ突っ込む。よし、敵に特攻係は居ないな。
中央の拠点のサークルだけは避けるように遠回りして、マップの上半分の領域に突っ込む。それからもしばらく北上すると、敵の中央組と接敵した。数は6人か。思っていたより少ない。
「相手はクロワッサンね!さいきょーの氷魔法を見せて上げる!」
「火力を一気に叩きこむわよ!」
「あなたは私が止める。時よ止まれ!」
ロールプレイ勢なだけあって、接敵したらRPし出す辺りこの人達普通にゲームを楽しんでいる感じだな。拘束スキルが飛んでくるけど、回避は可能。げっ、十六夜白夜さんがいる。
「氷札!えたーなるふぉーすぶりざーど!」
十六夜白夜さんの拘束スキルを回避したタイミングで、ダルノさんからヒョウカセンを受ける。氷属性魔法の必中攻撃で、弾着点に氷の華が咲くエフェクトは綺麗な技だ。うげっ、火力特化型の氷属性魔法は今の装備とレベルでも200ダメ入るのか。その後も次々と攻撃が飛んでくるので、反撃できるタイミングはない。でも、ここで出来るだけ粘るのが特攻係の役目だ。
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