第100話 不審の眼差し
扉の向こうから足音が近づく。
それを聞いたビアトロとアルザーは無言でうなずきあうと、松明の明かりを消し、部屋の壁に張り付くとビアトロはそばにあった樽を転がす。
樽は地面を転がり、近くにある別の樽に当たる。
「なんだ!誰かいるのか!」
勢いよく扉が開けられ、蝋燭を立てた持ち手付きの燭台を持った誰かが入ってくる。
その人物は燭台を掲げて部屋を見渡しているが、壁に張り付いていたビアトロがそっと扉を閉める。
と、同時にアルザーが、背後からその人物に忍びより、羽交い締めにする!
「な、なんだ!お前達は!離せ!」
「騒ぐな。返答次第では手荒な真似はしない。エーブルとユイールという名に覚えはあるか」
羽交い締めにしたまま抵抗を続ける人物に問いかけるアルザー。
と、
「な、なぜその名を!あんた、誰なんだ!あの二人を知っているのか」
二人の名を出すと羽交い締めにした人物は露骨にうろたえる。
そのさまを見た二人は無言でうなずきあう。
「手荒な真似をして申し訳ありませんでした」
日が落ちてしばらく後、酒場から活気が消えたあと、ようやくビアトロ達は地下通路から酒場の中に入る。
と言っても村人たちの目があるため、村人の目が届かない酒場の奥までしか彼らは立ち入らない。
「ケビックさん」
酒場の主はケビックという名でルアンスより多少は若いと思える人物。
農作業や葡萄酒の樽を持ち運ぶためか、体格は良い、だがこちらを睨む目は明らかに不審の眼差しである。
その顔を見たエーブルとユイールが安堵の表情を見せるものの、
「まさか、本当に戻ってくるとは」
その様に表情を和らげるもケビックの表情は完全には晴れない。
「あ、いや。長旅で疲れただろう。ここでゆっくり休みなさい」
「あ、はい」
そう言ってケビックは二人を部屋に案内する。
「あまり歓迎されてないな」
「あんなことされたんだから当然じゃない?」
リュレルがビアトロとアルザーを睨む。
それに対して苦笑いを浮かべるビアトロだが、アルザーは考える目をする。
「どうもそういうのとは性質が違うようだがな」
「どういうことよ?」
「ほどなく分かるだろう」
リュレルの問いにアルザーは
そんな中、二人を部屋に送ったケビックがビアトロたちのもとに戻ってくる。
だが、
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