第95話 地下洞窟に潜るビアトロ達
「アクレイさん、ビアトロさん」
裂け目の中から弓を手にしたルコレが姿を現す。
「皆は奥ですか?」
「ええ、手分けして探索を始めています。私は見張りを頼まれました」
そう言いながらルコレは裂け目の中を指差すと、黒々と口を開けている裂け目の奥に何かが光っている。
「皆さんはあそこにいます」
「では行きましょう」
「わたしはここで引き続き見張りをしています」
ルコレの言葉にビアトロはうなずくと、松明に明かりをともし、アクレイを伴い裂け目の中に入る。
裂け目の中は、はじめは柔らかな土で覆われたなだらかな坂であったが、次第に岩肌が露出し、傾斜もきつくなる。
日も届かなくなり、ひんやりとしはじめる中、二人はごつごつした岩を伝って慎重に下りていく。
下がるに連れて次第に上下の空間が広くなり、振り返って入り口が目線の高さのはるか上になる頃には、頭上に松明を掲げても天井の様子が見えないほどであった。
時々、彼方から雫が滴り落ちて跳ねる音が聞こえる。
しばらく進むと裂け目の先に小さく見えていた灯りの周りの様子が見えてくる。
そこは大きな街の酒場にも引けを取らない規模の広間になっていた。
その広間の中央ほどに木を組んで作られた即席のかがり火台があり、そこに革袋や鎧が置かれていた。
「アクレイさん、ビアトロさん」
そこにはエーブルとユイールの姿が。
「他の人は?」
「横穴の探索をしています」
「横穴?」
ふと、見渡すと広間の壁にはいくつもの横穴が口を開けていた。
「これのどれかが酒場に繋がっているはずなんですが…」
「あたしたち、どれからきたか覚えてないんです」
申し訳なさそうに肩を落とす二人。
「仕方ありません、こんなにも暗いんですから」
肩を落とす二人を慰めるビアトロ。
実際、今もこうして松明を掲げているあたりだけがかろうじて見える。
ここにまた戻ってくる事を前提にしてなければどこから来たかなど覚えられない。
そうしてエーブル達に意識を向けていたビアトロだが何かを察し、反射的に顔を上げてあたりを見渡す。
洞窟のどこからか音がする。が、音が空洞に反射し、その主がどこから聞こえているかはわからない。
「多分、他のみなさんだと思います」
ビアトロが剣の柄に手を置きながら松明を掲げて辺りを見渡していると、ユイールがそう告げてくる。
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