第2話 無機質

御剣を殺し、俺たちは街が一望できる高台へと駆け上がっていった。

幸いにしてあれから地震は起きてはいない。

だが、あまりにも一度の被害が大きすぎた。


いつも登校途中でお参りしている神社も倒壊している。


「酷いなこりゃ。」


高台にたどり着くと、そこには想像を絶する光景が広がっていた。

市街地ではほぼすべての建物が倒壊し、炎が燃え盛っている。


それはここだけではなく、少なくとも見渡す限り全ての場所で同様の事が起きていた。

いつも微かに見えていた海岸線が、今はくっきりと見えている。


全員が一言も発せずに暫くその光景を眺めていた


 《確認しました、個体名『天羽蓮』にスキル【魔石取扱人】が獲得されました。》


そんな俺達を現実に引き戻すように、突如頭の中で俺ではない何か無機質な声が響き渡る。

かき氷を食べたとき特有の頭痛が暫く襲った。


「落ち着いたか?」


頭痛が引いた後、静かに友人の一人、七尾湊音が言った。


「……あぁ。それで、今の声だが聞いたか?」

「聞いたわね。みんなも同じでしょ?内容はともかくとして......。」

「そうだな。取りあえず確認をしよう。これが事実であれば世界の変化だ。」

「いいことなのかは分からないがな。」


考え込む蓮を無視して友人たちは自分たちが手に入れた新たな力を確認し合う。


「これは...スキルで良いのか?」

「そうだね。スキルって言葉が一番しっくりくるかな。」

「なら、俺のスキルは【押圧者プレッシャー】ってやつだ。正直役に立つかは分からないし、使い方もわからん。」


始めに喋ったのは島嵜裕也、言葉遣いは少々荒いが仲間思いでいい奴だ。


「ほんとに物騒そうな名前ね。私のは【死音奏者】よ。まあ、妥当な所ね。」


裕也のスキルに文句を言いながら次に言ったのは月見美穂。そのスキルの名が似合うほどの歌声を持つ。


「おめぇ、人のスキルに物騒とか言っているくせに、お前のほうが物騒じゃねえか。死音ってなんだよ。」


だが、下手に先ほど煽ったせいで裕也が突っかかった。


「あら、私のは人を死に導くほど美しいってことよ。あんたは何か素晴らしい理由でもあるのかしら?脳筋裕也

「やんのか?」

「出来るもんならしてみなさいよ。」


売り言葉に買い言葉。次第に雰囲気が悪くなっていく。

もう一人の女の子が心配そうに見つめる中、やっと仲裁の手が入った。


「はぁ......。」


ため息をつきながら二人の間に入り、止めてくれたのは先ほどの男の子、七尾湊音である。


「まあまあ、二人とも落ち着いて今はそんなことでいがみ合ってる場合じゃないでしょ?ちなみに、/僕のは【操水薬毒ギフトグラート】だよ。二人はともかくこれ僕と関係ある?」


「「ないな(わ)(ね)」」


続いて紹介するおっとりとした口調の子は、藤原梓だ。


「私のは、【描熱光者ルス・ピュール】だったー。他にもありそうな名前だよねー」


 彼女がゆったりと説明した時それは起こった。いきなり梓が手を伸ばした何もない場所からいきなり火が出現したのだ。


これには考え込んでいた連ですら驚いて、その場から飛びのく。

合わせてみんなも飛びのいた。


「ねえ、梓それってどうゆうこと、スキルの力なの?」


 美穂が興奮しながら梓に問う。おそらくみんなが同じことを考えていたであろう。

誰もが考えたことはある超能力だ。


「そうだよ。みんなもスキルって小さく言いながらそのスキルのことを考えてみて。たぶん説明欄みたいなのが出てくる。


そんなものがあったのか。それなら先ほど悩んでいたことが無駄ではないか。

そう思いながら言われた通りに動かす。


「「「「「スキル」」」」」


 《確認しました。個体名天羽蓮が【魔石取扱人】を開くことに成功。それにより表スキルを構築。画面中央のレバーを引いてください。》


確かに説明欄のようなものが目の前に浮かんだのでそれを手で触ると青いプレートのようなものが浮かび上がる。


そして、また無機質な声が頭の中に鳴り響いた。

前と違って今度は頭痛はしない。


代わりにプレートにレバーのようなものが映し出されていた。

これは引いた方が良いのだろうか。


プレートの隅々まで探してみるが他に何もないので諦めて引くことにした。


すると、


 《確認しました。個体名:天羽蓮がスキル【読書家】を獲得。それに伴い、案内者が決定。 成功しました。》


また一方的に言われたと思ったら【読書家】と。

もうこの無機質な声については気にしないほうがいいのかもしれない。


そう思いながら、プレートに映し出された【読書家】の説明を見る。


スキル:【読書家】

階級 : ユニーク


概要:本という観点から知識を持ち出し活用する。

権能内訳

 【森羅万象】……ある事象に触れたとき、それに対する知識を世界中にある本から知識を得ることが出来る。

 【魔力操作】……魔力を操作することが容易になる。

 【全種魔法(極小)】……とても小規模の魔法の扱いが容易になる。

 【解析眼】……物体を解析することが出来る。

領域魔法式……【本とは一つの世界でメモリーワールドある】【不完全なる図書館】など。現状は発動することが困難である。


注意:このスキルを扱うのは一人では困難なため案内人がつく。


じっくりと見ると、突如頭の中に何かが流れていった。

同時に、このスキルが元々あったかのように馴染む。

言いようのない恐怖に体を震わせていると、また何かが頭の中にやって来た。


<はじめまして、マスター。私が案内人を務めます。>


 頭の中によくある魔女の格好をした女の人が突如出てきた。その人?は優雅にお辞儀を決めると言葉を続ける。


<困惑しているのでしょうが、私にを与えてくれませんでしょうか?>


先ほどの注意の欄にあった案内人のことだろうか?割り切るしかないのだろうが気分が悪いな。

名前は......神話から取るか。


(貴方の名前は【ヘカテ】でいいかな?)


<ありがとうございます、マスター。それと私の名前は呼び捨てでお願いしますね。>


 ヘカテ、ギリシャ神話における魔法の女神の名前だが気にってくれてよかった。


(ヘカテ、さっそくで悪いんだが【魔石取扱人】のことを説明できるか?)

<まずはですね、自分で見てみてください。わからないところだけ教えますね。>


 やってみるか、先ほどと同じ手順でスキル欄を出す。



【魔石取扱人】


階級:特殊ユニーク(現在千人)


概要:魔物を倒すと出てくる魔石を使うスキル。基本的に魔石はこのスキル以外に使えず。ゴミになってしまう。なお、このスキルを得たときはランダムでほかのスキルも与えられる。

権能内訳

 【魔石加工】・・・魔石を加工することができる。

 【魔石商店】・・・魔石を通貨として物を買うことができる。ただし品物は魔石の質に比例する。

 【真偽判定】・・・相手が嘘をついているかわかる。  

  ■■■■

  ■■■■


うん。なんか色々突っ込みたいところが出てきたな。

だが、少なくとも魔物はいそうだ。


(というわけで頼む) 俺は分からないところをヘカテに質問しながら言った。


<……わかりました。最初にスキルランクついていいますね。


 スキルは主にコモン、レア、エキストラと進み、そのうえでユニークとレジェンドに分かれます。ただし、スキルのランクが絶対ではないので気を付けてください。ユニークとレジェンドの違いは。


 レジェンド・・・世界に11人以上持ち主がいるスキル。

 ユニーク・・・世界に10人しか持っている人がいないスキル。     


 です。


 しかし何事にも例外というものもありまして、マスターのスキルのような特殊型もあります。気を付けてほしいのは所有者が少ないからと言って、ユニークのほうが上だとは言えないことです。どちらのスキルもピンからキリまであるので。>



(んーそりゃそうだな。次頼む。)


<はい、次に魔物のことですが、現状不明です。【読書家】で情報集めをしていますが手がかりゼロでございます。ただ、スキルに攻撃するためのものが多い傾向があるため、スキル説明からするにいると仮定していいでしょう。>

(確かに、あの4人も物騒なのが多かったしな。)


<あの方たちですか、確かにそうでしたね。さて次は権能です。

 これは簡単でスキルができることですね。どうやら、魔石がないとダメなようですが。>

(試したのかよ。使えそうなのは【真偽判定】か、ものにも使えるって…、英検なら満点狙えるじゃん)


<……考えるとこそこですか、まぁ次行きましょう。領域魔法式ですが、おそらく今の状態で使うと死ぬ可能性が出てくるのでやめましょう。>

(……はい。)


 ・・・死ぬってどういうことだよ?俺がそんなどうでもいことを考えていると。


<マスター!>


 緊迫とした声がヘカテから聞こえた。同時に丘の下から不快な笑い声が聞こえてきた。


 その外見は緑色で、見た目は醜悪。それはまさに物語に出てくるゴブリンそのものだった。



「グキャキャキャ」









「えっ!?」

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