唐突に渡された真っ白なノート

アンリ

1ページ目

ある日突然手渡された1冊のノート。

開いて中身を確認するが、どのページも真っ白で何も書かれていない。

「このノートの全てのページを埋め尽くすことが君の宿題だ」

私にそれを渡した人はそれだけ行って去っていく。

何を書けばいいかも告げずに。

……私にとって人生って、そんな感覚だ。

ある日いきなり始まって、人生の宿題を終えるために、ただひたすら必死に生きる。

その終わりがいつかも全く分からず。

宿題の正解も、誰も教えてくれないで。

…………違う。

教えてくれないんじゃない。

そもそも正解なんて、誰も知らない。

人生という宿題に、決められた正解なんてそもそもなくて。

自分なりに答えを見つけていくしかないんだ。

誰かが答え合わせをしてくれるようなものなんかじゃない。

そもそも人生に、教科書はない。

参考書はあっても、それはあくまで参考だ。

本当の答えは私が見つけるしかないんだ。

果たして真っ白だった私のノートは、あと何ページなんだろう。

それが埋まりきった頃、私は満足できるかわからない。

でも、私のなりの答えは、見つけたい。

これから私がこのノートに刻み込むのは、物語じゃない。

人によってはただただ歪な文字の列、意味を持たない怪文かもしれない。

理解できる人間なんて、1人もいないかもしれない。

構わない。

理解されることが、このノートの、正解じゃないから。

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