第40話 ドワーフ王国での『女の貸し』の価値

ドワーフ王国。

魔王城とは同盟国であり、装備品なんかも魔王城に住む者たちにとって大事なものだが、その分の金は支払っている。

お互いにウィンウィンの関係でいる筈だが、ここにきて【酒屋】をドワーフ王国に出して欲しいという依頼が来ようとはねぇ。



「見返りは何をくれるって言ってるんだい?」

「見返りとなる品が思いつかないらしく、魔王様の欲しいものを用意するとの連絡で」

「へぇ……」

「如何なさいましょうか?」

「使節団が来ているのかい?」

「いえ、ドワーフ王国より国王からの書簡を持った者が来ております」

「ふむ、では会おうかね」



こうして衣装をそのままにカツカツと玉座の間に向かうと、既に書簡を持ってきていたドワーフの男三人が平伏して待っていた。



「酒屋を用意して欲しいという書簡を持ってきたそうだが?」

「はい」

「見返りにはなんでも欲しいものを用意するらしいね?」

「そう聞き及んでおりますし、そういう契約をとの仰せでした」



そういってローダンから書簡を受け取り中を読むと、確かに酒屋をオープンして貰う代わりに見返りは何でも欲しいものを用意するとの文面が書いてあり、アタシはニヤリと笑うと「そうだねぇ」と考え込んだ素振りを見せて口にする。



「貸し一つ。ってのはどうだい?」

「貸しですか?」

「そう、生憎今欲しいものが無くてねぇ。だから貸しにして置いていてやるって言ってんのさ。ただし、女の貸しはデカいよ?」

「それはもう、我妻の貸しと言う言葉にはとんでもなく重いものを要求されますからな」

「ドワーフの世界での貸しとはとんでもなく重いのです」



と、ローダン。



「んふふ。それでいいなら酒屋は作ってやるよ」

「貸しで来るとは思いもよりませんでした。今一度王に相談してからでもよろしいでしょうか?」

「ああ、気長に待ってるよ」



そういうと三人組は帰っていき、アタシは玉座に座って小さく息を吐くと、どこの時代、どの世界でも「女のいう貸し」と言うのはデカいもんだねぇと苦笑いが零れる。

ローダンが言うには、ドワーフ王国では「女の貸し」で国が傾いたこともある程らしく、とても重いものなのだそうだ。

それをよしとしてくれるなら酒屋は大いにいいものを用意してやろう。



こうして午前中の仕事が終わり、自室へと戻っていく最中――。ピアとミツリの姿を見つけた。

何やら言い争っているようだ。



「カナデ様は次期魔王様ですよ! 将来の嫁はわたくしです!」

「いいえ! 同じ世界から来た私でもいい筈よ!」

「それでは誰も得しませんわ!」

「損得ではなく、好きか嫌いかだわ!」



どうやらカナデをめぐっての言い争いのようだね。

確かにカナデは次期魔王として相応しいが、その嫁候補とは考えたことなかったよ。



「何を廊下で言い争ってるんだい」

「「キヌ様!!」」

「カナデの嫁なら、二人して嫁に貰われればいいだろう。第一婦人、第二婦人いても可笑しくない」

「「え!!」」

「カナデがそれを良しとするならだけどね」

「二人が」

「嫁」

「魔族の諸々を考えるならピアが第一婦人、ミツリが第二婦人でもいいならそれでいいじゃないのかい?」



そう告げると、二人は顔を見合わせ頷き、カナデの部屋に突撃していった。

カナデも大変だろうが、是非嫁くらいは自分で見繕って欲しいねぇ。

そんな事を思いつつ廊下を歩いていると――。



「ですからそんな事をいわれましても!!」

「第一婦人と第二婦人でしたら世界が丸く収まるのです!!」

「カナデ君お願い!!」

「曾婆様なんてことを仰ったんです!?」

「女の戦争を終わらせな」



其れだけ告げて去っていく。

現実世界ではあんな美女と可愛い系に好かれてどっちか一人しか選べない。

それよりはこちらの異世界で二人位嫁を貰っても罰は当たらないさね。

それに、カナデは男前だからねぇ……いい女は放っておかないだろうさ。


こうして自室に戻り、連絡用魔道具を取り出して手紙が来てないかチェックすると、今の所手紙は届いてないようだ。

勇者はまだ吊るされたままかね、ヒヒヒ。

最果ての町は実力主義の世界。

実力の伴わない勇者等、誰も歓迎何てしないよ?

魔王にまで敬意を示すくらいだからねぇ。



――それから数日後。

ドワーフの国から再度連絡があり、「貸しでいいので作ってほしい」と言う依頼を受け、アタシ達はキャンピングカーに乗り、一路ドワーフ王国へと走り出した。

城に誰かは残って貰わねばならない為、カナデと嫁候補二人を残し、トッシュはアタシについてきたが――。



「僕、ドワーフ王国に行くの初めてです!!」

「アタシもだよ! カーナビの案内するままに走るが悪路が続くからね、振り落とされんじゃないよ!」

「はい!!」



こうしてエンジンを吹かしてハイエーナのキャンピングカーで走り出す。

書簡を持ってきた連中も乗せてはいるが、アタシの荒い運転に怯え切っちまっている。

まぁ、運転が荒いのは元々さね!!

このまま中間地点で一度一泊し、二日目にはドワーフ王国に到着したんだけどね……。



「い、生きた心地がしませんでした……」

「おやおや、すぐに着いただろう?」

「すぐに着きましたが!!!!」

「二度と乗りたくは……ないですな」


肝の小さい。

トッシュは笑っていたというのに。



「さ、ドワーフ王のもとに案内しておくれ」

「畏まりました」



こうしてドワーフ王国の門を開けて貰い、アタシ達はハイエーナのキャンピングカーに乗ったまま、ドワーフ王国へと入っていったのであった。




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