第12話 中層はやり難い……そんな時はコレだよコレ!
このダンジョンは上層中層下層と分かれているのは知っていた。
しかし、隠れるだけの草木がない為、アタシ達は持っている武器を新しい物に変更を余儀なくされた。
「仕方ないねぇ……こういう時は遠くから撃ち抜くってのが鉄則だよ。コレだ」
そう言ってアタシが出したのは『サイレンサー』をつけた『スナイパーライフル』だ。
二人にも同じものを手渡し、使えるようにしてやると普通のリボルバーとは別にスナイパーライフルが使えるようになった。
「キヌ様、これは?」
「スナイパーライフル。暗殺にも適している優れものさ」
「へぇ……」
「我、奇怪な武器を見た成り」
確かに奇怪な武器だろうが、何と言っても殺傷能力も命中力も高い、言う事なしの銃だ。
アタシのスキルなら大抵の銃や大砲等と出せるが、一番の好みは『電動ガン』だね。
ただ、装備に穴は開くし使い勝手はいまいちだろう。
今は金も欲しいからね。
それに周囲に人間がいたら間違いなく被害が行っちまう。
派手だが面倒臭い武器でもあるが、スナイパーライフルならそういう事もないだろう。
「丁度良く遠いあそこにBランク冒険者がいるだろう? 試しに使って見な」
「経験値ですわね」
「本当に、経験値がこの辺りだとあのグループだけですね」
「我、人間を経験値と呼ぶ者を見るのは初めて成り」
「タリス、なり成り煩いよ。さて、草木に隠れて身体を低くしな」
こうしてアタシ達三人はスナイパーライフルを構える。
射程距離は問題ない。
敵もしっかり大きく見える為狙いも定まりやすい。
ましてやこれだけ離れていれば、何処から撃っているのか分からないだろう。
アタシ達の背後にも冒険者がいない事は確認済みだ。
「これは狙いやすいですわ」
「良いですねコレ」
「使い処は選ぶがね。まずは回復役から殺しな? 鉄則だよ」
「ならわたくしが回復役を殺しますわ」
「では俺は他を狙います」
「アタシはリーダー格を狙おうかね……アイツだね?」
チャッと音を立てて狙いを定める。
魔物と戦いつつ激しく動く相手を打つのは大変だが、大体足に一発、その後蹲ったら頭に一発当てれば問題はない。
後衛二人は後ろで動かないで魔法を放っているし、さて、殺ろうか。
ボヒュッ!!
というサイレンサーで音が消されて発射される弾は見事に回復薬の脳天に直撃、崩れ落ちる。驚いた魔法使いの頭にもトッシュの狙った弾が当たり二人は倒れ込んだ。
残り二人。驚く前衛のリーダー格の足に一発、もう一人はピアとトッシュが狙いを定める。
動き回る相手を相手するのは大変だが、弾は無限だ。
腕に、足に、腹に命中させると、最後は脳天をズドンだ。
途端アタシ達はレベルが上がった。
『魔王キヌがレベル50に到達。スキルポイント20を獲得しました』
『ピアリアがレベル40に到達。スキルポイント15を獲得しました』
『トッシュタリスがレベル38に到達。スキルポイント10を獲得しました』
『スキルポイントを使用しますか?』
アタシ達は迷わず「NO」を突き付ける。
今スキルはまだ貯め込んでおきたいからね。
後でスキル振り分けが再度出来るとはいえ、今は貯め込んで拠点で確認し合いながらスキルを弄りたいもんだよ。
兎に角倒した場所から今いるところまで距離がある、瞬間移動のアクセサリーを使い、一気に三人で到着すると周囲に誰もいない事を確認して装備や財布、アイテムを漁る。
流石Bランクともなると財布も重たい。
装備に関しても良く整っている。
付与付き装備は出来るだけ剥ぎ取り、鞄の中に入っているアイテムも鑑定しながらアイテムボックスに無造作に投げ込んでいくと、5分も経てばホームへと消えて行った。
「そう言えば、ポーターを見なかったね」
「ポーターを雇うのって結構リスクがあるんです。雇わない冒険者が殆どですよ。ポーターが襲われたら今まで貯めたアイテムが消えますから」
「なるほどねぇ」
「だから隠れていたのですわね?」
「はい。それに僕は獣人ですので力はあるのでいざという時はこう、ザシュッと」
流石獣人、爪を伸ばした手でザシュッとする仕草を見せ、今まで苦労してきたのだろうというのが何となくわかった。
とは言え、ポーターを連れて迄いたという事は――。
「大事にされてたんじゃないのかい?」
「どうでしょう? 荷物持ちとしては大事にされていたような気がしますが、やはり獣人差別は何処にでもあるので」
「ああ、納得だよ」
獣人は魔族側の種族だ。
それで嫌な目にあう事は多々あったらしく、可愛がってくれる冒険者も居れば、ストレスの発散に殴ってくる冒険者もいたらしい。
「可愛がってくれる冒険者もいた……ねぇ」
「出来ればその方々を殺したくはないですが……」
「確かにデバフが掛かってしまそうですわ」
「それはアウトだね。トッシュ、アンタを大事にしていたという冒険者は狙わないから、その他は経験値だ。いいね?」
「はい!」
こうして奥へと更に進んでいくが……【広範囲マップ】にも冒険者の姿が見当たらない。
枯れたか? そもそもBランク冒険者やAランク冒険者は少ないと聞くしねぇ。
「居ませんわね」
「トッシュ、この町にいたBランク冒険者は全部で何組だい?」
「二組だけです……」
「なるほど……枯れたなら仕方ない。隠し扉の財宝だけ取ったら下に降りようか」
「そうですわね。隠しエリアは三つですわ」
「どんな財宝があるかねぇ!!」
「ワクワクしますわ――!」
こうしてアタシ達は冒険者のいないエリアを歩きながら隠し扉を開けては財宝を手に入れ、アイテムボックスに投げ込んでは中層の二か所の隠し扉を制覇した。
そのまま下層まで降りて行くと、そこは熱風のエリアで【広範囲マップ】でAランク冒険者がいないか確認する。
しかし見当たらない……。
「上に戻ったのかね」
「地上に戻った後かも知れませんわ」
「だとしたら隠し扉のアイテムだけ取っちまって、後は仮拠点を作るかね」
「それが宜しいですわ。ついでに隠し扉のアイテムを手に入れつつ、ダンジョンボスの間まで行きましょうか。そこならこの暑さから逃げられますもの」
「いや、隠し扉まではコレで移動するよ。どうせAランクがいないなら好き勝手動き回っちまおう」
そう言うとアタシはキャンピングカーを出し、初めて見るその姿にタリスすら驚いていたが、扉を開けて中に入って貰い、アタシは運転席へと向かう。
中は空調がしっかり過ごしやすい温度になっていて、此処で食事も軽くだが出来るようになっているし、トイレの心配もない。
「もう、一々拠点に戻らなくともこれがあればトイレ問題は解決しましたのに!」
「何言ってんだい。一々出してたら冒険者にバレちまうよ」
「それはそうですけれど!」
「うわぁ……タリス、君も見たことある? こんなの初めてだよ」
「我、驚きにて言葉なくす成り」
こうしてアタシは少々乱暴な運転だが隠し扉まで一気に進み、そこにキャンピングカーを置きっぱなしにしてアイテムを物色して手に入れる事二回。その足でダンジョンボスのいる区画まで向かうと、罠だなんだとキャンピングカーの前には役に立たず、落とし穴さえ気をつければあっと言う間にダンジョンボスエリアまでたどり着いた。
さてさて、どんな敵かねぇ。
取り敢えず立派な宮殿のような建物の前に停まると、キャンピングカーを消しまずは柱に仮拠点を設置して中に入る。
今日の冒険は此処までだ。
「さ、アイテム整理した後はスキルチェックだよ!」
こうして、アイテムボックスから手に入れた装備品やアイテムを並べていくことになる。
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